登録区分 | 自然遺産 |
登録基準 | (7),(8),(9),(10) |
登録年 | 1988年 |
オーストラリア北東部の海岸沿いには450kmにも渡るエリアが世界遺産として登録されていて、ここには熱帯雨林が広がり、800種以上の樹木が存在。熱帯雨林は鳥類や有袋類などが多く暮らしていて、ニオイネズミカンガルーといった原始的な有袋類も生息し、絶滅危惧種の動物や植物も見られるのが特徴です。
ここではクイーンズランドの湿潤熱帯地域がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、クイーンズランドの湿潤熱帯地域について詳しくなること間違いなし!
クイーンズランドの湿潤熱帯地域とは?
オーストラリア北部のクイーンズランド州には、世界遺産のグレートバリアリーフに沿うように約450kmにも渡って熱帯雨林が広がっています。ここは1億年前から5000万年前まで現在のオーストラリアと南極大陸がつながっていた超大陸・ゴンドワナ大陸時代の森林を含んでいて、動植物の進化の過程が見られるが特徴。熱帯雨林にはオーストラリアの固有種である有袋類や貴重な動物が暮らし、特に硬葉樹林(常緑広葉樹林の一種)と有袋類はゴンドワナ時代からの進化を示すもの。
ここは貿易風の影響で雨季は非常に雨が多く、年間雨量が1200〜9000mmを超えるほどで、熱帯雨林はその影響を多く受けています。特に「ニオイネズミカンガルー」はこの地に生息する固有種。見た目はネズミのように小型でありますが、実はカンガルーのようにお腹に袋があり、原始的な有袋類でもあります。
クイーンズランドの湿潤熱帯地域はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
クイーンズランドの湿潤熱帯地域が評価されたのが、以下の点。
登録基準(vii)
敷地内にあるデインツリー川とシダー湾などは風光明媚な場所で、熱帯雨林と白い砂浜、周辺のサンゴ礁などが並ぶ景観が見られ、ヒンチンブルック海峡にはマングローブの森があり、曲がりくねった水路が続いているという点。
登録基準(viii)
湿潤熱帯地域は、2億年以上前のシダ植物から円錐形のソテツ類と針葉樹といった裸子植物や被子植物へ進化したという過程が見られ、ゴンドワナ大陸時代から継続して存在する熱帯雨林があるため、先史時代から現在までオーストラリア固有の有袋類や動物のほとんどが今でも暮らしています。これは有袋類と鳴鳥(めいちょう)の進化を示すものであるということ。
登録基準(ix)
湿潤熱帯地域は、現在でも進行している生物学的進化の優れた例が見られ、この地域の固有性がかなり高く、熱帯雨林と硬葉樹林が連続することによって、ユーカリのように独立して進化し、それらは乾燥した環境に拡大していったと考えられています。この地域では224科3000種を超える維管束植物が見られ、動植物の多様性が高く、44属576種もの固有種が存在。107種の哺乳類は11種の固有種、368種の鳥類は11種が固有種、113種の爬虫類は24種が固有種、51種の両生類は22種が固有種と、固有性が非常に高いという点。
登録基準(x)
この地は熱帯雨林、硬葉樹林、森林、沼地、マングローブ林があり、何百もの固有種が存在するという多様性が見られ、世界においても非常に珍しいもので、貴重なヒクイドリなどがシンボル的存在。ここはオーストラリアで見られる有袋類の30%、コウモリの60%、鳥類の40%、カエルの30%、爬虫類の60%、シダの65%、ソテツ科の21%、針葉樹の37%、ラン科の30%、維管束植物の18%が存在するというほどに多様な生態系が維持されているということ。
世界遺産マニアの結論と感想
クイーンズランドの湿潤熱帯地域は、かつての超大陸・ゴンドワナ大陸時代から残る古い森であり、植物はシダ植物から被子植物と裸子植物への進化が見られます。そして、熱帯雨林と硬葉樹林が続くことで、ユーカリなどの独自の進化し、さらには世界で稀に見る固有種が多く存在する森であるという点で評価。動植物ともオーストラリアに生息する種がここに集中しているというのもポイント。
ちなみに、「クイーンズランド」のクイーンは1859年の発足当時に、たまたま大英帝国のビクトリア女王が君主だったということで名付けられたというだけで、女王とは全く関係ありません。そもそも流刑地が起源ですしね…。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。