アフガニスタンの世界遺産「バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産、危機遺産(2003年〜)
登録基準(1), (2), (3), (4), (6)
登録年2003年

アフガニスタン中央部にあるバーミヤン遺跡は、1〜13世紀にかけて仏教文化が花開いた場所。バーミヤンの近郊に作られた石窟仏教寺院には、数多くの仏像や壁画がありました。しかし、2001年3月には2つの大仏がタリバンによって破壊され、危機遺産に登録されたという悲劇の遺産でもあります。

ここでは、バーミヤン遺跡がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、バーミヤン遺跡について詳しくなること間違いなし!

目次

バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群とは?

バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群
画像素材:shutterstock

アフガニスタン中央部のヒンドゥークシュ山脈に囲まれたバーミヤン渓谷。断崖には、2001年にタリバンによって破壊された2つの巨大な仏像や壁画などが洞窟内にありました(現在はほとんど破壊されています)。

バーミヤンはさまざまな文化や宗教が混じり合う「文明の十字路」と呼ぶべき交易都市でした。当時この地を治めていたバクトリアによって1世紀ころから石窟仏教寺院が作られ、ここではインドやギリシャ、ペルシアなどの文化が融合してガンダーラ美術と呼ばれる独自の仏教美術が形成された過程がよく分かります。玄奘三蔵もこの地を訪れて深く感銘したと伝わるほど。

バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群
画像素材:shutterstock

そして、5〜6世紀に建てられたと考えられる2体の大仏は、バーミヤン寺院のシンボル的存在でした。西側の大仏は55mで、東側の大仏は38m。さらに石窟内にはインドやペルシアの影響が見られる壁画も多くありました。しかし、イスラム教徒の支配が始まると仏像は顔が削り取られるなど、徐々に破壊され、2001年にはタリバン政権が、偶像崇拝を禁止するという理由だけで遺跡を爆破。大仏だけでなく、壁画も8割ほど失われたとされます。

危機遺産(危機にさらされている遺産)

アフガニスタン内戦が落ち着くと、日本政府などがユネスコとともに修復を始め、2003年には「危険遺産(危機にさらされている世界遺産として世界遺産)」として登録されました。

バーミヤン遺跡はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群
画像素材:shutterstock

バーミヤン遺跡が評価されたのが、以下の点。

登録基準(ii)
バーミヤンの仏像と壁画は、中央アジアにおけるガンダーラ美術の傑作であるという点。

登録基準(ii)
シルクロードの途中にあったバーミヤン渓谷はギリシャやインド、ペルシャのさまざまな文化の交流地であったこと。

登録基準(iii)
失われた中央アジアの文明を現在に残す証拠であるという点。

登録基準(iv)
仏教史における重要な文化的景観の例であるということ。

登録基準(vi)
バーミヤン渓谷は、何世紀も仏教における重要な地であったこと。そして、2001年の破壊のように政治的理由で危機に陥っていた遺跡であるという点。

世界遺産マニアの結論と感想

バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群
画像素材:shutterstock

かつての文明の交差路であったバーミヤンには、ギリシャ、インド、ペルシャ、中国など、さまざまな文化に影響を受けた美しい建造物が多く点在する渓谷であったことでしょう。それが仏教史における重要な段階であったということも、遺跡の規模や壁画などを見るとよく分かります。

しかし、人類の英知を具現化したような寺院も、また人によって破壊されることになったのです。もちろん、文化財保護という観点においては、許されることではありません。ただ文化財を守るのもまた人なのです。アフガニスタンの内戦で犠牲になったのは文化財だけではなく、現地の人たちも多くいたということも忘れてはいけません。世界遺産というのは、現地に住む人々が価値を感じるようにしなくては意味はないと思われます。

徹底的に破壊されたので修復が難しい遺跡ですが、大仏などの修復は徐々に行われていて、かつての姿をいつか取り戻してくれることを祈るばかりです。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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