シリアは中東に位置していて、トルコとイラク、ヨルダン、イスラエル、レバノンと各国との国境を面してます。ニュースでは内戦や経済制裁などが伝えられる通り、現在は非常に不安定なイメージがあるでしょう。しかし、この地は文明の交差路として、貴重な遺跡が多くあるのです。シリアの世界遺産はいくつあるでしょうか?
ここでは、シリアの世界遺産を世界遺産マニアが一覧にして分かりやすく解説。それぞれの遺産を簡潔に解説していきましょう。
古代都市ダマスカス
シリアの首都ダマスカスは古くからエジプトとメソポタミア、地中海世界を結ぶ都市で、紀元前1万年〜紀元前8000年には既に集落があったとされています。現在のダマスカスは紀元前3000年頃に形成されたとされ、世界でも最も古い継続的に人が住み続ける都市の一つでもあります。
ここはイスラム世界初の王朝であるウマイヤ朝(661〜750年)の首都として繁栄した商業都市で、世界最古のモスクであるウマイヤ・モスクなど、約125もの歴史的な建造物が残っています。
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古代都市ボスラ
ボスラは首都ダマスカスから南へ約150kmの位置にあり、ヨルダンの国境沿いのダルアー県にあります。「ボスラ」という名は、紀元前14世紀の古代エジプトのテル・エル・アマルナ遺跡の石版にも記載されるほど古いもの。通商で栄えたナバテア王国の北の首都になった後は、1世紀にローマ帝国に編入し、アラビア属州の州都になりました。
現在でもローマ劇場や初期のキリスト教の遺跡などが残っていて、これらは黒い玄武石で作られているため、遺跡全体が黒く見えるのが特徴。
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古代都市アレッポ
トルコの国境近く、シリア第2の都市として現在も多くの人々が住むアレッポ。もともとこの地で交易が始まったのは、紀元前2000年前と考えられています。古くから文明の交差点であったアレッポは、さまざまな国によって支配されてきました。
旧市街には今でも、世界最古のモスクとスーク、城、神学校、宮殿、キャラバンサライ、ハマムなど、各時代の特徴が残る独特の町並みが残っていますが、内戦により多くの建物が破壊され、現在は危機遺産にも登録されています。
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パルミラ遺跡
パルミラは、シリア中央部にあるホムス県タドモルに位置する遺跡。ここは1〜2世紀にシルクロードの交易の拠点として繁栄し、この地で生まれた壮麗な建築様式や美しい芸術作品は、古代オリエントとギリシャ・ローマの文化の融合を示すもの。
2013年にイスラム過激派組織ISIL (ISIS) がこの地でシリア軍と戦闘となったために、危機遺産に登録されています。2017年にシリア軍がタドモルを奪還するも、ほぼ廃墟となってしまったため、現在は修復を待っているという状況。
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クラック・デ・シュヴァリエとカルアト・サラーフ・アッディーン
「クラック・デ・シュヴァリエ」は、シリア西部にある都市ホムスから西へ約40kmの位置にある城で、1144〜1271年にかけて、騎士修道会の一つ、聖ヨハネ騎士団の本拠地となった場所。
その北方にある「カルアト・サラーフ・アッディーン」は「サラディンの要塞」という意味で、ビザンツ、ヨーロッパ、アラブなど、さまざまな建築様式が見られる城です。
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シリア北部の古代村落群
シリア北部のアレッポ県からイドリブ県まで、石灰岩の山岳地帯に40もの集落遺跡があり、8つの公園としてグループ化されて登録されています。この地は1〜7世紀にかけて農業が行われていて、住居や異教徒の聖域、キリスト教会、貯水池、浴場など、保存状態の良い集落遺跡が点在。
ここは土着の多神教が崇拝された時代からビザンツ帝国によってキリスト教世界へ変化していったという文化的景観が見られるもの。
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世界遺産マニアの結論と感想
シリアは東西を結ぶ交易の地であったことから、古代から文明が栄えた国でもあり、文化遺産だけでも6つ登録されています。しかし、現在も内戦が続き、それぞれの保存状態が危惧されることから、6つすべて危機遺産(危機にさらされている遺産)に登録。一日でも早く危機遺産から外される日を祈るばかりですね。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。