メキシコの世界遺産「カンペチェ州カラクムルの古代マヤ都市と熱帯保護林」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分複合遺産
登録基準(1), (2), (3), (4), (9), (10)
登録年2002年(2014年拡大)

メキシコ南東部に広がるカンペチェ州の熱帯林は、メソアメリカで2番目に広大な敷地を誇るもの。その中に佇むカラクルムの遺跡は、12世紀以上に渡って繁栄したマヤ文明の中心都市でした。特に高さ約55mの建造物IIは、マヤ文明の中でも最大級のピラミッド。

ここではカンペチェ州カラクムルの古代マヤ都市と熱帯保護林がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、カラクムルの古代マヤ都市と熱帯保護林について詳しくなること間違いなし!

目次

カンペチェ州カラクムルの古代マヤ都市と熱帯保護林とは?

カンペチェ州カラクムルの古代マヤ都市と熱帯保護林
画像素材:shutterstock

カンペチェ州はメキシコ東部のユカタン半島の西側部分一帯を含む行政区域。半島の中央部に広がる広大なジャングルは、メソアメリカでも2番目の敷地を誇る熱帯雨林です。ここはもともとカラクルム生物保護区であり、カラクルムの遺跡が2002年に文化遺産として登録された後、2014年にカラクルム生物保護区の一部を含めて拡大し、複合遺産になりました。

文化遺産

建造物II
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今はジャングルに囲まれていて、人がほとんど住んでいませんが、紀元前1000年から紀元1000年ころまで栄えたマヤ文明の中心都市の一つでした。ここは先古典期に人が住み始めたとされ、古典期(300年頃〜900年頃)には、ヘビを意味する「カーン」と呼ばれていました。その頃からグアテマラのティカルと並ぶ、大きな都市国家で、神殿として使用されたピラミッドや宮殿など、マヤ文明の文化が花開きました。ここでは翡翠のマスクや装飾品、陶器、碑文などが発見。

特に高さ約55mの建造物IIは、マヤ文明の中でも最大級のピラミッド。ここでは巨大なスタッコ(化粧装飾)のマスクなどの副葬品が発見されていて、王の埋葬地でもあったとされているもの。「カラクルム」とは、この建造物IIと対をなす、高さ50mの建造物Iと合わせて、マヤ語で「2つの並んだ丘」を意味するもの。しかし、これだけ繁栄したにもかかわらず、7世紀にティカルに大敗し、その後衰退。10世紀末にはカラクルムは都市ごと放棄されたとされています。

ここは1200年以上にも渡って、政治だけはなく、マヤの文化や芸術においても重要な地でありました。

自然遺産

ジャガー
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都市遺跡の周囲に広がる熱帯雨林は、生物多様性が見られるという点で貴重なもの。ここはカルスト地形が広がっていて大河はなく、雨季になると水が貯まることによって、豊かな生態系が築かれてきました。こうして固有種や絶滅危惧種が多く暮らす森になったのです。

特に哺乳類は高い多様性を誇り、メキシコに生息する霊長類の3種のうち2種、猫科は6種のうちジャガーやピューマなど5種も生息。これらの動物はマヤの人々においても神聖視されてきて、彫刻や陶器、絵画などにも描かれてきました。

カンペチェ州カラクムルの古代マヤ都市と熱帯保護林はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

カンペチェ州カラクムルの古代マヤ都市と熱帯保護林
画像素材:shutterstock

カラクルムの古代マヤ都市と熱帯保護林が評価されたのが、以下の点。

登録基準(i)
カラクムルの古代マヤ都市は長い間、熱帯雨林に囲まれていたという環境もあり、マヤ文明の急速に発展した都市の姿が保存状態も良く残っているという点。

登録基準(ii)
カラクムルの遺跡では、碑文が多く発見されていて、これらは周囲のマヤ都市との交流を示し、先古典期から古典期のマヤ文明において、建築様式や美術などが発展していった都市であったということ。

登録基準(iii)
カラクムルの遺跡は、古典期の最後に消え去ったマヤ文明の繁栄が見られるもので、文明の始まりと崩壊の両方が見られる場所であるという点。

登録基準(iv)
カラクムルの遺跡は、かつてマヤ文明で最も繁栄した都市ということが分かり、巨大なピラミッドなどマヤを代表する建築物が並んでいるということ。

登録基準(ix)
カラクルムの熱帯保護林は、ユカタン半島の水を涵養するエリアにあるため、数千年のマヤの農業と林業に関わる植物相を示し、これらは人間と自然の長期に渡る相互作用を示すものであるという点。

登録基準(x)
カラクルムの熱帯保護林は、カルストの土壌に森が続き、豊かな生物多様性と多くの固有種、絶滅危惧種が見られ、メキシコに生息する霊長類の3種のうち2種、ネコ科は6種のうちジャガーやピューマなど5種も生息しているということ。

世界遺産マニアの結論と感想

カラクルムは、マヤ文明の中心都市の一つとして周囲の都市と交流しつつ、このエリアでも最大のピラミッドを建造するまでに繁栄したものの、10世紀には放棄され、そのままジャングルに残されたことから保存状態が良いという点で評価されています。そして、周囲の熱帯雨林はマヤ文明の基盤を支え、絶滅危惧種や固有種が生息する貴重な森であるというのもポイント。

他の複合遺産は、自然遺産に文化遺産が加わり、複合遺産になったケースがあったのですが、ここは文化遺産に自然が加わって複合遺産になったというレアケース。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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