登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (1),(2),(3),(4) |
登録年 | 1979年 |
モンテネグロ南西部にあるコトルはアドリア海の自然環境を利用した港町です。中世から交易都市として栄え、スラブ諸国で最初の航海士学校があったことでも有名。1979年の地震によって多くの建築物が被害を受けましたが、世界遺産に登録されたことにより修復され、中世当時の町並みが今でも見られます。
ここでは、コトルの自然と文化歴史地域がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、コトルについて詳しくなること間違いなし!
コトルの自然と文化歴史地域とは?コトル湾を含めて解説
モンテネグロ南西部に位置するコトルは、アドリア海沿いのコトル湾にある港町です。登録されている敷地は1400平方kmにも及び、コトルの市街だけではなく、コトル湾全体も含まれているというのが特徴。宮殿や修道院、要塞、邸宅などが集まる旧市街に、リアス式海岸と周囲の高い山々に囲まれた風景が溶け込んでいて、コトル独自の景観となっています。
コトルはローマ時代に起源を持つ町で、6世紀には既に要塞が置かれていました。町は10世紀から交易都市として発展し、ダルマチア地方を代表する都市国家になりました。15世紀からはヴェネツィア共和国に支配されるようになると、ヴェネツィア様式で建築物は造られるように。
登録されている主な構成遺産
聖トリプン大聖堂
12世紀に建造されたロマネスク様式の建造物で、現在はローマ・カトリック教会の大聖堂。トリプンとは町の守護聖人のこと。大地震の被害に2度遭っているものの、その度に修復されています。塔以外は創建当時の姿が残っていて、現在でもかつて使用されていたフレスコ画の一部を見ることが可能。
スヴェタ・ニコラ広場
旧市街の中心部。ここには12世紀に建造されたロマネスク様式の「聖ルカ教会」と20世紀初頭に造られた「聖ニコラ教会」があります。どちらもセルビア正教会に属する教会。
岩礁の聖母教会と聖ジョージ島(スヴェティ・ドルデ)
旧市街から14kmほど北東に位置するペラスト。ここにはコトル湾の上に浮かぶ2つの島があり、それぞれに教会があります。「岩礁の聖母教会」は岩場に聖母マリア像があったことから、地元の人々の寄付を集めて建てられたもの。聖母教会の隣りにある聖ジョージ島は、12世紀から続くベネディクト会の修道院があり、島というよりも要塞のように見えます。
コトルの自然と文化歴史地域はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
コトルが評価されたのが、以下の点。
登録基準(i)
湾岸沿いに都市が集まり、自然の景観と調和しているという点。
登録基準(ii)
交易都市であったコトルはアドリア海沿岸の芸術や建築、工芸などに深く影響を与えたということ。
登録基準(iii)
自然と調和しながら形成された都市は現在でも保存状態がよく、非常にユニークなものであったという点。
登録基準(iv)
コトルとペラストの建築物は、景観にうまく溶け込むように計画されていたということ。
世界遺産マニアの結論と感想
アドリア海岸にはドゥヴロブニクなど、コトルと似たような要塞都市が登録されていますが、コトルが他とは違うのは湾と周囲の山々を活かして町を作り出したという点。そして、交易都市だったので、航海術や建築法など、さまざまな知識が集まり、それが各地に広がっていったということも評価されています。
ちなみに、旧市街の山側には城壁があって、そこから旧市街を眺めるとコトル湾一帯を眺めることができます。山々の間を抜けるように湾が続いていくので、ここがいかに自然の要塞だったかがよく分かるでしょう。
山の上から下を眺めると旧市街が三角形に見えて、まるで三角形の容器にパズルのように建物が無理やり入れ込んでいる感じも……。しかし、頂上まで登るのは急勾配の坂道を登る必要があるので、体力に自信がある人でないと、この独特の風景が見られません!