ピラフというと米食の日本人にはおなじみの洋食ではあるのだが、実はこれユーラシア大陸を通って各地で進化していった料理。日本人は世界でも「ピラフ好き」な国民だと思いますが…実は中央アジアのウズベキスタンでは国民食「プロフ」として有名なのだ。そんなプロフとはどんなグルメなのか?
今回は、ウズベキスタンの世界遺産・サマルカンドの帰りに味わったグルメ「サマルカンド式プロフ」を紹介。世界遺産巡りのついでに味わってほしい「世界遺産級の激ウマ・グルメ」を解説していこう。
ウズベキスタンの世界遺産「サマルカンド‐文化交差路」は、文明の栄枯盛衰が見られる場所
「サマルカンド・ブルー」。ゼラフシャン川の渓谷にあるオアシス都市であるサマルカンドは、シルクロードで栄えた、文明の交差地であった場所。この地を征服したティムールが青色を好んだというエピソードがあり、レギスタン広場の建造物などは美しい青いタイルを使用したため、そんなあだ名が付けられたようだ。
街のシンボルとして有名なレギスタン広場は豪華絢爛なのだが、実はここは14世紀から築かれた新市街でもあり、本来のサマルカンドは北側の廃墟となっている「アフラシヤブ」というエリアにあった都市だった。かの有名なアレクサンドロス大王がこの地を征服したのはこの場所で、西遊記のモデルとなった『大唐西域記』で有名な玄奘三蔵もこの街を大いに称えるほどに美しい都市だったとか。
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サマルカンド式のプロフは旅人に向けた「おもてなしの心」が見られる一品!
アフラシヤブの丘は、現在ではもはやその面影はないが…近くにある博物館で残っている当時の遺構などを見ると相当な文明を持つ都市だったということが伺える。そんなサマルカンドだが、かのアレキサンドロス大王がこの街を訪れた際にも食べたと呼ばれる料理がある。それが現在でもウズベキスタンの国民食の「プロフ」だ。
プロフとは…つまり、我々の良く知っている「ピラフ」のことだ。実はピラフのルーツはインドにあるとか、古代ペルシャ(現在のイラン)にあるとか、さまざまな説があるのだが…東ヨーロッパに伝ったのが紀元前4世紀のマケドニアのアレクサンドロスの東方遠征の際だったとされている。とはいえ、これがフランスのピラフとか、スペインのパエリアになるまでは時間がかかるのだが、ある意味、中央アジアというのはピラフという米料理を東西へと伝えていった経路だったことは間違いない!
そんなウズベキスタンのプロフは、実は各地にバリエーションがあって、サマルカンドのものは、割とメジャーなものらしい。ここに来たら「文明の交差路の味」を食べなくてはもったいない!というわけで、サマルカンド式プロフを食べることにした。
もちろん、食堂から高級レストランまで、どこでもプロフは食べることができる一方、中には「おふくろの味が一番じゃい!」という方もいるが、我々旅行者は簡単には味わえない。とりあえず、観光客向けのレストランにいけば、サマルカンド名物として簡単に味わえるだろう。
さて、サマルカンドレストランで注文すると登場するのが、この「サマルカンド式プロフ」。結構シンプルに見えるが、ウズベキスタンではプロフというと、羊肉(もしくは牛肉)とニンジン、ニンニクを合わせて油をたっぷり入れて炊き、思いっきり混ぜ込んで食べるというのが主流。しかし、サマルカンド式は…混ぜ込まないのが正義といわんばかりに美しい盛り付け。
これは昔から多くの人種が訪れる場所であったために、苦手な具材がある人もいるだろうから、あえて事前に混ぜ込まずに「自由に食べてください」というおもてなしの心らしい。なるほど…シルクロードを行き交う旅人にぴったりの食事だ。
ではいただきますか…うむむ、想像よりも油っぽさはあるが、肉のコクが米全体に染みていて、非常に食べやすい。むしろ、米と肉が一体感があって、チャーハンのように具材が馴染んでいるようにも感じる。つまり、世界中の人々が好む味に仕上げていて、食べごたえがあって栄養価も高い…。
…これは「世界遺産級」の味わいだ!
プロフは、お米一粒一粒にシルクロードを旅する旅行者に向けた優しさが溢れている…
プロフ、プロフ…と説明したが、ウズベキ語では本来「パロフ」という発音が近くて、米を意味する「オシュ」でも通じる。ウズベキスタンでは結婚式などでは大釜で大量にプロフを作るのが一般的で「大釜で作ったほうが美味い!」なんて説もあり、みんなでシェアしながら食べるのが、プロフの醍醐味。
つまり、プロフは家族だけじゃなくて、みんなで食べるから美味しいワケであり…そのおもてなしの心が詰まっているのだ。そう思うと、料理としての完成度なんかよりも、「優しさ」が全面に溢れる料理だなぁ…と思ってしまう。まぁ、グルメ記事でこれをいうのは「タブー」だとは思うが、食は文化なのだから、こういう側面もあっていいじゃない!
世界遺産のついでに世界遺産級のグルメも同時に楽しんでみてはいかが?
※こちらの内容は、あくまでも過去に現地を訪れた際に体験したものであり、最新情報はご自身でご確認ください。