ギリシャの世界遺産「アトス山」とは?自治が認められている?世界遺産マニアが解説

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登録区分複合遺産
登録基準(1), (2), (4), (5), (6), (7)
登録年1988年

ギリシャ北東部にあるアトス半島は、アトス山を中心としたギリシャ正教の聖地でもあります。ここは10世紀から自治が認められていて、今でも女人禁制。現在は20もの修道院が点在し、修道士が昔ながらの生活様式で暮らしています。この地で発展した絵画はロシアや東欧の美術に影響を与えました。

ここではアトス山がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、アトス山について詳しくなること間違いなし!

目次

アトス山とは?実は「アトス自治修道士共和国」という国家

聖山アトス
画像素材:shutterstock

ギリシャ北東部に位置するアトス半島は、聖山アトス(標高2033m)があり、ここには20もの修道院が点在するギリシャ正教の聖地。10世紀以降、当時この地を支配していたビザンツ帝国(東ローマ帝国)のニケフォロス2世フォカスから自治権を得てから「アトス自治修道士共和国」として現在でも治外法権が認められている共和国でもあります。

ここは早くからキリスト教徒が住んでいたとされますが、9世紀にラヴラ修道院がこの地域に創設。10世紀には皇帝から勅許を得ると、11世紀には40も超える修道院が建設されるように。14世紀にはオスマン帝国の勢力下に入り、一部の修道士はメテオラなどへと逃れるものの、自治が認められ続け、21世紀まで共和国はずっと存続しています。

アトス山
画像素材:shutterstock

「共和国」であるものの、首相のようなものは存在しておらず、それぞれの修道院が自治を行っているという独特な行政となっています。ただし、主席は規模の大きな修道院から交代で選ばれるというのが決まり。実は女人禁制になったのは1406年のことで、これは現在まで守られていて、男性であっても入域許可証がないと入ることすらできません。

ここでは16世紀まで使用されていたユリウス歴が使用されていて、修道院にはイコンやフレスコ画の傑作が今でも保管されています。アトス山の修道院はビザンツ美術が発展した地でもあり、この地の絵画の流派はロシアや東欧の美術に影響を与えています。

今でも伝統的な農業が行われているため、人の手による大規模な開発も行われていないというのも特徴。この環境もあり、アトス山の豊かな森林には独自の植物相が見られ、複合遺産としても登録されています。

アトス山はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

アトス山
画像素材:shutterstock

アトス山が評価されたのが、以下の点。

登録基準(i)
アトスは、自然の中に修道院が組み合わるという、独特の景観が残り、修道院にイコンや写本など、貴重な品々が保存されているということ。

登録基準(ii)
アトス山の宗教建築と絵画の流派は、ギリシャ国内からロシアまで幅広く影響を与えているという点。

登録基準(iv)
アトス山の修道院には、修道士が暮らすために礼拝堂や食堂、病院、図書館があり、要塞としての機能を持つ、正教会の修道院の典型的な建築様式が見られるということ。

登録基準(v)
現代社会において徐々に変化を求められているものの、アトス山の修道院の独自の伝統は今でも残されているという点。

登録基準(vi)
アトス山は10世紀以降、ギリシャ正教会の聖地でありましたが、20世紀以降でも20ヶ国以上のギリシャ正教会との関係を保ち、今でも聖地として普遍的な価値を誇るということ。

登録基準(vii)
ここは聖地であり、伝統的な農業や林業が今でも行われているため、地中海の森林とアトス山の豊かな植物相が保存されているという点。

世界遺産マニアの結論と感想

アトス山は10世紀以降、ギリシャ正教の聖地であり、ここは修道院建築や宗教画の中心地でもあったことから、ギリシャ正教が普及した東ヨーロッパやロシアなどに影響を与え、今でも関係が強いという点で評価されています。そして、現在でもアトス山は女人禁制という伝統を重んじて暮らしていて、開発もされていないため、豊かな自然が残るという点もポイント。

ちなみに、「女人禁制」は徹底していて、家畜ですら雌は入れないというほど。よって家畜はほぼ存在しないというのもアトス山の特徴。しかし、ネズミ捕りの猫だけは雌の入域が許されているのです。…まぁ、禁欲的な暮らしには癒やしを与えてくれる可愛いニャンコが必要なのかもしれませんね。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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