焼きサバをバゲットで挟む…という魚喰いの日本人からすると許さざる組み合わせかもしれないが、実は世界三大料理の国・トルコでは、焼きサバのサンドイッチが名物なのだ。いや、明らかに生臭そうな気がするのだが…これがまた不思議とやみつきになる!そんなサバサンドとはどんなグルメなのか?
今回は、トルコの世界遺産・イスタンブール歴史地域の帰りに味わったグルメ「サバサンド」を紹介。世界遺産巡りのついでに味わってほしい「世界遺産級の激ウマ・グルメ」を解説していこう。
トルコの世界遺産「イスタンブール歴史地域」の一つ、スレイマニエ・モスクは旧市街が一望できる場所
イスタンブールの旧市街は湾に囲まれた半島となっている。その北側の丘の上には、世界遺産に登録されているスレイマニエ・モスクがあり、これはトルコでも最高の建築家とされるミマール・スィナンが16世紀に設計した美しい建造物。そして、ここはオスマン帝国の最盛期を築いたスルタン、スレイマン1世の霊廟もあることから、帝国においても重要な場所であった。
イスタンブールというと、アヤ・ソフィアやブルーモスク(スルタンアフメット・モスク)というイメージがあるが、これはスィナンが70歳という晩年の作品であることから、ドームの直径も彼が建てたモスクの中でも最も広く、そのタイルとスタンドグラスが配された広大な空間は…まるで一つの宇宙。彼がたどり着いた最高到達点でもある。
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脂ののったサバとパリッパリッのバゲットの組み合わせは…めっちゃアリ!
スレイマニエ・モスクは丘の上にあるので、あまりイメージはないが、近くにはガラタ橋という旧市街と新市街を結ぶ橋があり、手前にはエミノニュという船付き場があるエリアでもある。モスク周辺は厳かなエリアだが、エミノニュまで来ると市場や魚を出すレストランなど、港町風の街並みへと変化するのだ。
ここでは、観光客に人気の高い「サバサンド船」が見られることで有名で、これは19世紀から既にあったらしく、漁師はサバが大量に余ることが多かったことから労働者用にパンを挟んで売っていたそうな。近年までは割とあったそうだが、サバは近海で徐々に採れなくなっていくと…昔のようにサバサンド船が多く並ぶという風景はエミノニュだけとなり、主に観光客用に残されるようになった。
というわけで、エミノニュにはサバサンド屋台船が並んでいるのだが、大抵は船の前に小さなバスチェアのような椅子と小さな机が置いてあって、船内でジュージューとサバを焼いているという光景がお馴染み。この焼きサバの濃厚な香りがまた食欲を刺激するのだ。
早速トルコの古き良き漁村の味わいを注文してみよう。まぁ、焼きサバ自体は日本人からすると馴染みのある料理だが…普通のグリルタイプもあれば、鉄板を油をかけて焼き上げる「揚げ焼き」スタイルもよく見られ、ちょっとした違いがある。しかし、どちらも食べ方は同じで、玉ねぎとレタスなどを入れて挟んであり、食べる時は卓上にある塩とレモン水をかけるだけ。…いやいや、ふつーに臭そうなんですけど。
と思いきや、レモン水をかけたからか、全然臭くないぞ!そして、モグモグと食べ続けると、シンプルだがサバの旨味としょっぱさがパンと見事にコラボレーションする。つまり、具材として肉とは違う、魚独特の奥深い旨味がまたバゲットと良く合うのだ。ちなみに、トルコのパンは「世界一」というほどにおいしいパンを焼くことにこだわりがあり、そのへんの食堂ですらパンが美味い。そう…このバゲットの旨みと食感がまたサバサンドを美味しくするのだ。
…これは「世界遺産級」の味わいだ!
サバサンドはトルコの名物だが…本物の「トルコのサバサンド」を探すのは至難の業
ガラタ橋では釣りをする人が多く、さぞイスタンブールの近海はサバだらけなんだろう…と思いきや、これにはカラクリがある。実はトルコでは1950年代から開発が進むと、汚染や乱獲、さらには漁師の数が増えて、サバは少しずつ減っていき、全く採れなくなってきたため、値段が高騰してしまった。
それもあり、とてもじゃないが、屋台で売るほどにサバが余らなくなってきたということで、実は現在のサバサンドはほとんどがトルコ産のサバを使っていないという問題がある。今やほとんどがスカンジナビア産のタイセイヨウサバ(ノルウェーサバ)を使っているとか。まぁ、それを言うのなら、現在の江戸前寿司のネタはほとんどが東京で採れないので、そこを突っ込むのは野暮なのである。
世界遺産のついでに世界遺産級のグルメも同時に楽しんでみてはいかが?
※こちらの内容は、あくまでも過去に現地を訪れた際に体験したものであり、最新情報はご自身でご確認ください。