ベトナム麺というと…米粉のフォーを思い浮かべるだろうが、実はフォーは北部で人気のある麺で、リゾート地で有名なダナンなど中部ではミークアンという幅広のきしめんのような麺が主流。おもに汁なし麺タイプなのだが…なんとおせんべいを入れて食べるという他にはない独自のスタイル!そんなミークアンとはどんなグルメなのか?
今回は、ベトナムの世界遺産・ミーソン聖域の帰りに味わったグルメ「ミークアン」を紹介。世界遺産巡りのついでに味わってほしい「世界遺産級の激ウマ・グルメ」を解説していこう。
ベトナムの世界遺産「ミーソン聖域」はダナンから気軽に行ける寺院遺跡
ダナンはベトナム中部の大都市。今でこそ、アジアで注目のリゾート地でもあるのだが、かつてはチャンパ王国(192〜1832年)の首都であったというほどに歴史が深い場所。チャンパとは、ベトナム中部から南部にかけて繁栄した王国で、ヒンドゥー教徒であったため、今でも各地にヒンドゥー教の聖域跡が残っている。
その中でもダナンから南へ約40kmの位置にあるミーソンの聖域は、チャンパ王国の聖域であったとされる場所。チャンパ王国はまだまだ分からないことが多いのだが、ここは内陸の渓谷にレンガ造りの寺院の遺構がいくつも残っていて…失われた王国の記憶をかすかに残す場所だ。ダナンからも近く、気軽にツアーで訪れることができることから、半日くらいでタイムスリップした感覚になる。
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お煎餅を麺の中に入れる!?変わった食べ方のミークアン
ミーソン聖域は山の中にある静かな環境だが、ダナンは成長著しいベトナムを代表する大都市で、海沿いには高層のホテルが乱立していて、全く世界観が異なるというのも面白いところ。そんなダナンだが、古き良きベトナムの文化が残っていないわけではなく、ダウンタウンで気軽で食べられる「ミークアン」はダナンを代表するグルメだ。これは「クアン麺」という意味で、ダナンのあるクアンナム省を代表する料理。とにかく、ミークアンの専門店の専門店が並ぶ。
このミークアンを魅了するのは、やはりこの平打ちの麺だ。一般的に「ミー」というと小麦麺を意味するのだが、なぜかミークアンは米粉であり、まるでうどんのような弾力を持つので、食感はどちらかというと小麦粉麺なのだ。さらに、麺をターメリックで色を付ける店もあることから、今でもミークアンを小麦の麺だと勘違いする人もいるらしい(食べてみたら分かる!)。
そんなダナンはミークアンの聖地のような場所で、ありとあらゆるミークアンがあるので、何日も滞在して食べ歩くだけでも、十分に楽しめるジャンルだ。だが一応、基本スタイルはあり、少なめのスープには大抵ターメリックが入っていて、具材は鶏肉、豚肉、エビなどが選べ、店によっては10種類くらい具材が選べたりする。バジルやコリアンダーなどが入ったハーブが別皿で盛られているので、麺にはお好みで入れるべし。
…しかし、この麺独自のマナーといえば、ゴマ煎餅だろう。まず、麺と同時に薄く平べったいゴマ煎餅を提供する店が多い。…いや、これどーすんの!?と思うだろうが、青森で有名なせんべい汁のようにちぎってスープの中に入れて「せんべい汁うどん」のようにして食べるのが一般的。しかし、麺とせんべいって…と思うかもしれないが、汁に浸されたせんべいは時間が経過すると「麩」のような存在となり、歯ごたえのある麺と相性が抜群なのだ!
…これは「世界遺産級」の味わいだ!
結局、煎餅はどう使うのが正解なのか?
世界広しといえど、お煎餅と麺をこれほど活用した麺料理はないだろう。とはいえ、ゴマ煎餅の活用法はさまざまでベトナムの方でも丼に入れずに、それ単体で食べる人もいれば、スープにつけて食べるというナチョスのスタイルで楽しむ人もいるので、100%正しい食べ方なんてない様子。
しかし、米大国である日本人からすれば盲点のような料理で、力うどんのような「米+麺」という王道の組み合わせはあれど、せんべい汁以外にまともに育ったお煎餅料理はないわけだから、改めて世界の広さを感じる料理である…。もしかして、チャンパ王国の人たちが思いついたアイデアだとしたら、感慨深いですな。
世界遺産のついでに世界遺産級のグルメも同時に楽しんでみてはいかが?
※こちらの内容は、あくまでも過去に現地を訪れた際に体験したものであり、最新情報はご自身でご確認ください。