登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (3), (4) |
登録年 | 1998年 |
レバノン北部に位置するレバノン山脈(ジェベル・エル・ガール)にある「カディーシャ渓谷」は、起伏が多く、かつては建築素材や船材に使用されたレバノン杉で覆われていた場所。しかし、現在のレバノン杉は国内でも1200本しか残っておらず、「神の杉の森」はそんなレバノン杉の数少ない群生地として貴重です。
ここではカディーシャ渓谷と神の杉の森がなぜ世界遺産なのか、カディーシャ渓谷と神の杉の森世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、カディーシャ渓谷と神の杉の森について詳しくなること間違いなし!
カディーシャ渓谷と神の杉の森とは?レバノン杉のこと?
レバノンを南北に貫くレバノン山脈。最高峰のコルネ・エル・サウダ山(標高3088m)の西側に広がるのが「カディーシャ渓谷」。ここは「聖なる谷」と呼ばれ、世界でも最初期のキリスト教の修道院共同体の一つで、現在はカディーシャの聖アントニー修道院、ハウッカの聖母修道院、カンヌビン修道院、聖エリシャ修道院などが並んでいます。ここはマロン派(マロン典礼カトリック教会、レバノンを中心に活動する東方典礼カトリック教会の一派)に属し、周囲は神父や農民たちが暮らすために段々畑が続いています。
この渓谷の中でもブシャーレ村の東に位置し、標高1900〜2050mにに広がるのが「神の杉の森」です。ここは国内でも1200本しか残っていないレバノン杉の群生地。古代にこの地域で活動したフェニキア人は、レバノン杉でガレー船を築き、建築素材としてレバノン杉を中東各地に輸出してました。長く続いた伐採のため、現在のレバノン杉はこの地で残る程度ではありますが、今でもレバノンの国旗にはレバノン杉が描かれているほどにシンボル的な存在でもあります。
カディーシャ渓谷と神の杉の森はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
カディーシャ渓谷と神の杉の森が評価されたのが、以下の点。
登録基準(iii)
カディーシャ渓谷は、キリスト教でも最初期の修道院が見られ、神の杉の森は古代において貴重な建築素材であるレバノン杉が見られるという点。
登録基準(iv)
カディーシャ渓谷は、長い間、瞑想を求める信者や迫害を逃れてきた信者などが集まる地であり、ここはキリスト教の歴史において初期に拡大した時期に修道院などが築かれた場所で、これらはキリスト教の信仰の強さを示すものであるということ。
世界遺産マニアの結論と感想
カディーシャ渓谷は、険しい地形であったことから、隠者や迫害を逃れてこの地を訪れることが多く、初期の修道院共同体が存在し、段々畑などが並ぶという文化的景観が見られるという点で評価されています。そして、ここには古代において貴重な建築素材であったレバノン杉が残る地であるというのもポイント。
ちなみに、マロン派はレバノンの人口の3割を占めるほどではありますが、日本では馴染みの薄い宗派。しかし、日産自動車のCEOだったカルロス・ゴーン氏はレバノン系ブラジル人で、彼もマロン派の信徒です。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。