登録区分 | 自然遺産 |
登録基準 | (10) |
登録年 | 2021年 |
南九州から台湾東部まで島々が点在する琉球諸島。島々には、アマミノクロウサギやイリオモテヤマネコなど絶滅危惧種に登録された生物がいくつも生息していることで有名ですね。ところで、なぜこれらは世界遺産に登録されたのでしょうか?意外と知ってそうで知らない!
ここでは、今回は奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、これらの島々について詳しくなること間違いなし!
世界遺産・奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島とは?なぜ評価されたのかを簡単に解説!
九州南部から台湾の東部まで約1200kmにも渡って、まるで鎖のように島々が点在する琉球諸島。世界遺産として登録されてるのは、鹿児島県の奄美大島と徳之島、沖縄県北部(国頭村、大宜味村、東村)、西表島の4つのエリアです。
黒潮と亜熱帯性気候によって、島々は亜熱帯照葉樹林に囲まれています。奥地の原生林は人間が足を踏み入れることの少ないエリアもあることから、固有種の割合が非常に高いというのが特徴。特に日本の陸生脊椎動物の約57%が生息していて、固有種であるがゆえに、アマミノクロウサギ、イリオモテヤマネコ、オキナワトゲネズミなど、IUCNリストに記載された絶滅危惧種も見られ、それぞれの保護区ともなっています。
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島が評価されたのは、以下の点。
登録基準(x)
世界でも有数の多様な生態系が見られるエリアで、日本の陸生脊椎動物の約57%が生息し、日本の固有種の44%が暮らしています。特に登録エリアに生息している哺乳類は62%、陸生爬虫類は64%、両生類は86%が固有種であるという貴重なエリア。そして、アマミノクロウサギやイリオモテヤマネコ、オキナワトゲネズミ、ヤンバルクイナなど、固有種であり絶滅危惧種が見られるのも特徴です。
つまり、
「日本だけではなく、世界でも珍しい固有種が多く生息するエリアであり、その中には絶滅危惧種も見られる」
という点で評価されています。
実際に登録されているのは、5つの資産で構成(登録エリアとしては4つでありますが、徳之島は島内で2つの構成資産が存在)。
・奄美大島/鹿児島県
・徳之島/鹿児島県
・沖縄県北部(国頭村、大宜味村、東村)/沖縄県
・西表島/沖縄県
それでは、ひとつひとつ解説していきましょう。
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島の構成資産をご紹介
1、奄美大島/鹿児島県
鹿児島市と沖縄本島のほぼ中間に位置する、総面積約712平方kmの島。日本では本土4島を除くと5番目に大きさを誇る島でもあります。島は奄美諸島全体をカバーする奄美群島国立公園の一部で、世界遺産として登録されているのは、島中央部の湯湾岳(標高694m)など原生林が広がるエリア。
特に特別天然記念物でもあるアマミノクロウサギは、この島と徳之島でしか生息しない絶滅危惧種で、1属1種で近縁種は存在しないという非常に珍しいウサギ。これはウサギ科の仲間の中でも原始的な種に近いとされています。他にも奄美諸島の固有種であるルリカケスという絶滅危惧種の鳥類も生息。
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2、徳之島/鹿児島県
奄美群島の中でもほぼ中央にある、総面積約248平方km島で、大きさでいえば奄美群島の中でも2番目。島はほぼ石灰岩で構成されていて、カルスト地形が発達した島でもあります。島内は南北でそれぞれ登録エリアが分かれていますが、どちらも内陸の原生林が多く残るエリア。
この島でもアマミノクロウサギが見られますが、北部と南部では数千年前から異なる遺伝的特徴を持ち、生態も異なるという非常に珍しいもの。
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3、沖縄県北部(国頭村、大宜味村、東村)/沖縄県
沖縄本島でも国頭村、大宜味村、東村に属する北部は自然が多く残るエリアで、北部は昔から「やんばる(山原)」と呼ばれています。世界遺産としてはやんばる国立公園の山間部が主に登録されていて、沖縄最高峰の与那覇岳(標高503m)も含む原生林が残るエリア。
特に沖縄北部だけにしか生息していない、絶滅危惧種ヤンバルクイナは、ほとんど飛ぶことができない珍しい鳥類。これは1981年に新たなるクイナの仲間と発見され、新種として知れ渡るようになりました。他にも標高300mにあるスジダイの天然林に生息する、オキナワトゲネズミもまた絶滅危惧種。
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4、西表島/沖縄県
沖縄でも最も西に位置する八重山諸島に属している島で、山がちであったため、開発がされることがなく、今でも多くの動植物が暮らす島でもあります。世界遺産としては、人間が暮らす沿岸部以外はほとんどの場所が登録されているのが特徴。
島の代名詞的存在が特別天然記念物のイリオモテヤマネコ。20世紀に入って発見され、大陸や台湾などに生息するベンガルヤマネコの亜種であることが分かりました。西表島はヤマネコが暮らす島としては世界最小でもあります。島は大型哺乳類がおらず、イリオモテヤマネコは生態系の頂点であったものの、家畜や交通事故、開発の影響によって数は減少しつづけ、今では100匹前後しか存在していません。
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世界遺産マニアの結論と感想
奄美群島と沖縄北部、西表島といえば、青い海とジャングルのイメージではありますが、実は世界遺産として評価されているのは「生物多様性」の部分。特に固有種が多く、絶滅危惧種もいくつも存在していることから評価されているのです。
ちなみに、イリオモテヤマネコの発見は世界的にニュースになった影響か、1977年に当時のエディンバラ公フィリップが当時の皇太子にイリオモテヤマネコの保護を訴える内容の手紙を送ったというのは有名な話。彼は環境問題について関心が高く、それが保護のきっかけにもなったこともあり、最終的に世界遺産になったのですから、西表島の世界遺産登録は天国のフィリップ殿下も喜んでいるでしょう。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。