世界遺産は英語では「World Heritage Site」と呼ばれ、直訳すると「世界的な遺産の場所」という意味。そもそもユネスコに登録される際には英語とフランス語で登録されるので、本来であればそれが正式名称でもあるのです。和名はあくまでも日本語に訳したもの。
今回は皆さんに馴染みのある世界遺産を英語ではなんて呼ばれるかを世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、いつもと違う角度で世界遺産を見ることができますよ
世界遺産を英語でいうと「World Heritage Site」
世界遺産とは「普遍的価値を持つ」と判断された場所や建造物を指します。文化財や自然環境の保護を目的とした、例えば、富士山や姫路城などが日本の代表的な世界遺産。ところで、日本の世界遺産の名称はどのように決定されるのでしょうか?
そもそも世界遺産を最終決定するのは、国際連合教育科学文化機関 (UNESCO)の委員会である世界遺産委員会。あくまでも国際的組織なので、世界遺産リストに登録される際は、英語とフランス語で登録されています。よって、各国は世界遺産候補として提出する際は、まずは英語名とフランス語名で提出するという仕組み。そのため世界遺産としての正式名称はあくまでも英語とフランス語であり、日本では世界遺産は政府と文化庁がとりまとめるため、その際に日本語名が決められ、決定後は文化庁の表記に統一するのが一般的です。
日本の各世界遺産は英語で何という?
それでは、日本で登録されている26件の世界遺産の日本語名と英語名を比べてみましょう。
法隆寺地域の仏教建造物
Buddhist Monuments in the Hōryū-ji Area
→法隆寺は、Temple of Hōryūとは訳さず、「Hōryū-ji」など日本語での地名の名称をそのまま利用しています(これは多々見られる傾向)。
姫路城
Himeji-jō
→これはそのまま
屋久島
Yakushima
→これもそのまま
白神山地
Shirakami-Sanchi
→これもそのまま
古都京都の文化財(京都市、宇治市、大津市)
Historic Monuments of Ancient Kyoto(Kyoto, Uji and Otsu Cities)
→英語名では「Historic Monuments(歴史的記念碑)」となっていますが、日本語だと「文化財」と訳されます。まぁ、確かに記念碑的かと思いますが、日本語にすると違和感しかないですしね。
白川郷・五箇山の合掌造り集落
Historic Villages of Shirakawa-gō and Gokayama
→「合掌造り」は訳せなかったのか、とりあえず「Historic Villages 」で一括りにされてしまっています。
原爆ドーム
Hiroshima Peace Memorial (Genbaku Dome)
→「Genbaku Dome」では理解できないと思ったのか、英語では「広島平和記念碑」とされています。
厳島神社
Itsukushima Shrine
→これもそのまま
古都奈良の文化財
Historic Monuments of Ancient Nara
→これもそのまま
日光の社寺
Shrines and Temples of Nikkō
→これもそのまま
琉球王国のグスク及び関連遺産群
Gusuku Sites and Related Properties of the Kingdom of Ryukyu
→「グスク」はさすがに「Castle」とはせずにそのまま。
紀伊山地の霊場と参詣道
Sacred Sites and Pilgrimage Routes in the Kii Mountain Range
→「霊場」というのは、上手く訳せなかったので「神聖な場所(Sacred Sites)」とされています。
知床
Shiretoko
→これもそのまま
石見銀山遺跡とその文化的景観
Iwami Ginzan Silver Mine and its Cultural Landscape
→「Iwami Ginzan Silver Mine 」だと、そのまま訳すと「石見銀山銀山」になるのですが、法隆寺と同じで地名としての「Iwami Ginzan」という扱いではあるので少しややこしいところ。
平泉‐仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群‐
Hiraizumi – Temples, Gardens and Archaeological Sites Representing the Buddhist Pure Land
→仏国土(浄土)は「the Buddhist Pure Land」と英語で表すので少しイメージが異なるのですが、他に適した言葉もないですね。
小笠原諸島
Ogasawara Islands
→これもそのまま
富士山‐信仰の対象と芸術の源泉‐
Fujisan, sacred place and source of artistic inspiration
→非常に難しい日本語名ですが、「信仰の対象」は大まかに言えば「神聖な場所(sacred place)」と言えるでしょうね。
富岡製糸場と絹産業遺産群
Tomioka Silk Mill and Related Sites
→英語だと「絹産業」は省略されています。
明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業
Sites of Japan’s Meiji Industrial Revolution: Iron and Steel, Shipbuilding and Coal Mining
→これは忠実に翻訳されています。
ル・コルビュジエの建築作品‐近代建築運動への顕著な貢献‐
The Architectural Work of Le Corbusier, an Outstanding Contribution to the Modern Movement
→世界遺産として登録されているのは、東京・上野の「国立西洋美術館」なのですが、あくまでも構成資産なので名称には入っていません。
「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群
Sacred Island of Okinoshima and Associated Sites in the Munakata Region
→「神宿る島」というニュアンスは表現するのが難しかったのか、「神聖な島(Sacred Island)」とされています。
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産
Hidden Christian Sites in the Nagasaki Region
→一応、熊本県の天草地方も範囲に入っているのですが、ここでは長崎のくくりにされてしまっています。
百舌鳥・古市古墳群‐古代日本の墳墓群‐
Mozu-Furuichi Kofungun, Ancient Tumulus Clusters
→Tumulusは「墳丘」、Clustersは「集まり」を意味していて、古墳のイメージにぴったりの英語でもあります。
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島
Amami-Ōshima Island, Tokunoshima Island, northern part of Okinawa Island, and Iriomote Island
→これもそのまま
北海道・北東北の縄文遺跡群
Jōmon Prehistoric Sites in Northern Japan
→Prehistoricは「先史時代」を意味していて、縄文時代も広義でいえば先史時代ではあるので、わかりやすくこの名称で使用されています。
佐渡島の金山
Sado Island Gold Mines
→これもそのまま
世界遺産マニアの結論と感想
日本の世界遺産は翻訳すると「神宿る」といったニュアンスが難しいものは「神聖な(sacred)」と名付けておくなど、わかりやすくされているものもあります。特に「霊場」「浄土」「古墳」といったどう訳して良いか分からないものも翻訳しないといけないので、世界遺産を設定するにもその意味を一発でわかるように英語で表すのは意外と難しいところ…。
それぞれを英語で見てみると、わかりやすくするためにベストな翻訳がされていて興味深いですね
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。