登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (3),(5) |
登録年 | 2023年 |
エチオピア南西部に位置するゲデオは、先史時代から牧畜が行われてきた場所。ここはコーヒーノキなどを含めて作物を育てつつ、畑の中で牧畜も行うという「アグロフォレストリー」が続けられていて、古代遺跡を含めてこの地でずっと人々が農業と牧畜を行い、暮らしてきたという文化的景観が見られる地でもあります。
ここではゲデオの文化的景観が、なぜ世界遺産なのか?世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、ゲデオの文化的景観について詳しくなること間違いなし!
ゲデオの文化的景観とは?
ゲデオ県はエチオピアの南部諸民族州に属していて、現在もゲデオ族が多く暮らす地です。ここは標高1200mのアバヤ湖から3200mに達する高原地帯に位置していて、枯れた土地であるにもかかわらず、150万人の人々が暮らしていて、1平方kmあたりに1300人を超えるという人口密度が高いのが特徴。これは「アグロフォレストリー」の活用によるのもので、コーヒーノキやエンセーテ(バショウ科の植物で茎と根茎は主食として利用されるもの)、根菜などが続く農地にて、家畜も独自に育てるという先住民の時代から続く土地利用が見られます。
特にコーヒーノキとエンセーテは同じ畑で地形に沿って栽培されているのが特徴的。特にこの地方の名産のインガチェフェ・ナチュラルというコーヒー豆は、世界的コーヒーチェーンである「スターバックス」でも取り扱うほどに名産地となっています。
ゲデオ地方には、巨石の遺跡が豊富にあることでも知られ、それらは丘の上に位置しています。ここには石碑や墳墓などが見られ、8〜15世紀にかけて築かれたもの。他にも洞窟には岩絵などが点在し、これらには紀元前3000年〜紀元前2000年期にいたるまでウシ科の動物が描かれ続け、当時から牧畜が行われていたことを示すもの。
農地の中に広がる「聖なる森」も住民たちの神聖な場所として崇められ、ソンゴと呼ばれるゲデオの長老たちによって管理されてきました。ここでは伝統的な儀式が行われていて、薬用とされてきた植物などは固有種や絶滅危惧種のものもあり、結果的にはそれらの種の保護区となっています。
ゲデオの文化的景観はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
ゲデオの文化的景観が評価されたのが、以下の点。
登録基準(iii)
ゲデオ族は彼らの住む土地に合わせて適応した農業を行っていて、特に彼らの主食となるエンセーテとコーヒーの産地となっています。エンセーテはエチオピア南西部だけで主食とされていて、保水性があるために特に乾季に水が必要となるコーヒーノキと相性が良いもの。この地に残る巨石遺跡は700年もの歳月をかけて少なくとも60点は建造されていて、これは長期に渡って人々が暮らしてきたことを示し、今でも伝統的な組織によって農地が維持されているという点。
登録基準(v)
ゲデオ族は先住民の時代からエンセーテとコーヒーの栽培を続けることによって、数百年に渡って暮らしが継続され、固有種が見られる聖なる森を儀式の場も含めて土地が維持されてきました。この地に残る先史時代の岩絵からは先史時代から牧畜が行われてきたということが分かり、アグロフォレストリーだけでなく、60箇所の巨石遺跡が見られ、ここは時間の経過とともに人間社会の定住の発展をしてきたことを示すということ。
世界遺産マニアの結論と感想
ゲデオは非常に人口密度が高いエリアですが、それはコーヒーノキとエンセーテの栽培をメインにしたアグロフォレストリーによるもので、岩絵や古代遺跡からここは優れた土地活用を先住民が行ってきたことによって、土地を放棄することなく、維持されたという土地活用の発展が見られるという点で評価されています。
ちなみに、コーヒーノキは9世紀にカルディという名前の羊飼いが発見して、豆を火に入れると芳香な香りがしたため、水に溶かして世界初のコーヒーを作ったというエピソードがあります。しかし、これは後世の創作であった可能性が高いとされるもの。とはいえ、日本各地にある輸入コーヒー豆を扱う「カルディコーヒーファーム」の「カルディ」はこの伝説から由来しているので、割とコーヒー好きには神話的な扱いを受けています。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。