スロヴェニアの世界遺産「リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群=人を中心とした都市計画」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産
登録基準(4)
登録年2021年

スロヴェニアの首都リュブリャナ。ここは建築家であり都市計画家であったヨジェ・プレチニックによる作品が現在でも多く残っています。これは20世紀前半、地方都市であったリュブリャナの旧市街に多くの公共施設を作り、それらを組み込むことによって街を発展させるという施策でもありました。

ここでは、リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群=人を中心とした都市計画がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、リュブリャナについて詳しくなること間違いなし!

目次

リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群=人を中心とした都市計画とは?

リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群=人を中心とした都市計画
画像素材:shutterstock

リュブリャナは、スロベニア中央部のリュブリャナ低地に位置する都市。人口約30万人と町としての規模は少ないものの、1991年にスロヴェニア共和国が独立して以来、首都となっています。

この地には、紀元前2000年頃から人が住み始め、古代ローマには年が建造されたと考えられているものの、「リュブリャナ」として言及されたのは12世紀。町の支配者は何度も変わったものの、ここは現在のスロヴェニアを構成するスロヴェニア人が住んでいました。他の地域同様に、20世紀前半に活発だった独立したいという思いは、第一次世界大戦後にオーストリア゠ハンガリー帝国が崩壊すると盛んとなっていくのです。そんな社会の変化の中、20世紀前半になるとヨーロッパのモダニズム建築の波がこの町にも到達。

ヨジェ・プレチニックによる都市計画

ヨジェ・プレチニック
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リュブリャナ出身の建築家であったヨジェ・プレチニック(1872〜1957年)は、当時のオーストリア゠ハンガリー帝国の首都であったウィーンで、近代建築家であったオットー・ワーグナーの下で修行を重ね、ウィーン・プラハなどで活動をした後、最終的にスロヴェニアに帰国して、リュブリャナの都市計画に参加します。

リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群=人を中心とした都市計画
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彼は旧市街を自然に調和するように都市を計画。街を流れるリュブリャニツァ川に沿って堤防と橋を含めた遊歩道を作り、川の西側にある、南のトルノヴォ橋から北のコングレス広場までの並木道を建設。こうして旧市街と郊外を繋ぐように都市を計画し、中心部には公園や広場、遊歩道、橋、図書館などの公共施設が建造され、これを中心に教会や市場など組み合わさせ、街全体を近代都市へと発展させたのです。

つまり、プレチニックは既存の建造物などを組み込んで、住民が暮らしやすいような都市へと再生させたということ。

登録されている主な構成資産

三本橋

三本橋/リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群=人を中心とした都市計画
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リュブリャナのシンボル的存在で、町の中央に位置する3つの橋。ここには昔から橋がかけられていたものの、1842年にイタリア人の建築家ジョバンニ・ピッコによって石の橋が建造。その後、1932年にプレチニックの設計によってこの端の両側に歩行者用の橋がかけられ、三本橋となりました。

リュブリャナ中央市場

リュブリャナ中央市場/リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群=人を中心とした都市計画
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街の中心部にある三本橋から少し東に位置する市場。1895年の大地震が発生する前は修道院があり、その跡地に1931〜1939年の間にプレチニックが市場を設計。市場にしては珍しく、ルネサンス風の建築物で川沿いに建造されているため、対岸に橋を多くかけるということを計画していましたが、長い間放置。2010年になってようやく橋が建造され、これは「肉屋の橋」と呼ばれています。

スロヴェニア国立大学図書館

スロヴェニア国立大学図書館/リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群=人を中心とした都市計画
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1774年に設立された図書館で、1930〜31年にかけてプレチニックによって設計された建物の中にあります。図書館ではあるものの、まるでイタリアの宮殿のようなデザインで、プレチニックの最高傑作ともういうべき作品。

トルノヴォ橋

トルノヴォ橋/リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群=人を中心とした都市計画
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リュブリャナ中心部の南側にあるグラダシュチツァ川にかかる橋。1929〜1932年にプレチニックによって設計・建造されました。幅20mの小さな橋ですが、橋そのものに木が植えられているという世界でも珍しいデザイン。

聖ミハエラ教会

聖ミハエラ教会/リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群=人を中心とした都市計画
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リュブリャナ郊外にある教会で、1939年に完成したローマ・カトリックの教会に属するもの。湿地帯に造られたため、鐘楼は本館とは別に設計され、本館はアーチ型にしてコンクリート瓦などを用いて軽量化を図るなど、斬新な設計でもありました。

リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群=人を中心とした都市計画はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

三本橋/リュブリャナのヨジェ・プレチニック作品群=人を中心とした都市計画
画像素材:shutterstock

リュブリャナが評価されたのが、以下の点。

登録基準(iv)
都市そのものを新しく設計せずに、旧市街や既存の建築物を組み合わせながら、遊歩道や橋、公共施設などを増設し、新しい都市空間を作り出したという点が斬新であったということ。

世界遺産マニアの結論と感想

これも分かりづらい世界遺産ですが、今でいえば「既存の古い街をうまくつなぎ合わせて現代的な都市設計をする」という省エネ設計が評価されたもの。つまり、プレチニックは低予算とユニークなデザインの2つを見事に実現したということでしょうか。「人を中心とした都市計画」というのは、主に公共スペースや公共施設を加えるということです。

ちなみに、リュブリャナのシンボルである「竜の橋」を知っている人は多いかもしれませんが、これは世界遺産には登録されていません。しかし、これはリュブリャナ初の鉄筋コンクリートの橋であり、大変貴重なもの。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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