ケバブというと中東の料理というイメージがあるが、実はかつてのオスマン帝国の領土であった東ヨーロッパ、特にバルカン半島ではケバブは「チェヴァプチチ」という名前で定番料理だったりする。でも、ケバブのように見えて少し味わいが違う…そんなチェヴァプチチとはどんなグルメなのか?
今回は、ボスニア・ヘルツェゴビナの世界遺産・モスタル旧市街の古い橋(スタリ・モスト)の地区の帰りに味わったグルメ「チェヴァプチチ」を紹介。世界遺産巡りのついでに味わってほしい「世界遺産級の激ウマ・グルメ」を解説していこう。
ボスニア・ヘルツェゴビナの世界遺産「モスタル旧市街の古い橋(スタリ・モスト)の地区」はヨーロッパなのに中東風の街並み?
ボスニア・ヘルツェゴビナ南部の ネレトヴァ川沿いに建造されたモスタル。ここはかつて中東だけでなく、東ヨーロッパまで支配したオスマン帝国の領土であったため、国境の街としてイスラム建築が多く建造されたという経緯がある。そして、カトリック教徒のクロアチア人、東方正教会のセルビア人、ユダヤ人、イスラム教のボスニア人までさまざまな民族が暮らす地であった。
この街の旧市街を歩くと…圧倒的にイスラム世界を感じるだろう。まさかお隣の国がキリスト教国家のクロアチアとは思えない。実はここは近代化の波を受けそうであったものの、1970年代から保存計画が進められたということもあり、旧市街はオスマン帝国時代の雰囲気が残されている。…まさにバルカン半島の複雑な歴史を凝縮した街なのだ。
「モスタル旧市街の古い橋(スタリ・モスト)の地区」の詳細はこちら
チェヴァプチチは、バルカン半島のケバブ!
世界遺産のモスタル旧市街は平和というテーマもあるが、バルカン半島の歴史を体感するのに適した街で…そんなところでグルメのほうもバルカン半島を堪能してほしい!ランチやディナーにはチェヴァプチチがおすすめ。いや、チェヴァプチチは割とどこでも食べられるファストフードでもあるのだが、これはボスニア・ヘルツェゴビナでは牛肉の小さなハンバーグを意味していて、塩コショウやパプリカパウダーなどで味付けしたもの。提供する際はピタパンが添えられていて、カイマクと呼ばれるチーズと生タマネギと一緒に食べる。
特にボスニア・ヘルツェゴビナの首都にあるバシュチャルシヤと呼ばれる旧市街の中心には、チェヴァプチチの店が多く、代表的な料理となっている。
「チェヴァプ」というのはケバブにルーツを持つ言葉で、「チチ」とは小さいという意味で、ボスニア語やクロアチア語では「小さなケバブ」という意味だ。特にボスニア・ヘルツェゴビナ国内では、さまざまなバージョンがあり、イスラムの影響も強いこともあって、人気料理となっている。基本的に焼肉の屋台から本格的なレストランまであるので、お金をかければもちろん美味しくなるのだが…
このチェヴァプチチは、屋台のものでも十分美味い!といおうか、ハズレがないのである。これは思い出補正とか、お腹が空いているとか…そういう効果もあるかもしれないが、なんといっても日本の肉団子と比べて、パプリカパウダーなどの香辛料が効いていて、肉の旨味が引き立ち、中火〜強火でじっくりと焼くため、非常にジューシー。ビールのツマミにも合うほどに濃厚な味わいがまたたまらんん。
…これは「世界遺産級」の味わいだ!
実はチェヴァプチチは国や地方ごとに味わいが異なる…
なかとまぁ、ここまではボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォで定番のチェヴァプチチの話であり、これがセルビアだと異なってくる。なかには豚肉や羊肉を混ぜたものもあり、パプリカパウダーを入れなかったりとさまざま。
実はチェヴァプチチの歴史も複雑で、どこがルーツなのか?というのも実はよくわかっていない。もちろん、現在のスタイルの発祥は中東であるものの、バルカン半島でルーツとなったのは、ユーゴスラビア王国の首都でもあったセルビアのベオグラードだったという説もあるが、そもそも…チェヴァプチチはバルカン半島全体で食べられていただろうから、現在の国境でルーツを決めるのも野暮な話かもね。
世界遺産のついでに世界遺産級のグルメも同時に楽しんでみてはいかが?
※こちらの内容は、あくまでも過去に現地を訪れた際に体験したものであり、最新情報はご自身でご確認ください。