イギリス・ドイツの世界遺産「ローマ帝国の国境線」とは?ハドリアヌスの長城を含めて世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産
登録基準(2), (3), (4)
登録年1987年(2005年、2008年範囲拡大)

ブリテン島北部にローマ人によって築かれたハドリアヌスの長城は、約118kmもの長さで北方民族の襲撃に備えて築かれたもの。そして、その北方にある60kmのアントニヌス・ピウスの長城、ゲルマン民族の襲撃に備えて建造された、現在のドイツのライン川とドナウ川を結ぶ約500kmのリーメスも合わせて登録。

ここでは、ローマ帝国の国境線がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、ローマ帝国の国境線について詳しくなること間違いなし!

目次

ローマ帝国の国境線とは?

リーメス/ローマ帝国の国境線
画像素材:shutterstock

ローマ帝国の領土は2世紀に最盛期になると、西は大西洋の海岸、東は黒海、北はスコットランド、南はサハラ砂漠と広大な領土になりました。この国境を保護するために建造されたのが、国境線にあった「長城」。現在はほとんどが遺構となっていますが、当時の国境線は現在も残っています。

まず、1987年にイングランド北部にあったハドリアヌスの長城が登録されると、2005年に現在のドイツのライン川とドナウ川を結ぶリーメス、2008年にはスコットランドにあるアントニヌス・ピウスの長城が拡大登録されました。

ハドリアヌスの長城

ハドリアヌスの長城/ローマ帝国の国境線
画像素材:shutterstock

イングランドとスコッランドとの国境近くに位置する長城。122年にローマ帝国・五賢帝の一人、ハドリアヌス帝によって、属州ブリタニアの最北端に築かれたもの。ここは当時スコットランドに住んでいたケルト系のピクト人の侵入を防ぐために建造されました。

長城は東海岸のニューカッスル・アポン・タインから西海岸のカーライルまでの約118kmにも及び、壁の高さは4〜5mで、6kmの間隔で要塞が建造されていきました。4世紀以降、ローマ軍が撤退した後も17世紀まで使用されていたので保存状態は良好。

アントニヌス・ピウスの長城

アントニヌス・ピウスの長城/ローマ帝国の国境線
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スコットランド中央部に残る遺構。140年代に五賢帝の一人、アントニヌス・ピウス帝の命によって建てられ、東はフォース湾から西はクライド湾までスコットランドの中央部を通るよう約60kmに渡って建造されました。

しかし、ハドリアヌスの長城に比べ、小規模な上に、3世紀には放棄されてしまったために保存状態も悪く、一部は砦跡は残っているものの、現在はほぼ遺構のみ。

リーメス

リーメス/ローマ帝国の国境線
画像素材:shutterstock

リーメスとはラテン語で「境界」という意味。現在のドイツ北部から侵入してくるゲルマン人に備え、西のライン川と東のドナウ川の間に長城が築かれました。これは約580kmにも渡って続くもので、83年にローマ皇帝ドミティアヌスによって建設が始まり、2世紀末まで改築されつつ維持されていました。

現在は総距離の3割程度の遺構が残っていて、約900ヶ所もの物見櫓や60以上の城砦が確認されています。20世紀前半に、フランクフルト郊外のザールブルク砦が再建され、現在は博物館として利用。

ローマ帝国の国境線はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

ハドリアヌスの長城/ローマ帝国の国境線
画像素材:shutterstock

ローマ帝国の国境線が評価されたのが、以下の点。

登録基準(ii)
国境に長城を建造することによって、帝国内のさまざまなエリアから兵士や現地の民間人の移動を通じて文化交流が生まれ、建築様式や生活様式などが発展したということ。

登録基準(iii)
これらの長城は、ヨーロッパ北西部の国境までローマ帝国の支配が最大限に拡大したことを示すものであったという点。

登録基準(iv)
長城はローマの軍事施設建築の優れた例であり、これらがヨーロッパ全土に広がっていき、その後ローマ帝国がさらに発展していったということ。

世界遺産マニアの結論と感想

長城を国境沿いに作ったという点では、イタリアを中心としたローマ帝国の勢力がそこまで及んでいたということだけはなく、ローマの建築技術が当時の辺境の地であった場所でも見られるという点で評価。それだけではなく、長城を築くことによって、帝国各地からやってきた兵士と現地の住民との交流も生まれたという点もポイントでもあります。

ちなみに、リーメスはまだまだ世界遺産登録されていて、2021年には「ローマ帝国の国境線-ドナウのリーメス(西部分)」、「ローマ帝国の国境線-ゲルマニア・インフェリオルのリーメス」とリーメス祭りになっています。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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