オクタヴィアヌス(紀元前63年〜紀元14年)は、後にアウグストゥスと名乗ってローマ帝国初代皇帝となり、高名な政治家カエサルの養子として、共和制ローマを終了させ、帝政ローマの基盤を築いた人物。そんなオクタヴィアヌスとはどういった人物だったのでしょうか?
今回はオクタヴィアヌスがどんな人物だったかを世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、オクタヴィアヌスについて具体的に理解できること間違いなし!
オクタヴィアヌス(アウグストゥス)とはどんな人物?

本名はガイウス・オクタヴィウスといい、名前を何度か変えたため、日本でもよく使用される「オクタヴィアヌス」は歴史家から「オクタヴィアヌス(オクタヴィアヌスだったもの)」という便宜的な名前で使用されているだけで、彼自身は当時はこのように呼ばれていません。
ガイウス・ユリウス・カエサルの姪の息子であることから、紀元前44年にカエサルが暗殺される前に養子に指名され、自身の名と財産の相続人としていたことを後に知らされます。それもあり、相続人として若いうちに政界に進出し、カエサルの部下あったマルクス・アントニウスとマルクス・アエミリウス・レピドゥスと共に「第二回三頭政治」を結成し、共和制ローマの権力を分け合いました。
しかし、レピドゥスの失脚とともに、やがて三頭政治は崩壊し、オクタヴィアヌスとアントニウスの対立が激化します。アントニウスはエジプトで勢力を伸ばし、妻であったオクタヴィアヌスの姉と離婚し、女王クレオパトラと結婚すると、紀元前31年のアクティウムの海戦に勝利しました。これにより、アントニウスとクレオパトラは自殺し、オクタヴィアヌスは共和制ローマの唯一の支配者となりました。
アウグストゥス(尊厳ある者)となり、初代ローマ皇帝に



紀元前27年、オクタヴィアヌスは元老院から「アウグストゥス(尊厳者)」の称号を与えられました。これをもって事実上、共和政ローマは終焉を迎え、帝政ローマが始まりました。彼は公式には「皇帝」、「第一市民(プリンケプス)」と名乗り、あくまでも共和制の形を尊重したものの、実際には全権を掌握しています。
アウグストゥスの治世(紀元前27年~紀元14年)は「パクス・ロマーナ(ローマの平和)」と呼ばれる安定した時代の始まりでした。彼は若い時は狡猾的で残酷な政治家ではありましたが、紀元2年には「国家の父」という称号を与えられ、多くの行政改革を行い、帝国の基盤を整えたのです。
オクタヴィアヌス(アウグストゥス)にまつわる世界遺産はこちら!
メリダの考古遺産群/スペイン



スペインの西部に位置するエストレマドゥーラ州の州都であるメリダ。ここはかつて「アウグスタ・エメリタ」と呼ばれ、紀元前25年にアウグスティヌスが当時のイベリア半島を征服し、メリダをローマ帝国の最西端の属州ルシタニア(現在のポルトガルとスペイン西部)の州都として設立しました。
今でもローマ橋や円形劇場、神殿、水道橋などが残り、帝政ローマの州都のかつて姿を現在に残しています。
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オランジュのローマ劇場とその周辺及び「凱旋門」/フランス



フランス南東部プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏にあるオランジュは人口3万人の小さな町。ここはケルト人の中でもガリア(現在のフランス、ベルギー、オランダ、スイス、ドイツの一部)に住んでいたガリア人が暮らす地でしたが、紀元前1世紀にローマの軍人カエサルによって征服。
町には1世紀にアウグストゥスが建造したローマ劇場が今でも現存。さらに町の北部に残る凱旋門のレリーフには当時この地に暮らしていたガリア人が鎖で繋がられたデザインであり、これもアウグストゥスによるもの。
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ニームのメゾン・カレ/フランス



ニームはフランス南部のガール県の県庁所在地であり、古代ローマ時代からの歴史を誇る都市。もともとはローマ人の村にあった泉「ネマウスス」という名前が起源とされ、紀元前1世紀には既にローマ帝国の植民都市でありました。アウグストゥスは城壁を築き、往時は6万人もの人口を誇る都市であったとされます。
メゾン・カレは紀元前1世紀建造の神殿であり、教会や会議場などに転用されつつも、現代まで改修されながら保存されている貴重な建造物でもあります。
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世界遺産マニアの結論と感想
カエサルとは異なり、オクタヴィアヌスは戦争ではそれほど活躍しておらず、冷徹で残酷な人物というイメージがありますが、結果的には彼がカエサル暗殺後のローマを統一し、帝政ローマの安定と繁栄の基礎を築きました。
そして、後に「初代ローマ皇帝」とされ、その名前が語り継がれていったということを考えると、彼はカエサルに並ぶ、ローマでもトップを競うほどに優れた政治家だったとも言えるでしょう。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。