登録区分 | 文化遺産 危機遺産2013年〜 |
登録基準 | (3), (4), (5) |
登録年 | 2011年 |
シリア北部の石灰岩の山岳地帯にかつて点在していた40もの村落は、現在は遺跡となっています。ここはローマ時代の農地計画跡も残っていて、古代からビザンツ帝国時代までの暮らしが見られるもの。遺跡には、住居や非キリスト教の聖域、キリスト教会、浴場、公共物など、土着の多神教が崇拝された時代からビザンツ帝国によるキリスト教世界へ変化していったという文化的景観を示しています。
ここではシリア北部の古代村落群がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、古代村落群について詳しくなること間違いなし!
シリア北部の古代村落群とは?
シリア北部のアレッポ県からイドリブ県まで、石灰岩の山岳地帯に40もの集落遺跡があり、8つの公園としてグループ化されて登録されています。この地は1〜7世紀にかけて農業が行われていて、住居や異教徒の聖域、キリスト教会、貯水池、浴場など、保存状態の良い集落遺跡が点在。これらはローマ帝国時代の土着の異教の世界からビザンツ帝国によるキリスト教の世界へと移行を示すもの。
集落跡には防御壁や水利灌漑施設、ローマの農地計画が現在でも残され、これらはかつてここに住む住人たちが農業に関して熟知していたことを証明するもの。しかし、8〜10世紀にかけてこの地は放棄。ほとんどが遺跡となり、19世紀に発見されると「キリスト教徒にとってのポンペイ」とされるほどに。古代村落群は当時の暮らしが鮮明に分かるようになりました。
特に有名なのは「聖シメオン教会」で、4世紀の聖人・登塔者シメオンを祀るもので、シリアで現存する教会でも最も古いものの一つ。他にも「ハラーブ・アッ=シャムスのバシリカ」は4世紀末に建造された教会で、柱廊の保存状態が良いもの。
シリア北部の古代村落群はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
古代村落群が評価されたのが、以下の点。
登録基準(iii)
シリア北部の古代村落群は、1〜7世紀に石灰岩の山岳地帯で発展し、地中海性気候の農業文明の生活様式と文化的伝統を示しているという点。
登録基準(iv)
シリア北部の古代村落群は、古代末期からビザンツ帝国時代の農村の邸宅と宗教建築物が並び、ここでは古代における非キリスト教の世界からビザンツ帝国のキリスト教世界へと移行したことを示す景観が残るということ。
登録基準(v)
集落遺跡には土壌や水、石灰岩、産業景観などが見られ、これらは1〜7世紀までの自給自足の生活を続けていた農村集落の存在を示し、当時の防御壁や水利灌漑施設、ローマの農地計画跡が現在でも残されているという点。
世界遺産マニアの結論と感想
シリア北部の古代村落群は、完全に遺跡ではありますが、ここは古代の多神教の時代からビザンツ帝国時代への変化が見られる景観が残り、かつて繁栄した農業文明の跡地として、防御壁や水利施設、ローマ時代の農地計画が今でも見られるという点で評価されています。
ちなみに、登塔者シメオンは激しい修行を重ねるという求道者で、なんと塔の上に40数年も暮らし、後に「登塔者」として尊敬されるようになりました。そして「世界一柱の上に長く座り続けた人物」としてギネスブックにも登録されていて、ギネスブックの歴史上、一度も更新されていない記録でもあります。…そりゃそうだろ。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。