登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (1), (2), (3) |
登録年 | 1986年 |
ブリテン島の南西部にあるストーンヘンジとエーヴベリーは、先史時代の巨石建造物群の中でも有名です。2つともストーンサークル(環状列石)となっていて、まだまだ不明な点も多いというのが現状。この2つのストーンサークルの周囲に残る遺跡も登録されています。
ここでは、ストーンヘンジ、エーヴベリーと関連する遺跡群がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、ストーンヘンジとエーヴベリーについて詳しくなること間違いなし!
ストーンヘンジ、エーヴベリーと関連する遺跡群とは?
これらはブリテン島の南西部にあるウィルトシャーにある、2つのストーンサークル(環状列石)と、その周辺の遺跡で構成されています。ストーンヘンジはストーンサークルを代表するもので、エーヴベリーは世界最大のストーンサークル。これらは紀元前30世紀〜紀元前10世紀の約2000年の間に建造されたものではありますが、建造時期も諸説あります。新石器時代から青銅器時代にかけて儀式が行われた場所とされ、当時の生活習慣などが分かるものとして評価。
ストーンヘンジ周辺はダーリントン・ウォールズ、ウッドヘンジなど、新石器時代から青銅器時代にかけて建造された埋葬祭祀遺跡が残ります。エーヴベリーの周辺には、シルベリー・ヒルやザ・サンクチュアリなどの遺跡が点在。
登録されている主な構成資産
ストーンヘンジ
基点となる街・ソールズベリーから北西に13kmほどの距離にあるストーンサークル。単純に「ストーンサークル」というと、まずストーンヘンジがイメージされるほどに有名な遺跡。ヘンジとは、メンヒル(巨石記念物)に楣(まぐさ)石を連結させたものを指します。これらがいつ建設されたのかは諸説ありますが、建設時期は3段階に分かれていたと考えられているのが一般的。
まず、最も外側にある土塁と堀は、紀元前3100〜2200年頃に造られたとされるもの。内側にあるブルー・ストーンと呼ばれる、青みがかったメンヒルが30個ほどが円状に並んでいますが、これは紀元前2100〜2000年に築かれたものと考えられています。サークル部分から外れた位置にある「ヒールストーン」もこの頃に造られたとされています。最も新しい部分が中央部にある直径30mのストーンサークルの部分。これらは紀元前2000〜1100年頃に建造されたと考えられているもの。列席の内側にある5組のトリリトン(三石塔)は、3つの石を組み合わせて門のようにしています。
この遺跡がどのような目的で造られたかというと、なんらかの「儀式の場」ではあったとは専門家たちは考えています。どのように利用していたかは諸説あり、よくわかっていません。ただ夏至の朝にはストーンサークルの北東にあるヒールストーン付近から太陽が上り、中央部にあるトリリトンを照らすにようになっているため、天文学を意図したとも考えられています。
そして、不思議なことに素材として使用されているサルセン石(砂岩)は近隣で採石できるものなのですが、ブルーストーンは200km離れたウェールズのペンブロークシャーでないと採石できないということから、これを建造した人々はわざわざ運んできた…ということになります。謎は深まるばかり。
ウッドヘンジ
ストーンヘンジから北東へ約3.2km。紀元前25〜21世紀ころに建造された木柱サークル。168の柱穴があったとされ、輪の中央には子供の遺体が埋葬されていました。
ダーリントン・ウォールズ
ウッドヘンジからすぐ北へ70mの位置するストーンサークル。これも木柱サークルで、これらの上には屋根が置かれており、大きな建造物だったのではないかと考えられています。
エーヴベリー
ストーンヘンジより北へ約30kmにあるエーヴベリーは、先史時代のストーンサークルとしては世界最大。約3000年前に建造され、外周は約1.3km。サルセン石で築かれたメンヒルは合計で約100個も建てられていました。中央部のメンヒルは一部倒されていますが、ここも円状に築かれたストーンサークルでもあります。このようなストーンサークルの建造は、当時一帯が農業経済で安定していたということを示すもの。
シルベリー・ヒル
エーヴベリーの南に位置する先史時代の石灰岩で築かれた塚。高さは39.3mで、かつては墳丘であったと考えられていましたが、特にそれらしきものは発見されていません。何らかの儀式で使用されたという説もありますが、目的は今のところハッキリしていないのが現状。
ザ・サンクチュアリ
エーヴベリーの南西2.4kmに位置する、石と木柱を使用したサークルのこと。紀元前3000〜900年にかけて建造されていたもので、162本の柱穴が発掘されています。女性の遺体がサークル内で発見されているものの、詳しい目的は今でもハッキリとしていません。
ストーンヘンジ、エーヴベリーと関連する遺跡群はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
ストーンヘンジとエーヴベリーが評価されたのが、以下の点。
登録基準(i)
これらの建造物は、先史時代の人々の創造性や技術力を示しているということ。
登録基準(ii)
新石器時代初期から青銅器時代まで、2000年以上にわたって建築物の発展がみられ、ストーンヘンジとエーヴベリーの遺跡群は、後世の建築や芸術作品などに多大なる影響を与えているということ。
登録基準(iii)
ストーンヘンジとエーヴベリーの遺跡群は、新石器時代初期から青銅器時代まで、2000年以上にわたって行われていた儀式や埋葬祭祀の足跡が残されているということ。
世界遺産マニアの結論と感想
イギリスの南東部にこれだけの巨石建造物が築かれていたということは、この地域は経済的に安定した基盤があり、ここで発展したストーンサークル作りは、後世の建築や芸術などに影響を与えているということが評価に繋がっています。
ちなみに、アーサー王伝説では、魔術師マーリンが巨人が建造した石をアイルランドから魔法で持ってきて並べたのがストーンヘンジである…となっています。しかし、アイルランドではないにしろ、ブルーストーンは何百kmも離れたウェールズから運ばれてきた可能性もあるので、魔法でも使わないと運べない気もしますね…。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。