登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (1),(2),(4),(6) |
登録年 | 1996年 |
ミディ運河は地中海と大西洋を結ぶ水路のことで、その長さはなんと360km。この運河を作ったのは、17世紀に塩税徴収人として財を成したピエール=ポール・リケ。水門、水道橋、トンネルなどさまざまな建築技術の集合体で、「近代建築への扉」としても評価されています。
ここでは、ミディ運河がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、ミディ運河について詳しくなること間違いなし!
ミディ運河とは?
フランス南西部のトゥールーズから地中海に面したトー湖まで全長360kmの運河のこと。1667〜1694年の間に建造。フランスはこの運河の完成により、産業革命への道を開いたとも言えるほど。ピエール=ポール・リケは工学者であり、塩税徴収人として成功したことから、ルイ14世から許可を得て建設を始めました。
もともとミディ運河は、水路を接続することによって地中海と大西洋を結ぶ「ドゥメール運河」プロジェクトの走りでもあったのです。ミディ運河を築いたエリアは起伏が多く、水道橋を作ったり、トンネルを掘ったり、水門を作るなど、当時の最先端の技術力をつぎ込んで作られたもの。特にマルバ・トンネルという世界初の運河用トンネルは全長16mにも及びます。
フォンセランヌの7段の水門はその段々の姿は、運河を代表する風景。運河全体に水を張り巡らすため、いくつか貯水池を作るなど、ミディ運河はその後の運河建設の基礎となったのです。
結果的にこの運河の完成によって、南フランスのワインの出荷量は大幅に増加しました。しかし、19世紀に鉄道が登場すると運河の利用は極端に減少。今ではむしろ観光地として有名で、運河クルーズもよく行われています。そして、その美しい運河の景観は散歩ルートに。
ミディ運河はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
ミディ運河が評価されたのが、以下の点。
登録基準(i)
ミディ運河は、近代でも土木工学の成功した傑作である点。
登録基準(ii)
運河は、建築技術や人類の叡智を結晶した技術革新の代表であったいうこと。
登録基準(iv)
土木工学などを駆使して高低差のある運河を造成したということは、ヨーロッパの建築技術の発展において重要な段階であったという点。
登録基準(v)
ミディ運河は環境などと合わせながら、独特の景観を作り上げたということ。
世界遺産マニアの結論と感想
とにかく、この運河のすごさは一見するだけでは分からないですが、当時はこんな長い距離の人工的な運河を作るというのはかなりの夢物語だったのです。そして、運河トンネルやいくつもある53の閘門は当時のヨーロッパの技術力の高さをよく示しています。そして、世界に類を見ない長距離の運河となりました。
ちなみに、リケは私財をほぼつぎ込み、家具を売ったり、娘の結婚の持参金を利用してまで、運河の建設に心血を注いだとされます。しかし、その完成を見ることなく、亡くなってしまいました。彼が亡くなった後、1681年に運河は完成し、これにより太平洋と地中海が繋がるという大偉業を成し遂げたのです。