中国南部に生息するジャイアントパンダは、世界でも最も人気のある動物の一つ。その愛くるしい姿は世界の人々を魅了しますが…冷静に考えれば、なぜパンダは中国でしか生息していないのでしょうか?
その理由は研究者によってさまざまではあるものの、現段階での結論を世界遺産マニアが考察してみました。
理由1、ジャイアントパンダ属は中国南部以外では発見されていない
一般的に「パンダ」と呼ばれる動物の正式名称は「ジャイアントパンダ」。これは食肉目クマ科に分類される、ジャイアントパンダ属の1属。とはいえ、ジャイアントパンダ属はジャイアントパンダ以外はすべて絶滅しています。
生息地は中国のみで、現在の生息地は四川、陝西、甘粛省の高山地帯だけ。日本パンダ保護協会によると、2021年の時点で野生パンダの数は1860頭のみで、絶滅危惧種に指定されています。
おもに竹を食べて生息しているため、竹林が多いエリアでしか暮らせず、環境破壊のために生息地が破壊されています。そのため、世界遺産でもある「四川省のジャイアントパンダ保護区 – 臥竜、四姑娘山、夾金山脈」を代表に、人の手によって保護区を設定しないと絶滅してしまう…というのが現状。
そのため、パンダの生息域は縮小傾向で、むしろ周辺の湖北省や湖南省にいたパンダは絶滅しているので、一般的に考えれば、パンダの生息地が新たに発見される見込みはほぼないと言えるでしょう。
理由2、ジャイアントパンダの祖先も中国南部に生息していた?
ジャイアントパンダはクマ科の動物であるために、祖先はクマと共通するのですが、地球上に現在のジャイアントパンダの祖先が登場するのが約200万年前。「ピグミージャイアントパンダ」と呼ばれる化石が、広西省や重慶市の洞窟で発見されています。
このパンダは現在のジャイアントパンダの半分程度の大きさであったとされていますが…歯が摩擦していることから、既に竹を食べながら生活していた可能性が高く、後に長江地域で進化・増殖していき、現在のジャイアントパンダへと進化していったと考えられています。
一説によれば、約800万年前に生息していた、ジャイアントパンダ亜科の「アイルラルクス属」は竹を掴むことができる親指があり、既に竹を食べていたとも考えられています。それもあり、先祖はユーラシア大陸全域に広がっていたのですが、この種で生き残っているのはジャイアントパンダのみ。
つまり、長い年月を経て、中国南部に暮らしていた「ジャイアントパンダ属」のみが生き残ったために現在に至っていると言えるでしょう。
結局、ジャイアントパンダは祖先も現役世代も中国南部から拡大しなかったと考えられる
皆さんもご存知だと思うのですが、ジャイアントパンダは高山地帯の竹林という環境でしか生息できない上に、繁殖力も低い種ということもあり、現在でも飼育が難しいということでも有名。こういった事情もあり、先祖も現役世代も爆発的に種が増える「要因」がなく、中国南部から拡大しなかったと考えられるでしょう。
しかし、スペインでは、1100万年前に暮らしていた「アグリアルクトス・ベアトリクス」という化石が発見。これはジャイアントパンダ最古の近縁種とされていて、はるか1000万年前からヨーロッパから中国へ渡ってきて、パンダへと進化したと考えられています。そうなると、パンダのルーツは中国でないかもしれませんが…それはあくまでも解釈でしかないですけどね。