スペインの世界遺産「セビリアの大聖堂、アルカサル、インディアス古文書館」とは?世界遺産マニアが解説

登録区分文化遺産
登録基準(1), (2), (3), (6)
登録年1987年

スペイン南西部にある大都市セビリア。ここには、セビリアの大聖堂、アルカサル、インディアス古文書館といった遺産が残されていて、これらからはイスラムとキリスト教の文化の融合から大航海時代のスペインの繁栄に至るまでセビリアの歴史が見られます。

ここでは、セビリアの大聖堂、アルカサル、インディアス古文書館がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、それぞの遺産について詳しくなること間違いなし!

目次

セビリアの大聖堂、アルカサル、インディアス古文書館とは?

セビリアの大聖堂、アルカサル、インディアス古文書館
画像素材:shutterstock

スペイン南西部のアンダルシア州の州都であるセビリア。ここはスペイン南部の中心地で、古来から経済や文化の中心地でもありました。セビリアには、スペインの黄金時代と呼べるような建築物が多く、そこからはイスラム文化の足跡、カトリックの華やかな装飾、スペイン王室の繁栄、そして、スペインの南北アメリカの植民地経営で獲得した富などが見られます。

このようにセビリアにはさまざまな建築物が残り、これはイスラム王朝時代、キリスト教時代、大航海時代など、各時代にそれぞれの発展した姿が見られます。やがてセビリアは南北アメリカ大陸交易の最前基地となり、植民地経営において重要な役割を果たすことになりました。

登録されている主な構成資産

セビリアの大聖堂

セビリアの大聖堂
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かつてイスラム王朝の支配を受けていたアンダルシア地方にはモスクなども多く築かれました。ここは12世紀にモスクが建造されたものの、レコンキスタにより、13世紀にゴシック様式の大聖堂に改築されました。その際にミナレット(塔)はルネサンス風に改築され、「ヒラルダの塔(風見の塔)」としてセビリアのシンボル的存在に。1401年にはさらに改築が進行し、ゴシック様式、ルネサンス様式、バロック様式など、さまざま時代の建築様式が残ります。

五廊式(身廊の両側に2つずつ通路があるもの)の構造で、現在でもスペイン最大級の大聖堂。かつてはクリストファー・コロンブスの墓があったことで知られます。しかし、16世紀にはドミニカ共和国のサントドミンゴへと移されました。

アルカサル

アルカサル
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もともとは10世紀にイスラム勢力がこの地を支配していた時代に、総督の宮殿として建設されたもの。13世紀にカルティーリャ王国がこの地を支配するようになると、14世紀に王宮の離宮として改築されました。イスラムの建築様式とキリスト教の建築様式を融合したムデハル様式を基本デザインとして採用。さらに、ルネサンスから新古典様式なども加えられて、さまざまな建築様式が混在する宮殿に。

インディアス古文書

インディアス古文書
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スペイン王家の墓所があるエル・エスコリアル修道院をデザインした建築家フアン・デ・エレーラによって、1585年に設計された商品取引所がベースになっています。ここはスペインのルネサンス建築の傑作でもありました。18世紀には「インディアス枢機会議」がこの場所に設置。これは南北アメリカ大陸におけるスペインの植民地(インディアス)に関する諮問機関でした。つまり、行政と立法と司法の権限があるので、実質植民地運営をここで担っていたということですね。

この機関が置かれたことにより、各地に散らばっていた植民地に関する資料や文献などが集められるようになり、ここは図書館になったのです。よって、コロンブスの航海日記もここに収められ、スペインとアメリカ大陸のつながりを結びつけたシンボル的な建築物でありました。

セビリアの大聖堂、アルカサル、インディアス古文書館はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

セビリアの大聖堂、アルカサル、インディアス古文書館
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それぞれの遺産が評価されたのが、以下の点。

登録基準(i)
セビリア大聖堂は、モスクを改築して、ヨーロッパで最大級のゴシック様式の大聖堂となり、ルネサンス様式の参事会の館なども傑作であるという点。

登録基準(ii)
ヒラルダの塔は、アメリカ大陸で建築された塔に影響を与えたということ。

登録基準(iii)
13〜16世紀にかけて建造された大聖堂とアルカサルは、イスラムとキリスト教の融合が見られるという点。

登録基準(vi)
コロンブスの日誌や植民地に関する蔵書を収めた図書館など、セビリアは新大陸の発見からアメリカ大陸の植民地化まで、スペイン史のさまざまな出来事と関連するものが多いということ。

世界遺産マニアの結論と感想

セビリアには、3つの遺産があり、それぞれ用途はバラバラですが、それはセビリアの歴史を示す建造物であるということ。イスラムの支配から脱却したものの、街の建築様式にはそれが残っていて、大聖堂もモスクをベースに改築されました。ヒラルダの塔も新大陸の鐘楼建築に影響を与えています。さらに、新大陸の発見から植民地経営など、この地はスペイン史ゆかりの建築物が多いというのも評価のポイント。

ちなみに、セビリアはスペインでも有数の経済都市で、バッファゾーンの外では高層ビルが建てられましたが、それが景観を壊すという理由で、危機遺産候補になったことも。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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