世界遺産はジャンル分けすると、文化遺産と自然遺産、そして、2つの要素を持った複合遺産が登録されているのですが、実は日本にはまだ複合遺産がありません。これはなぜでしょうか?
今回はなぜ複合遺産が日本にないのか、そして、今後はその展望があるのか?世界遺産マニアが真剣に考えてみました。
複合遺産とは?
世界遺産は、主に文化遺産と自然遺産、複合遺産の3つに分類されています。文化遺産と自然遺産、両方の価値を兼ね備えていて、具体的にいうと、文化遺産の持つ登録基準(i)〜(vi)のいずれか1つ以上、そして、自然遺産の持つ登録基準(vi)〜(x)のいずれか1つ以上を認めらると、複合遺産として登録可能。
しかし、数多くある世界遺産の中でも、なかなか当てはまることがなく、複合遺産は40件程度しか登録されていないレアな遺産でもあります。有名なものでいうと、マチュピチュは敷地内に絶滅危惧種も暮らしているため、複合遺産として登録。
日本には複合遺産はなぜないのか?
日本には数多くの世界遺産があるものの、複合遺産は登録されていません。というのも、日光東照宮や白川郷など、周囲は自然に囲まれていて、自然遺産としての価値もありそうなイメージがありますが、あくまでも豊かな自然の中にある「文化遺産」なだけであって、自然遺産級のものが含まれないと難しいのです。
そして、世界遺産候補である、日本政府の暫定リストに登録されている佐渡の金山や鎌倉、彦根城、飛鳥などは、複合遺産と推薦されているわけではないので、ここしばらくは複合遺産は生まれないでしょう。
とはいえ日本には「文化的景観」として認められた遺産はいくつかある
実際に文化遺産ではないのですが、似たようなカテゴリーの「文化的景観」に登録されている遺産は2つあります。
文化的景観とは、文化遺産には分類されるのですが、「文化遺産と自然遺産の境界に位置する遺産」といえるでしょう。人間が自然環境の中で、文化活動や経済活動など、さまざまな影響を受けながら進化してきたことを示したものを指していて、日本だと「紀伊山地の霊場と参詣道」と「石見銀山遺跡とその文化的景観」がこれに含まれています。
日本の文化的景観の一覧
紀伊山地の霊場と参詣道
太平洋に面した紀伊半島。ここは標高1000〜1500mもの山々が連なる紀伊山地が多くを占めています。紀伊山地は、多雨林地帯であるために緑深い森が広がり、1200年に渡って起源も伝統が異なる3つの霊場を含めて「修験道」など日本独自の信仰が育まれていきました。
世界遺産としては、「吉野・大峰」、「熊野三山」、「高野山」の3つの霊場と、これらを奈良や京都から結ぶ参詣道も合わせて登録。ここは大陸から伝わった仏教や道教に、日本古来の自然崇拝が由来の神道と組み合わさった「神仏習合」が見られるのが特徴です。
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石見銀山遺跡とその文化的景観
島根県大田市にある石見銀山は、戦国時代後期から江戸時代前期まで繁栄した日本最大の銀山の跡地。ここは1526年に銀脈が発見されると、博多の豪商・神屋寿禎(じゅてい)によって開発が進められ、1620〜1640年には年間で約40tもの銀が生産されました。これは世界で産出する銀の3分の1というほどの量。
現在の石見銀山は、標高600mもの山々の間の渓谷沿いに遺跡が残っていいます。ここは銀鉱山跡と鉱山町、街道(石見銀山街道)、港と港町の3つのカテゴリーに分けれていて、14もの構成資産が点在。
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世界遺産マニアの結論と感想
残念ながら日本には複合遺産はなく、それに当てはまるであろう遺産候補も現状はないという悲しい状況。しかし、そもそも世界遺産というのは、基本的に文化と自然というジャンルを含むという壮大な取り組みであって、その両方の価値を持つもの複合遺産は、世界的に見てもかなり珍しいのです。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。