ユスティニアヌス1世(482年もしくは483年〜565年)は、東ローマ帝国でもよく知られている皇帝の一人であり、彼の治世は「帝国の再建」を目指し、広大な領土を得ることができました。そんなユスティニアヌス大帝とはどういった人物だったのでしょうか?
今回はユスティニアヌス大帝(1世)がどんな人物だったかを世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、ユスティニアヌス大帝について具体的に理解できること間違いなし!
ユスティニアヌス大帝(1世)とはどんな人物?

東ローマ帝国(395年〜1453年)は、広大なローマ帝国が東西分裂した後の国家で、当時は北方からゲルマン人が進出し、帝国が解体されつつありましたが、東側はその影響を受けず、エジプトやシリア、アナトリア半島など、穀倉地帯を保持できたために国力は衰えず、権威を維持することができました。
ユスティニアヌス大帝(1世)となるペトルス・サッバティウは、482〜483年頃、バルカン半島のダルダニア(現在の北マケドニア)に生まれました。彼の家は農家であったものの、叔父のユスティヌス1世は後に東ローマ帝国の皇帝となり、ユスティニアヌスを養子として育てました。527年にユスティヌス1世が亡くなると、ユスティニアヌスが正式に皇帝に即位。



彼の治世として、有名なのは「ローマ法大全(コルプス・ユリス・ウィリス)」の編纂です。帝国内に乱立していたローマの法律を整理し、統一。これは後のヨーロッパの法律の基盤となり、中世だけでなく、近代の法典(ナポレオン法典など)にも影響を与えたもの。
そして、ユスティニアヌスは「ローマ帝国の再建」を目指し、ゲルマン人にによって奪われつつあった、西ローマ帝国の旧領を奪還するための軍事遠征を多く行いました。結果として、将軍ベルサリウスの活躍もあり、北アフリカのヴァンダル王国、イタリアの東ゴート王国を征服し、イベリア半島の西ゴート王国領の一部を獲得。しかし、莫大な費用によって経済が疲弊した上に、541年にペスト(ユスティニアヌスのペスト)が大流行し、帝国の人口が激減しました。彼は565年に死去しますが、それ以降は帝国は衰退し、彼が獲得した領土は縮小していきました。
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アヤ・ソフィア/トルコ



アヤ・ソフィアはイスタンブール旧市街のスルタンアフメット広場に面した建造物で、聖堂は高さ31mの巨大なドームを持つバシリカ式聖堂。もともとこの地には4世紀にコンスタンティヌス2世によって聖堂が築かれましたが、その後、2回も焼失したため、現在の大聖堂は537年にユスティアヌスによって建造されたもの。
当時の皇帝のユスティニアヌス帝は献堂式に登場し、「ソロモンよ、余は汝に勝てり!」と叫んだそう。
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イスタンブールの地下宮殿/トルコ



イスタンブールの旧市街の中心であるスルタンアフメト広場の北部に位置する東ローマ帝国時代の貯水槽。トルコ語で、地下宮殿(Yerebatan Sarayı)を意味するために宮殿が地下にあったと思われますが、6世紀ころにユスティニアヌスによって建設されたもので、ここは当初から貯水池として使用されていました。
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サン・ヴィターレ聖堂/イタリア



イタリア北東部エミリア=ロマーニャ州にあるラヴェンナは、540年に東ローマ帝国(ビザンツ帝国)によって征服。6〜8世紀にはビザンツ帝国の総督府が置かれ、帝国西側の首都的存在でした。
ラヴェンナ中心部にあるサン・ヴィターレ聖堂は、街を代表する初期キリスト教の聖堂。至聖所には、東ローマ帝国の皇帝ユスティニアヌス1世(482年もしくは483年〜565年)と后妃テオドラのモザイクなどが描かれていて、これらはサン・ヴィターレ聖堂を代表する作品。
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ベツレヘムの聖誕教会(降誕教会)/パレスチナ



ベツレヘムはエルサレムから南に10kmほどの距離にある、丘陵地帯に位置します。2世紀以降、この地にある洞窟はイエス・キリストが生誕した場所として信仰を集めるようになり、4世紀には洞窟を囲むように教会が建てられました。しかし、6世紀には火災に遭い、ユスティニアヌス1世によって現在の教会の姿になりました。オリジナルの教会は床のモザイクのみ現存しています。
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世界遺産マニアの結論と感想
ユスティニアヌスは、東ローマ帝国を最盛期へと導いた偉大な皇帝でした。彼の法制度の整備は後世に大きな影響を与えましたが、遠征によって帝国の経済に重い負担をかけ、最終的には衰退の要因にもなりました。しかし、その建築事業は現在でも多く残り、結果的には彼の業績は東ローマ帝国の中で最も輝かしい時代には見えますね。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。