世の中には「混ぜて美味しくなるもの」というのは多々存在していて、まぜそば、ビビンバ、もんじゃ焼きなど、混ぜれば混ぜるほど美味しくなるが…世界四大文明の一つが存在したエジプトでは、最強のごちゃまぜ料理「コシャリ」があることで有名だ。しかし、その独特の味のために…巷では「まずい」なんて心ないことを言われてしまうことも!
今回は、エジプトの世界遺産・カイロ歴史地区の帰りに味わったグルメ「コシャリ」を紹介。世界遺産巡りのついでに味わってほしい「世界遺産級の激ウマ・グルメ」を解説していこう。
エジプトの世界遺産「カイロ歴史地区」は「混沌」という言葉が似合う街
エジプトの首都カイロ。この街の郊外には世界遺産ピラミッドがあることで有名だが、実は東部に広がる「イスラム地区」や「オールド・カイロ」と呼ばれる旧市街も世界遺産に登録されている。ここはアフリカ大陸でも最大級の旧市街の広さを誇り、7世紀に建造された大陸最古のモスクだけでなく、20世紀までイスラム建築が築かれたため、「1000のミナレットを持つ街」なんて別称があるくらいだ。
しかし、世界遺産の町並みといっても、あまりにも広く、新旧の建造物がギュウギュウに築かれていて、何が価値があって何が価値がないのか全くわからないほど…。しかも、気候も暑い上に、商業地区のために人やモノでいっぱいで、まさに「混沌」。さらに喧騒…喧嘩…歩くだけでクラクラしてしまうだが、これぞまさにカイロらしさでもあるのだ。
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エジプトのラーメン的存在である「コシャリ」は…本当にまずいのか?
そんなエジプトの庶民の中でも人気を1、2位を争うB級グルメといえば「コシャリ」だ。特に大都会であるカイロには、専門店が多く、イスラム地区の街角にも見られる。これは米やマカロニ、短いスパゲッティ、ヒヨコ豆、レンズ豆を炊いたものを、トマトソースと揚げ玉ねぎをかけて豪快にかき混ぜて食べる…日本人からすると「なんでも混ぜれば良いってもんじゃないだろう!」とキレられそうな料理である。
…が、世の中のあらゆる炭水化物が混ぜた「混沌っぷり」は、逆にハーモニーを生み出し、豆のホクホクさに米とパスタの硬い食感が合うのである。おこのみでさらに、ラーメンと同じように、「カル」と呼ばれるお酢と「シャッタ」と呼ばれる辛いソースでお好みで「味変」をすると、シンプルな味に深みが増し、なんとも言えない旨味が出てくる。いや、最初は抵抗感があるので「まずい」と思ってしまうのは分かるが、麺好きの国民性なら2回以上食べると自身の好きな味わいを覚えていくので「これは実はうまいんじゃないか?」と感じつつあるのだ。
そして、食べれば食べるほどにラーメンと同じく、シンプルながら「奥深いメニュー」であると認識するようになる。もう科学では説明できないが、不思議なのだ。
…これは「世界遺産級」の味わいだ!
まさにカイロ歴史地区の「混沌」を表したような「コシャリ」
とまぁ、奥深いメニューであると伝えたが、この料理は専門店が多いものの、店ごとに違いというのは、実はそれほどない。もちろん、米やパスタの形状や炊き具合、トッピングの種類とか、細かい点で違いはあるのだが、どれもトマトソースが主軸であるだけに大まかな違いはない。
そもそも歴史もはっきりとしない…。古代エジプトに存在した豆を混ぜ合わせた料理がルーツだとか、第一次世界大戦時にインド人によるお粥料理をイタリア人がパスタを加えて改良した料理とかなんとか、全く分からない。しかし、悠久の歴史を誇るエジプトでは、調べる項目が多すぎて、こんな庶民グルメの歴史まで手が回らないだろう。
カイロの男たちは「俺はコシャリだったら名店であり、老舗のアブー・ターレクなんだ!」といったこだわりがあるように、それぞれに何回も食べ比べたら分かる「違い」があるのである。カイロの街のような歴史を重ねていった結果として生まれた料理であるコシャリは、まさに「混沌」という中にも秩序が感じられる不思議な食べ物だ。
世界遺産のついでに世界遺産級のグルメも同時に楽しんでみてはいかが?
※こちらの内容は、あくまでも過去に現地を訪れた際に体験したものであり、最新情報はご自身でご確認ください。