世界遺産コラム「未来のテクノロジーと世界遺産は共存できるか?」

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世界遺産が誕生してほぼ半世紀…世界は大きく変わりました。例えば、携帯電話が発明されたのは1983年ですが、これは世界遺産条約が1972年に採択されてから10年も経っています。やがて携帯電話はスマホとなり、日々技術は進化しているのに、世界遺産だけが当初から「古い状態」で残り続けています。それもそのはずで、世界遺産はあくまでも、破壊などの脅威から守るための体制であり、むしろ「古い状態」であり続けること自体が良しとされているのです。

しかし、我々が生きているのは現代であり、過去をそのまま保存できるなんてのは実際は無理であり、そこは最新技術によってカバーされているのですが、世界遺産はどこまでも許されるのでしょうか?世界遺産マニアがちょこっと考えてみました。

目次

知床事故の対策がまさかの「環境保護問題」に発展!?

知床
画像素材:shutterstock

2022年の知床の観光船の事故のように、登録エリアが広く、近隣の海域ではいざという時に観光客と連絡がとれないなんてこともあります。この痛ましい事故から、携帯電話の基地局が整備されて、受信エリアが海域でも拡大するという計画が進む予定でした。

しかし、基地局を稼働するための太陽光パネルや蓄電池などを置く大型事業が公表されると、自然保護団体などから抗議が発生して、山火事につながるだとか、設置される場所が鳥の巣の近くだとか…どうも話がこじれてしまい、環境問題に触れてしまったのです。そして、全国から4万7600筆の抗議の文書が集まり、日本野鳥の会や世界自然保護基金までも遺憾の意を表すなど、もはや何もできない状態になってしまい、計画は「一時停止」に。

…確かに知床は「しれとこ100平方メートル運動」が始まり、これは日本における最初のナショナルトラスト運動(自然環境や文化財を保護・管理する運動)となったことから、特に環境破壊につながるものにすごく敏感であったということもあってか、そのへんの配慮が足りなかったのは事実ではありますけどね(確かに、知床にこれが置かれるとゾッとはします)。

でも、ここで議論を終えて良いの?

ヨセミテ国立公園
画像素材:shutterstock

しかし、よーく考えてみてください。あくまでも議題は環境問題ではなく、「安全」を目的としているので…なんとか解決したいところ。もちろん、知床は自然遺産であることから、アメリカのヨセミテの国立公園のように「ウィルダネス(手つかずの自然)」を維持するのは大事だとは思うのです。そして、知床の事故は自然の脅威というよりかは、荒波の中、無理やりツアーを決行したという「人為的ミス」であるので…そこは知床の人々からすると怒り心頭ではあると思います。

しかし、自然を守るために人間が知恵を絞らない…というのもまた別の話とは思うのです。例えば、「ペロブスカイト太陽電池」。ペロブスカイトという鉱物の結晶構造を利用した太陽電池で、軽くて柔軟な太陽電池が作れるため、紙のように薄くできるのが特徴です。折り曲げることができるので、シリコンのものに比べてスペースも削減可能。そして、発電効率も数年で約2倍に向上していて、なんとCO2排出量も抑えられるのです!そして、色も変更できるので、景観も壊しません。

…もちろん、太陽光発電であることから、事故の可能性は0ではありませんが、こうやって技術は進歩しているわけであり、環境保護と安全性を天秤にかける必要はなくなる日だってくるかもしれないのです。環境問題だって「技術」でカバーするという選択肢だってあるじゃないですか?

大事なのは「遺産を守ること」であり、手段ではない…?

画像素材:AdobeStock

…と、少し偉そうなことを言ってしまったかもですが、やはり、自然遺産はあるがままにあることに価値があるわけなので、できればそのまま残したい!という気持ちも世界遺産マニアとしてもあります。ただ遺産を守るにも「予算」が必要であり、それが観光収入であるとなると限界はあるでしょう。そこをどれだけ未来テクノロジーでカバーできるかが、これからの課題だと思うのです。

大事なのは、人間側の0か100かの議論ではなく、人間の進化とともに世界遺産を守ることができるのなら、未来テクノロジーに頼ったっていいとは思うのですよ!ま、でも、まだまだ再生可能エネルギーは発展段階であり、それができたら苦労はないのですけどね(笑)

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1200以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定マイスター認定済。

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