麺の発祥というと、もちろん中国ではあるのだが、ラーメンの発祥というとあまりはっきりしていない。意外なことに中央アジアではラグマンという麺料理が大人気で、シルクロードを経由して生み出された料理ではあるのだが、実はラーメンの語源のルーツの一つとも言われるのだ。そんなラグマンとはどんなグルメなのか?
今回は、ウズベキスタンの世界遺産・サマルカンド‐文化交差路の帰りに味わったグルメ「ラグマン」を紹介。世界遺産巡りのついでに味わってほしい「世界遺産級の激ウマ・グルメ」を解説していこう。
ウズベキスタンの世界遺産「サマルカンド‐文化交差路」は、まさらに東西交流が見られる場所
ウズベキスタンの中央部、ゼラフシャン川の渓谷にあるオアシス都市であるサマルカンド。ここはアラブ圏と中国の間に位置したため、古くから交易都市として多くの人々の交流があった場所。13世紀にモンゴル軍によって破壊されるものの、この街は滅ぶことがなかった。その後、大帝国を築いたティムール朝の首都として活躍した後も、多くの王国がサマルカンドを巡って戦いを続けたほど。
さて現在のサマルカンドは、シルクロードが衰退したこともあり、工業都市という側面もある。その一方、商業都市としての名残は今でも残っていて「シヨブバザール」は、街で最も広いバザールで、なんと2000年もの歴史を誇るらしい。バザールを巡ると、肉や野菜、スパイス、民族衣装、日用品…そして、バザールで働く人のための食堂。現代風の建物になったものの、はるか遠くから集まってきた品々が並び、それを地元の人に声をかけながら売る…この風景は時代を越え、ずっと不滅なのである。
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これはトマトうどんか!?ラグマンはお口の中でシルクロード
現代のサマルカンドの旧市街は、国内でも随一の観光地で、伝統料理を出すお店がいくつかある。とはいえ、観光客用レストランは箱は大きいのだが、大量に料理を出すためにどーも大味でおいしくないことがある。しかし、決してウズベキスタンの料理が美味しくないということはなく、どちらかというと、庶民的な料理のほうが絶品なのだ!
…と、ハードルを上げてしまったが、その「おいしい」というのは日本人からすれば確実に好きなものである「うどん」がメインだから、口に合わないことがない。そう中央アジアの庶民の料理の中でも人気が高いのが、ラグマンと呼ばれる手延べ麺なのだ。これは中力粉に塩と水を入れてこねて両手で伸ばすもの。…かなりうどんと製法が似ている。とはいえ、スープは基本的にトマスペースを中心としたもの。
しかし、麺の上に羊肉、野菜、唐辛子といった具材が並び…日本でいえば、創作系うどんのような派手な料理に見える。一方、ウズベキスタンのラグマンはディルと呼ばれるハーブが入っていることが多く、ディルは中央アジアや西アジアが原産であり、これが入っていることで、フレンチのようなさやわかな香りがする。さらにはパクチーも入っていて、エスニックなんだか…ヨーロピアンなんだか。
しかし、東西の料理文化が見事に一つに収集したということもあり、パスタ、ラーメン、うどんの魅力がすべて一つに凝縮したともいえる味わいは、どこか散らかっているように思えるが、食べた後の満足感はかなり高い!
さらに、ラグマンには焼きうどんタイプの「ボソラグマン」を出す店もよく見かける。これもまた中国料理の影響なのだが、食べてみるとトマトのペーストが鉄板で炒められることで、また独自の旨味を生み出し…ナポリタンのようなコクが出るから不思議だ。一つの料理で東西の料理の旨味が多く出すぎていて、お口の中だけでも「シルクロード」が完成してしまう。
…これは「世界遺産級」の味わいだ!
東西交流の「賜物」であるラグマンは奥が深い…
さらに細かいことをいうと、ウズベキスタンは汁ありタイプのラグマンが多く、うどんやラーメンのような見た目をしているのだが、中国西部のウイグルのほうにあるラグマンは油そばのような汁かけタイプが多い…。実はウズベキスタンでも地方や店ごとに違いがあって、基本的にはトマトベースの麺料理であるのは違いないのだが、結構スタイルは異なる。そう…中央アジアではすごくメジャーなのだが、我々はこの料理についてあまり知ることは少ない。
これもシルクロードがあちこちに伸びていて、そのルートも複雑であったことから、この料理がどこから来てどこへ伝わっていったのかは不明なのだ。…でも、東西交流というのは、そんなルーツなんて分からないほどに混ざりあった結果なのだから、とにかく、ラグマンはシルクロードの賜物としてありがたくいただくとしよう!
世界遺産のついでに世界遺産級のグルメも同時に楽しんでみてはいかが?
※こちらの内容は、あくまでも過去に現地を訪れた際に体験したものであり、最新情報はご自身でご確認ください。