登録区分 | 自然遺産 |
登録基準 | (8) |
登録年 | 2005年 |
ワディ・アル・ヒタンというのは、アラビア語で「クジラの谷」という意味。エジプトの西方砂漠には、かつては浅い海が広がっているエリアがあり、ここは現生のクジラの祖先であるバシロサウルスと呼ばれる後ろ足のあるクジラ類がかつて生息していました。ここで発見された化石は、陸の哺乳類が海洋哺乳類へと進化する過程が分かるという点で非常に貴重なもの。
ここではワディ・アル・ヒタン(クジラの谷)がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、ワディ・アル・ヒタンについて詳しくなること間違いなし!
ワディ・アル・ヒタン(クジラの谷)とは?
ワディ・アル・ヒタンは、首都カイロから南西約150kmの地点にある、ファイユーム県に属する砂漠地帯。ここは4000万年前はテチス海と呼ばれる、浅い海が広がっていたことから、バシロサウルスというクジラの祖先にあたる大型哺乳類が生息していました。このバシロサウルスは、現在のクジラとは違って、浅海だけに生息していたと考えられます。バシロサウルスは60cmほどの小さな後肢があり、蛇やウナギのように細長く、くねらせて動いていたというのが特徴。
ここでは、3種類のバシロサウルスの化石が多く発見され、クジラの進化が分かり、陸生哺乳類が海棲哺乳類へと進化していてく過程が分かるという点で貴重なもの。他にも約3700万年前にはマングローブの森が広がっていたとされ、マングローブの根の化石も発見され、サメやカメの化石なども見つかっています。
ワディ・アル・ヒタン(クジラの谷)はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
ワディ・アル・ヒタンが評価されたのが、以下の点。
登録基準(viii)
ワディ・アル・ヒタンは、陸から海へと生活環境を進化させたクジラの進化を示す場所であり、その化石の数は世界でも類を見ないという点。
世界遺産マニアの結論と感想
現在は砂漠にあるので信じられないかもしれませんが、ここはかつて浅い海であり、この海の捕食者であったバシロサウルスは、クジラの祖先であるものの、現在のように世界中を泳ぐことはなく、この付近で生活していたと考えられています。つまり、かつての陸上の哺乳類から海棲哺乳類への進化の過程を繋ぐ存在であり、世界でもこのような化石が多数発見されているという点で評価されているもの。
ちなみに、「バシロサウルス」ということで、恐竜のような爬虫類の仲間のような名前ではありますが、あくまでもこれは哺乳類。実はアメリカで19世紀前半に発掘される際に、爬虫類と勘違いして「サウルス」と名付けられてしまいました。すぐに他の学者によって訂正したのですが、先取権などの問題もあり、今でもこの名が引き続き使われているのです。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。