登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (1), (3), (4) |
登録年 | 1994年 |
首都リマから南へ約400km。ナスカという小さな町の郊外には紀元前2世紀〜後6世紀に描かれたという地上絵があります。地上絵があるエリアは約450平方kmもあり、ここにはなんと1500以上の地上絵が残存。そして、ナスカの地上絵の北側にはパルパというもう一つの地上絵が点在するエリアも広がっています。
ここでは、ナスカとパルパの地上絵がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めばナスカとパルパの地上絵について詳しくなること間違いなし!
ナスカとパルパの地上絵とは?その場所は?
ペルー南部のイカ県に位置する小さな町ナスカ。ここはペルーの南海岸に貫く丘陵地帯とアンデス山脈の間にある盆地。ナスカ川とインヘニオ川に囲まれた乾燥地帯の表面は褐色の小石が広がっており、表層の下には白い砂の層があり、この小石を取り除くと、白い部分が露出します。この原理を利用し、無数の地上絵が描かれました。
地上絵は1926年にアメリカの人類学者アルフレッド・クローバーによって発見されました。しかし、これはあくまでも直線の地上絵のみ。現在のような動物や昆虫の形をした地上絵は、考古学者のポール・コソックとドイツの研究者マリア・ライへ(1903〜1998年)によって発見されています。特にマリアはこの地に住み、さまざまな調査を続け、最終的にはナスカとパスパで1500以上の地上絵が発見されています。
ナスカの地上絵はなぜ消えない?
まず、ナスカは乾燥地帯にあるため、年間降水量は4mmほどなので、まず浸食がほとんどないというのが最大の理由。そして、地上絵を描く石灰質の土は、朝と夜の寒暖差によって酸化して硬化していてくため、風化に強く、大地の部分とのコントラストによって、よりはっきりと目立つようになります。
さらにこの地域は荒野が広がっているため、野生動物がほぼ生息しておらず、これらの線を削られるようなこともありませんでした。このような奇跡的な条件によって、地上絵は残り続けています。
ハチドリ、コンドル、宇宙人?…模様の種類はどれくらいある?
地上絵は、ナスカとパルパとでは微妙にデザインが違っていて、パルパは幾何学模様が多い傾向にあり、「ファミリー」といった人間をモチーフにしたと思われるデザインも有名。ナスカの地上絵は、動物から昆虫、花、木々、模様、巨人など、テーマはさまざま。ちなみに、2022年にはいよいよネコをモチーフにしたデザインも発見されています。
ナスカの地上絵の目的は?誰が書いたもの?
初めて地上絵が描かれたのは、ナスカだと約2000年前、パルパは3000年前。かつてここに住んでいた人々により、動物や図形、模様などをモチーフにした何千もの地上絵が描かれました。地上絵がなぜ描かれたのか?未だに結論は出ていません。マリア・ライへは地上絵は星座を表し、天体の出没方向を表すという説を支持していましたが、現在は地上絵は雨乞いの儀式のため、楽隊の通り道として使用されたとする説が一般的。
これはこの地域で発展したナスカ文明(紀元前後〜800年頃)を築いた人々によって築かれたものであり、彼らは狩猟や農業をしながら生活をしていたため、地上絵はナスカの人々の世界観を示したものとされています。
実は地上絵を「新発見」しているのは山形大学!
地上絵は今でも新しいものが発見されることが有名。日本の山形大学では、2012年にナスカに「ナスカ研究所」を開所しました。彼らの活躍もあり、2013年から続々と地上絵が発見され、なんと2019年に新たに143点の地上絵を発見したことでも知られます。
ナスカとパルパの地上絵はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
ナスカとパルパの地上絵が評価されたのが、以下の点。
登録基準(i)
ナスカとパルパの地上絵は、その規模もさることながら、ユニークな芸術作品であるということ。
登録基準(iii)
地上絵は、紀元前8世紀〜後8世紀にかけて、この地においてコロンブスがアメリカ大陸に到達する以前の文明が存在したことを証明するという点。
登録基準(iv)
2000年以上にわたって残り続ける地上絵は、自然環境を利用した高度な技術であったということ。
世界遺産マニアの結論と感想
ナスカの地上絵は、2000年以上前に描かれたものであるのにもかかわらず、現在でもその姿を眺めることができるという点が評価。そして、地上絵というのは、西洋人が到達する以前に高度な文明があったことを現在に示しています。
ちなみに、ナスカの地上絵の南には、カワチと呼ばれる都市遺跡があります。ここには日干し煉瓦で形成された階段ピラミッド群があり、祭祀が行われた場所であったと考えられるもの。なんとここではピラミッドが34箇所も発掘されていて、どうやら地上絵との関連性は高そうです。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。