静岡県の世界遺産「人穴富士講遺跡」とは？世界遺産マニアが解説

人穴富士講遺跡は「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一つ。人穴とは、富士講の開祖・長谷川角行がここで修行をした場所であることから、富士講にとっては聖地でもあります。ところで、人穴富士講遺跡はなぜ世界遺産なのでしょうか？意外と知ってそうで知らない！

ここでは人穴富士講遺跡がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、人穴富士講遺跡について詳しくなること間違いなし！

人穴富士講遺跡とは？

富士宮市にある富士山の噴火で形成された溶岩洞穴。ここは富士講の開祖である長谷川角行が修行した地であり、入滅した場所とされています。13世紀の歴史書である『吾妻鏡』には、鎌倉幕府の2代目将軍の源頼家が、部下に調査させたという記録があり、当時から神聖な場所だと考えられていた様子。

洞穴には、祠や碑塔、石仏があるものの、現在は立ち入り禁止。近くには17世紀に創建された人穴浅間神社があります。社殿は明治時代までは大日堂であったものの、明治時代になると大日堂は廃され、神社が置かれました。ここは富士講の信者たちの墓地となっていて、角行の墓だけでなく、墓碑は230以上あるとされています。

人穴富士講遺跡はどんな理由で世界遺産に登録されているの？

人穴富士講遺跡が評価されたのが、以下の点。

登録基準（iii）
成層火山として雄大な富士山は、断続的な火山活動があったことから、古代から現代にいたるまで伝統的な山岳信仰が残っています。巡礼者は、山頂への登拝や麓の神社への巡礼を通じて、神仏の力を得ることを望むという富士講は富士山への深い崇拝に結びつくもの。富士山の均整のとれた美しい姿は、無数の芸術作品にもインスピレーションを与え、自然と共生しながら独自の伝統へと結びついていました。関連する文化遺産には、富士山の崇拝を中心とした伝統文化が残されているという点。

登録基準（vi）
富士山の景観は湖や海の上にそび立つように火山が位置するというイメージで、これは古くから文学や芸術などのインスピレーションを与えてきました。特に19世紀の葛飾北斎や歌川広重の浮世絵に描かれた富士山の姿は、その後、西洋美術の発展に大きな影響を与え、現在も世界中で知られる名山であるということ。

世界遺産マニアの結論と感想

人穴は、開祖である長谷川角行がここで修行をして、入滅したことから富士講信者にとって聖地となり、深い信仰へと結びつくものであるという点で評価されています。

ちなみに、『御伽草子』の中の「富士の人穴」は、鎌倉時代の武士・仁田忠常（ただつね）が、頼家に命じられて、人穴を調査したのですが、中で浅間大菩薩と出会い、彼に死後の世界を見せてもらう代わりに、それを秘密にしなければならないという約束をしました。しかし、洞窟を出た後、彼は主君である頼家にすべてを話したために、浅間大菩薩の怒りに触れた結果、早死した…というオチでもあります。実際に彼は政争に負けてしまい、37歳でこの世を去ってしまっているので、割とフィクションとは言えないかも？

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。