中国の世界遺産「廬山国立公園」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産
登録基準(2), (3), (4), (6)
登録年1996年

廬山は、中国の中東部の長江沿いに位置する、標高1474mの漢陽峰(かんようほう)を持つ景勝地。雲がかかる森林や断崖絶壁といった景観は、李白・杜甫、白居易などの詩人が山水詩を詠んだり、浄土宗発祥の地である東林寺、中国四大書院の一つ白鹿洞書院なども置かれたりと、中国の文化に多大な影響を与えてきました。そして、中国の四代避暑地とされ、毛沢東など中国共産党の高官の山荘が多くあるのも特徴。

ここでは廬山国立公園がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、廬山国立公園について詳しくなること間違いなし!

目次

廬山国立公園とは?

廬山国立公園
画像素材:shutterstock

江西省の北西に位置する九江市は、長江中流域の南岸に位置する都市。廬山国立公園は、標高1474mの漢陽峰(かんようほう)を中心に171もの峰々、断崖絶壁や深い森があり、東側には中国最大の淡水湖・鄱陽湖が広がる景勝地でもあります。ここは秦の始皇帝から2000年以上に渡って、詩人、芸術家、指導者たちに愛されてきました。

もともとは中国初の歴史書である『史記』を作成した司馬遷が紀元前2世紀頃にここを訪れたことで有名。特に唐(618〜907年)の時代の詩人たちによって山水詩を詠まれ、詩仙と言われる李白、詩聖・杜甫、白居易(白楽天)などによる4000首以上もの詩詞がここで詠まれました。特に李白はこの地がお気に入りで、ここでは14首もの詩歌を残しまています。その景観は山水画の発祥でもあり、中国文化において多大な貢献をしてきました。

白鹿洞窟学院/廬山国立公園
画像素材:Gisling(Wikimedeia Commmons)

ここは後漢(25〜220年)の時代には既に仏教寺院が存在していて、4世紀に高僧・慧遠によって東林寺が建造されました。彼は中国仏教の開創者でもあり、浄土教の祖。奈良時代、日本に渡る前にかの鑑真もここを訪れたとされています。

廬山には10世紀に建造された書院・白鹿洞窟学院があることでも有名で、南宋時代の大家である朱熹(朱子)が12世紀後半に再建。ここは学問の中心地となり、19世紀まで700年近く朱子学(儒教の新しい学問体系)が研究され、中国四大書院の一つとなるほどに。

近代になると避暑地としても有名になり、19世紀後半から20世紀にかけて600もの山荘が築かれ、1930〜40年代には南京国民政府の夏の首都となるほど。特に毛沢東はこの地に3度も訪れ、1959年に廬山会議を開き、これは大躍進政策(農作物と鉄鋼製品の増産施策)の続投を決めた大事な会議でした。

廬山国立公園はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

廬山国立公園
画像素材:shutterstock

廬山国立公園が評価されたのが、以下の点。

登録基準(ii)
廬山の風景に溶け込むように佇む寺院や書院などは、紀元前3世紀の前漢王朝時代から20世紀初頭まで長い期間に発生した価値観の交流によって生み出された文化的景観であるという点。

登録基準(iii)
廬山の風景は、これをテーマにさまざまな分野の作品で取り入れられ、それらは文化と自然の美しさの調和が見られ、中国における哲学や芸術に影響を与えてきたということ。

登録基準(iv)
廬山の白鹿洞窟学院は、中国の伝統的な書院の建築様式が見られ、特に石造りの橋である観音橋は、中国の橋梁建設において重要な役割を果たしました。そして、高官達の山荘は19世紀後半から20世紀の中頃まで、西洋文化が中国に浸透していたということを示すという点。

登録基準(vi)
廬山の東林寺は、浄土宗を創設した慧遠ゆかりの地で、中国における仏教布教の幕開けでもありました。朱熹は白鹿洞窟学院を再興し、彼の創設した朱子学は、宋と明の時代において教育の基盤となり、700年に渡って中国だけでなく、日本や韓国、東南アジアまで普及し、アジアの教育史において重要な役割を果たしているということ。

世界遺産マニアの結論と感想

廬山の森と断崖絶壁が織りなす景観は、詩や山水画など、さまざまな芸術作品のテーマになるほどで、大自然の中に建築物が並ぶ文化的景観として評価。そして、建築においても白鹿洞窟学院や山荘は中国の建築史において重要な段階を示し、浄土宗の発祥の地である東林寺、朱子学の生まれた白鹿洞窟学院など、仏教や朱子学においても重要な場所であるというのもポイント。

ちなみに、廬山の名産品である廬山雲霧茶は、茶摘みの後、数時間の間、わざと茶の葉をしおらせて煎るという独特の技法。これによって香りが爽やかで濃厚になるというもので、中国十大銘茶の一つ。しかし、廬山以外の産地でも、割とよく「廬山雲霧茶」という名前で売られていますが、そういうのはだいたい安価で美味しくないので要注意。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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