登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (1), (2), (3), (4), (6) |
登録年 | 2000年 |
アッシジは、首都ローマから北へ130kmの距離に位置する小さな街で、修道会の一つであるフランシスコ会発祥の地。丘の上にあるサン・フランチェスコ聖堂はゴシック様式の傑作で、チマブーエ、ジョット、マルティーニなどの芸術家のフレスコが描かれています。アッシジはその後ヨーロッパ中で流行するイタリア芸術の出発点となった地。
ここではアッシジ、フランチェスコ聖堂と関連修道施設群がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、アッシジについて詳しくなること間違いなし!
アッシジ、フランチェスコ聖堂と関連修道施設群とは?
イタリアの中央部・ウンブリア州にあるアッシジは、人口2万人くらいの小さな町ではありますが、フランシスコ会の創立者であるフランチェスコの出身地で、巡礼地として今でも多くの人々が訪れます。
街の起源は古代ローマまで遡ります。ここは中世に丘の上に作られた都市国家で、南東から北西に斜面が延びていて、城壁に囲まれた要塞都市。12世紀にこの町で生まれたアッシジのフランチェスコが、キリスト教の修道会を開くと、彼の功績を称えるために大聖堂が築かれ、女子修道院などが築かれました。
アッシジのフランチェスコとは?
世界史では割と有名ですが…どういった人物か説明できないのがフランチェスコ(1182〜1226年)。本名はジョヴァンニ・ディ・ベルナルドーネといい、裕福な家に生まれたようです。近隣の都市国家ペルージャとの戦争に参加した後、磔のキリスト像から「フランチェスコよ、行って私の教会を建て直しなさい」というお告げを聞いたとされます。その後、彼は肉体労働をしつつ、托鉢で食事を得るという禁欲的な生活を繰り返していると、徐々に子弟が増えていき、巨大な修道会へと発展。
彼は清貧と平和の思想のもと、小鳥にも説教することもあったことから「自然保護の聖者」とも。それが「フランシスコ会」の基礎となり、やがてイタリアの守護聖人へとなるのです。
登録されている主な構成資産
サン・フランチェスコ大聖堂
1226年にフランチェスコが亡くなると、1228年に彼の功績をたたえるため、教皇グレゴリウス9世によって建設が始まりました。その後、何度も改修されて現在の姿になりました。アッシジは丘の上に位置するため、細長い構造になっていて、段差のある上下2つの教会で構成されています。
ゴシック様式の傑作とされていますが、上部の聖堂はゴシック様式なのに対し、下部の聖堂はロマネスク様式になっています。上部には、フランチェスコの生涯が描かれたフレスコ画が残り、画家ジョットによる『小鳥への説教』が有名。他にも、チマブーエ、マルティーニ、ロレンツェッティ兄弟などの作品が並びます。
1997年の大地震で聖堂は損傷していまいましたが、ボランティアなどによって修復され、現在では元通りになっています。
サンタ・キァーラ修道院
丘の下に位置する女子修道院。アッシジの貴族の娘で、フランチェスコに従ったキァーラの集団、クララ会(キァーラ会)によって13世紀中頃に建造され、地下には彼女の墓もあります。
アッシジ、フランチェスコ聖堂と関連修道施設群はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
アッシジが評価されたのが、以下の点。
登録基準(i)
アッシジに残るサン・フランチェスコ大聖堂は、ヨーロッパと世界の美術史における基礎になるほどに優れた建造物であるという点。
登録基準(ii)
フランシスコ会の精神は、世界に広まり、美術や建築の発展に大きく貢献したということ。
登録基準(iii)
アッシジはローマ時代からの歴史を誇る都市で、丘の上に修道会が開かれ、建築物が並ぶようになり、巡礼地となったという独特の例であり、それらを含めて文化的景観となっているという点。
登録基準(iv)
サン・フランチェスコ大聖堂の建築様式は、その後に築かれた建築や芸術などに大きな影響を与えたということ。
登録基準(vi)
アッシジの街は、中世からフランシスコ会と密接に関わっていて、特にフランシスコ会は他の宗教集団に対しても寛容なメッセージを発しているという点。
世界遺産マニアの結論と感想
アッシジは、フランシスコ会と強く結びついた街で、世界へと布教していくと同時に、街には建築と美術の宝庫であるサン・フランチェスコ大聖堂が作られ、フランチェスコの教えは美術や建築物に影響を与えているという点に評価されています。
フランチェスコは、イタリアの守護聖人だけあって、さまざまなエピソードがあり、布教のために船が難破して死にかけたり、中東で十字軍の攻撃を阻止するために、イスラム軍に乗り込んでスルタンにキリスト教の改宗を提案したりと…誇張されているということもあるでしょうが、なかなかガッツがある人物だったそう。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。