キプロスの世界遺産「トロードス地方の壁画聖堂群」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産
登録基準(2), (3), (4)
登録年1985年(2001年拡大)

キプロス島の西部から中央部に位置するトロードス山脈の丘陵地帯には、11〜16世紀にかけて建造された聖堂(一部修道院)が世界遺産に登録されています。これらは石造りの土台の上に木造の聖堂が築かれ、内部には美しいフレスコ画が壁一面に広がり、キプロス島のビザンツ美術の発展が見られるもの。

ここではトロードス地方の壁画聖堂群がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、トロードス地方の壁画聖堂群について詳しくなること間違いなし!

目次

トロードス地方の壁画聖堂群とは?

トロードス地方の壁画聖堂群
画像素材:shutterstock

キプロス島のトロードス山脈の南方に点在する、ビザンツ帝国時代からキプロス王国(1192〜1489年)時代の9つの聖堂と1つの修道院が世界遺産に登録。これは11〜16世紀にかけて500年に渡ってキプロス島の芸術が見られるもの。各聖堂や修道院は、石造りのドームと外壁の上に木製の屋根が置かれるという構造で、これはトロードス地方独自のもの。内部には豪華なフレスコ画のイコンが壁一面に描かれていて、日付の刻まれた碑文も豊富にあるため、芸術史においては重要な資料ともなっています。

屋根の聖ニコラオス聖堂/カコペトゥリア

屋根の聖ニコラオス聖堂/カコペトゥリア/トロードス地方の壁画聖堂群
画像素材:shutterstock

カコペトゥリアという町の南西部に位置する聖堂。ここは11世紀に建造され、12世紀に切り妻屋根が加えられたことから「屋根」と付け加えられました。ここは「最後の審判」だけでなく、正教会で重要視されている12の祭日「十二大祭」などが描かれています。

生神女聖堂/ムトゥラ

山間に位置するムトゥラ村には、1280年に建造されたキプロスでも最古の木製屋根の聖堂とされています。「生神女」とは、東方教会の聖母マリアを示し、ここの壁画も「最後の審判」や「十二大祭」を描いたもの。

トロードス地方の壁画聖堂群はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

大天使ミハイル聖堂/トロードス地方の壁画聖堂群
画像素材:shutterstock

トロードス地方の壁画聖堂群が評価されたのが、以下の点。

登録基準(ii)
これらの壁画聖堂は、キプロスの絵画と西ヨーロッパのキリスト教美術には密接な関係が存在したと考えられ、フランス出身のリュジニャン家がキプロス王家であったことから、東西の芸術交流が見られるものであるという点。

アシィヌの生神女聖堂/トロードス地方の壁画聖堂群
画像素材:shutterstock

登録基準(iii)
ニキタリ村のアシィヌの生神女聖堂には「アレクシオス1世コムネノス(1081〜1118年)」の名前があり、当時の首都であったコンスタンティノープルの芸術家によるものと推測され、ラグデラ村の豆の生神女聖堂には、アレクシオス1世の父でマケドニア朝のイサキオス1世コムネノス(1005年? 〜1061年)によってキプロスが売却された時期に描かれたもので、ビザンツ帝国のコムネノス王朝(1081〜1185年)時代のビザンツ美術の傑出した例となっているということ。

登録基準(iv)
トロードス地方の壁画聖堂群は、ビザンツ帝国時代の地方で見られる宗教建築が保存された例で、シンプルな構造とは対象的にビザンツ様式を引き継いだ美術様式が見られ、土着の建築様式と調和しているという点。

世界遺産マニアの結論と感想

トロードス地方の壁画群は、見外観は地味なものの、内部は土着の建築様式と調和し、美しいフレスコ画などを含むビザンツ芸術が見られ、さらに壁画からはビザンツ帝国からキプロス王国への移行期であったことなどを証明しているという点で評価されています。

ちなみに、アレクシオス1世コムネノスの娘であり、やがて歴史家になったアンナ・コムネナは佐藤二葉さんの漫画『アンナ・コムネナ』の主人公。当時のビザンツ帝国の政治事情なども分かりやすいので、興味がある人は読んでみてはいかが?

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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