登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (1), (4) |
登録年 | 1993年(2010年拡大) |
ルーマニア北部に位置する8つのルーマニア正教の教会群が世界遺産に登録。これらはモルドバ公国の最盛期であるシュテファン大公(1457〜1504年)によって建造が始まり、文字の読めない人にも聖書が理解できるように外壁も内壁も聖書をテーマにしたフレスコ画が描かれているのが特徴。
ここではモルドバ地方の教会群がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、モルドバ地方の教会について詳しくなること間違いなし!
モルドバ地方の教会群とは?
ルーマニア北東部から現在のモルドバ共和国にまたがるエリアはモルドバ地方と呼ばれるエリアで、14世紀にはモルドバ公国が存在していました。15世紀半から16世紀にかけて、シュテファン大公によって最盛期を迎えると、彼は当時侵略のために攻め入ったオスマン帝国を撃退する度に独特の修道院や教会を建造していきました。その後の後継者たちも教会と修道院の建造をこの地で続け、現在は12の教会や修道院が残ります。その中でもアルボーレ、フモール、モルドヴィツァ、パトラツィ、スチャヴァ、ヴォロネツ、スチェヴィツァの8ヶ所が世界遺産に登録。
これらの建造物は、外壁と内壁もフレスコ画で覆われているのが特徴。文字の読めない人にも聖書が理解できるようになっていて、どれも雨や風、太陽から壁画を保護するように大きな屋根が置かれています。フレスコ画はキリスト教をテーマにしているものの、オスマン兵やターバンを巻いた人々など、異教徒であるイスラム教徒を撃退しているというのが特徴。これらはかつてキリスト教が伝えられたビザンツ帝国の芸術様式を導入した傑作でもあり、帝国が崩壊した後の流れを組む美術作品でもあります。
ヴォロネツ修道院(聖ゲオルゲ教会)
グラ・フモールという町の郊外に位置する修道院で、ここはシュテファン大公がオスマン帝国との戦争に勝利を記念し、15世紀後半に建造。ここは18世紀に廃墟となるものの、中央に位置する聖ゲオルゲ教会の保存状態は良好で、1991年に修道院として再利用されています。
特に聖ゲオルゲ教会の外壁にある『最後の審判』のフレスコ画が有名で、この青色は「ヴォロネツの青」とも呼ばれる、鮮やかな青色で表現された傑作として有名です。
モルドバ地方の教会群はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
モルドバ地方の教会が評価されたのが、以下の点。
登録基準(i)
モルドバ地方の教会群は、外壁と内壁がフレスコ画で埋められていて、聖書の内容はフレスコ画を見るだけで理解できるというもので、ビザンツ美術から影響を受けた独自の芸術様式であり、壁画の傑作であるという点。
登録基準(iv)
モルドバ地方の教会群は、外壁をフレスコ画で覆うといった独特の芸術様式で、15世紀後半から16世紀後半までモルドバで採用された教会の建築様式の顕著な例であるということ。
世界遺産マニアの結論と感想
モルドバ地方の教会群は、他の地域では見られない外壁と内壁が聖書をテーマとしたフレスコ画で埋められているという独特の建築様式。これらはビザンツ様式からの影響を受け、ビザンツのキリスト教にまつわる芸術様式を受け継ぐものであるという点で評価されています。
ちなみに、昔の日本ではこれらの教会群は「5つの修道院」としてスチェヴィツァ、モルドヴィツァ、アルボーレ、フモール、ヴォロネツの5つがよく紹介されていました。しかし、アルボーレのようにそもそも修道院でない教会も含まれているのに何故か「修道院」とされていて、割と5つの修道院という「響き」だけで決められた模様。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。