シリアの世界遺産「古代都市ダマスカス」とは?首都として繁栄した都市を世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産 危機遺産2013年〜
登録基準(1), (2), (3), (4), (6)
登録年1979年

シリアの首都ダマスカスは、世界最古の歴史を持つ都市の一つとされるほどに歴史が深い街。ここはイスラム世界初の王朝であるウマイヤ朝(661〜750年)の首都として繁栄した商業都市で、世界最古のモスクであるウマイヤ・モスクなど、約125もの歴史的な建造物が残っています。

ここでは古代都市ダマスカスがなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、ダマスカスについて詳しくなること間違いなし!

目次

古代都市ダマスカスとは?シリアの首都は歴史的建造物が集まる都市

古代都市ダマスカス
画像素材:shutterstock

首都ダマスカスはシリア南西部にあり、ここはエジプトとメソポタミア、地中海世界を結ぶ都市で、紀元前8000年〜1万年には既に集落があったとされています。現在のダマスカスは紀元前3000年頃に形成されたとされ、世界でも最も古い継続的に人が住み続ける都市の一つでもあります。ここは『旧約聖書』ではアブラハムが訪れとされ、『新約聖書』ではイエス・キリストと聖母マリアがここに避難したなど、ユダヤ教やキリスト教にとってもゆかりの深い街。

1世紀にローマ帝国の属州となると、ここはローマ帝国の都市計画が採用され、すべての通りが南北もしくは東西に向いているのが特徴。8世紀にウマイヤ朝の首都になると、現在でも残る世界最古のモスク「ウマイヤ・モスク」が建造され、イスラム都市へと変わっていきます。

ローマ時代の建造物はほとんどなく、遺跡となってしまっていますが、当時の区画は現在も残っています。現在は中世から残る城壁や要塞、モスク、墳墓などはあるものの、都市の建築物の大部分は16世紀のオスマン帝国の統治した時代以降のもの。

危機遺産(危機にさらされている世界遺産)

2013年のシリア内戦で多大な被害を受けたため、危機遺産に登録され、現在も解除されていません。

登録されている主な構成資産

ウマイヤ・モスク

ウマイヤ・モスク
画像素材:shutterstock

ダマスカスの中心部にある、8世紀建造のモスクで、ここは現存する世界最古のイスラム教の礼拝堂。もともとはメソポタミアの神・アダドを祀る神殿があったとされ、4世紀にキリスト教の教会になると、8世紀にモスクに変更されました。

何度も破壊と再建を繰り返しているため、建物そのものがイスラムの歴史を示すものでありますが、おもに中庭と礼拝堂(ハラム)で構成されています。ここには現在は3つのミナレット(塔)が残っていて、最も古い「花嫁のミナレット」は9世紀のアッバース朝時代に建設されたという説があるほど。

サラーフッディーン廟

サラーフッディーン廟
画像素材:shutterstock

ウマイヤ・モスクの北側に位置するのが、12世紀のアイユーブ朝のスルタン・サラーフッディーン・アイユービー(サラディン)の霊廟。彼はここを首都として、街に新たな宗教施設を築きました。そして、十字軍と戦った、イスラム世界の英雄ではあるものの、情け深い人物であることもあり、最期はここで亡くなったことから今でも多くの人が集まります。

アゼム宮殿

アゼム宮殿
画像素材:shutterstock

ウマイヤ・モスクの南側に位置する宮殿。ここは18世紀にオスマン帝国のダマスカス州の総督であったアサド・パシャ・アル・アゼムによって建造されました。当時のオスマン帝国は衰退期であり、地元の名士であったアゼム家は総督を世襲し、半独立状態でした。

宮殿の広さは6400平方kmもあり、3つの大きな棟が存在するもの。オスマン朝時代の伝統的家屋が見られ、緑の多い中庭などで有名。宮殿の建築素材としては、玄武岩や大理石、砂岩など何種類もの石が使用されていて、天井には自然の景観を表現した木製のパネルが配置されています。

古代都市ダマスカスはどんな理由で世界遺産に登録されているの?

ウマイヤ・モスク
画像素材:shutterstock

ダマスカスが評価されたのが、以下の点。

登録基準(i)
ダマスカスには、ウマイヤ朝の最高傑作のウマイヤ・モスク、要塞、アゼム宮殿、神学校、邸宅、ハマムなど、さまざまな時代の主要な建造物が見られるという点。

登録基準(ii)
ダマスカスは、ローマ時代の区画が利用された、最初のイスラム王朝であるウマイヤ朝の首都であり、その後の各地で建造される都市のモデルとなり、イスラム都市の発展に大きな役割を果たしたということ。

登録基準(iii)
都市としての歴史は紀元前3000年頃で、世界で最も古くから継続的に居住を続けている都市の一つで、ウマイヤ朝の重要な都市であり、中世からの建築物はいくつか残ってはいるものの、ほとんどの建造物は16世紀以降のオスマン帝国時代のものでありますが貴重であるという点。

登録基準(iv)
ダマスカスのウマイヤ・モスクは、世界最古のモスクの一つで、現在でも祈りを捧げる人が多く訪れ、イスラムの文化や社会、芸術の発展が見られるということ。

登録基準(vi)
ダマスカスは、イスラムの歴史において、事件や思想、伝統などと結びついていて、これらはイスラム文化を確立するのに貢献していたという点。

世界遺産マニアの結論と感想

ダマスカスは、継続的に人が住む世界で最古の都市とされるほどで、ここはウマイヤ朝の首都であっただけに、その後に各地で作られるイスラム都市に影響を与えたという点で評価されています。そして、ウマイヤ・モスクなど中世イスラム建築は残るものの、ほとんどはオスマン朝時代に建造されたものですが、それも含めて貴重であるというのもポイント。

ちなみに、継続的に人が住むという点で世界で最も古い都市は、一般的にはダマスカスという認識ではあるものの、町が設立された年数で言えば、2023年に登録されたパレスチナのエリコは紀元前9000年前に遡り、同じく世界遺産のレバノンのビブロスは新石器時代までに遡るという、どれも歴史が深い集落。まぁ「街の規模に関わらず」という点では、これからもっと古い都市も出てきそうなので怖いですね。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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