セルビアの世界遺産候補「バチュの文化的景観」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分(暫定リストに記載)文化遺産
登録基準(暫定リストに記載)(2), (3), (5)
申請年(暫定リストに記載)2019年

セルビア北西部のバチュはドナウ川流域にあり、要塞の遺構や修道院などが残る街。ここは肥沃な土地であったことから当時から集落が築かれ、各国との国境地帯にあったことから、8つの塔を持つ要塞が築かれ、壮大な構造が現在も残っています。

ここではバチュの文化的景観がなぜ世界遺産候補なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、バチュについて詳しくなること間違いなし!

目次

バチュの文化的景観とは?

バチュの文化的景観
画像素材:shutterstock

セルビア北部にあるヴォイヴォディナ自治州は、西はクロアチア、北はハンガリー、東はルーマニアに囲まれた地。ここは国際河川のドナウ川とティサ川の間に位置する街で、氾濫原であるために農業に適していたことから、先史時代から人々が暮らしていました。最古の記録として残っているのは6世紀ではあるものの、中世のほとんどの期間はハンガリー王国(1000〜1918年)の支配下にあり、ここは国境地帯であったために、14世紀に要塞を建設。バチュはヨーロッパ進出を目指していたオスマン帝国の最前線の基地でもありました。

しかし、16世紀にはオスマン帝国によって支配を受けると、17世紀にはオーストリアの領土へ。その後、ユーゴスラビア連邦となり、現在はセルビア領となっています。

フランシスコ会修道院/バチュの文化的景観
画像素材:shutterstock

この街の建築遺産は、12〜19世紀にかけて、多くの大国に影響を受けたことから、ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロック、ビザンツ、イスラムなど、多くの文化や建築様式を受け入れた文化的景観が広がっているのが特徴。

バチュの中心部に残る「フランシスコ会修道院」は、12世紀後半から建造が始まり、一時はモスクとして利用されたものの、さまざまな建築様式が合わさった傑作。バチュ南部にある「ボジャニ正教会修道院」は、15世紀に建造された修道院で、バロック様式のフレスコ画美しいもの。

バチュ要塞

バチュ要塞/バチュの文化的景観
画像素材:shutterstock

ドナウ川に築かれた要塞の中でも広大なもので、街のシンボル的な存在。ここは14〜16世紀に築かれたもので、厚さ2.5mのレンがの城塞が五角形に配置されたもの。かつては8つの塔があったとされていますが、現在は5つだけ保存されています。最も高い塔は天守の役割があり、高さは20m。要塞の周辺には36の家々が18世紀に建造され、要塞とともに文化的景観を形成しています。

しかし、18世紀以降は風雨でさらされていて、現在の要塞は21世紀になって修復されたもの。

バチュの文化的景観はどんな理由で世界遺産に登録される予定なの?

バチュ要塞/バチュの文化的景観
画像素材:shutterstock

バチュが評価されたのが、以下の点。

登録基準(ii)
バチュの文化的景観は、ドナウ川沿いの国境地帯であることから、多くの文明と人々が往来し、長期間に渡って文化の交流が見られます。ここは要塞を含めた都市計画であり、外部から取り入れられた社会、文化、宗教の影響が見られるという点。

登録基準(iii)
バチュとその周辺は、多民族との交流、そして文化の融合が見られ、長年に渡って発展し続け、この街の伝統となっています。一方、それはバルカン半島の東西の衝突によって形成された文化であり、すべてが融合することでこの地域の特徴となったということ。

登録基準(v)
バチュとその周辺は国境地帯であることから、何世紀にも渡ってアジアから中央ヨーロッパに向けて人々が移動したことを示す史跡です。ここは先史時代から農業活動が行われ、行政や軍事、商業、宗教の中心地であり、調査によって文化的多様性と東西の民族同士の共存が見られるという点。

世界遺産マニアの結論と感想

バチュは、ドナウ川沿いの国境地帯にあり、古くから農業が行われ、多くの大国同士が争って、支配者も変わったことから、バルカン半島だけでなく、アジアも含めた多文化が融合した建築物が並ぶ文化的景観が続くという点で評価されています。

ちなみに「バチュ」という名前の由来は不明であるものの、古バルカン語、スラブ語、ルーマニア語、古テュルク語など、ルーツとなる説はさまざま。しかし、バルカン半島の各国では、同じ名前の地名が多いことから、何かしら縁起の良かった名前だったのかもしれませんね。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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