マカオというと、現在では「カジノ」の街のイメージがあるのだが…実は旧市街は世界遺産に登録されるほどに歴史的価値が高いもの。元ポルトガル領地だけあって、街にはヨーロッパだけでなく、アフリカやインドを経由してさまざまな文化がもたらされたのだが、なんとマカオでも最も有名な名物が「アフリカンチキン(ガリーニャ・ア・アフリカ)」。なんでマカオなのにアフリカ!?
今回は、マカオの世界遺産・マカオ歴史地区の帰りに味わったグルメ「アフリカンチキン」を紹介。世界遺産巡りのついでに味わってほしい「世界遺産級の激ウマ・グルメ」を解説していこう。
マカオの世界遺産「マカオ歴史地区」は中国とヨーロッパが交わる場所
まずはマカオの歴史について、1557年にポルトガルがマカオの居留が認められると、1887年には植民地となり、1999年までポルトガルに所属したことで有名なエリア。それもあって、マカオは一応は中国の街並みが広がるのだが…突然ヨーロッパ風の優雅な建造物が登場したりと、なんだか次元が歪んだんじゃないか?と思うほど。それほどにかつてアフリカからアジア、南米まで支配したポルトガルの世界帝国の足跡が残っているのだ。
それは食文化にも見られ、旧市街でも一番の観光スポットである「聖ポール天主堂跡」は16世紀にイエズス会によって作られた教会跡で、ここへと向かう坂道にはポルトガル名物のエッグタルトを販売する店が多く、カスタードの濃厚なあまーい香りが周囲に漂うほど。アジアのムワッとした湿気の中にヨーロッパの香りがする不思議さ…鼻にこびり付いて、ちょっとエッグタルトを食べる気は湧かないかもだが。
「マカオ歴史地区」の詳細はこちら
アフリカではないのにマカオの名物は「アフリカンチキン」
そもそもマカオ人々は、中国系の人口が圧倒的に多いので、どちらかというと地理的に近い広東料理を食べることが多いのだが、ポルトガルの世界中を網羅する航路によって、アフリカやインド、東南アジアの食材が影響し合うという、中華料理においても独特なものとなっている。ちなみに、マカオ土産の定番といえば「ビーフジャーキー」。
その中でも代表的なのが「アフリカンチキン」である。…いや、なんでマカオなのにアフリカなんだよ!って思うかもしれないが、ポルトガルの旧植民地であるモザンビークでピリピリ(キダチトウガラシ)と呼ばれる調味料を漬けて焼いたことから「アフリカンチキン」となったらしい。しかし、この料理、マカオのポルトガル人が発明した説や、アフリカの植民地のポルトガル陸軍将校が持ち込んだ説とかさまざまで、本当に「ピリピリ」から来ているかどうかすらもはや怪しいらしい。
でも、こんだけ混沌とした文化を持つマカオだもの。おそらく、いろんな人によって持ち込まれた結果、ちょうどよい感じで現在のスタイルとなったんだろうなぁ…と推測。
とりあえず、このアフリカンチキンを楽しんでみたい!と思って町中を探したものの、ファストフードではないのでレストランのような場所でないと食べられないらしい。
ちなみに、一般的なローストチキンに数十種類の香辛料を使用したトマト風味のピリピリソースをかけたスタイルは、1961年創業のレストラン「ソルマー」という旧市街にある店が確立したことで有名。まず、ビギナーはここで味わったほうが良いだろう…と来店してみた。客のほとんどが注文するアフリカンチキンがやってくると、小さなパンもセットになっている。…もはや、何料理か分からないが、肉のソースにはライスよりもパンな感じもするし、正解だ。
それでは、ポルトガル海洋帝国の味わってみよう…。うーん、意外と辛くない?ニンニクとトマトの風味でさっぱりとしていると思いきや…いやいや、段々と辛くなってくるぞ!とはいえ、ソースのコクもあり、「ピリピリ」といった刺激するものの、各地の味が混ざり合うという複雑な味わいで、日本人からしたら馴染みのするアレ…つまり、カレーの発展版のような味わいで食べやすい!しかし、これはれっきとした中華料理なのである。まさに「マカオという都市そのものを食らう」メニューなのだ。
…これは「世界遺産級」の味わいだ!
現代風アフリカンチキンはバリエーション豊か?
とはいえ、アフリカンチキンは「ピリ辛ソースを使ったローストチキン」という定義である以上、最近は進化系アフリカンチキンも各店舗で登場していて、中華風のものもあれば、クスクスと合わせたガチな「アフリカン」を味わえるメニューまで千差万別。まさにマカオという多国籍な都市らしく、「なんでもアリ」なメニューなので、あちこちで食べ歩きも楽しめるという懐深い一品なのである。
世界遺産のついでに世界遺産級のグルメも同時に楽しんでみてはいかが?
※こちらの内容は、あくまでも過去に現地を訪れた際に体験したものであり、最新情報はご自身でご確認ください。