登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (1), (2), (3), (4) |
登録年 | 2012年 |
イラン北東部にある都市ゴンバデ・カーブースには、同名の塔があり、これは11世紀にズィヤール朝4代目の君主カーブース・ブン・ワシュムギールが建造したもの。ここはかつてズィヤール朝の首都であったジョルジャーンと呼ばれた時代の名残で、その革新的な建築様式は周囲のイスラム国家の建築物に影響を与えるほどの傑作。
ここではゴンバデ・カーブースがなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、ゴンバデ・カーブースについて詳しくなること間違いなし!
ゴンバデ・カーブースとは?
トルクメニスタンの国境沿いに広がるゴレスターン州にあるゴンバデ・カーヴース。ここはシーア派のイスラム王朝ズィヤール朝(927〜1043年)の首都ジョルジャーンの近くにあった場所で、53mの塔はゴンバデ・カーブースと呼ばれます。この塔は詩人としても有名な4代目の君主カーブース・ブン・ワシュムギール(978〜1012年))のために建造された墓とされているもの。20世紀初頭にこの周辺に都市が設立され、都市名は塔の名が採用されました。
レンガ造りの塔は10角形の土台の上に築かれ、円錐形の屋根が置かれていて、周囲にはアラビア語の書法であるクーフィー体の碑文が刻まれています。ジョルジャーンは、イスラム世界において芸術と科学の中心地であったのですが、14〜15世紀にモンゴル人によって滅ぼされるものの、この塔だけが現存。これはイランやアナトリア(現在のトルコ)、中央アジアの霊廟建築の影響を与えた、初期イスラム建築の中でも革新的な技術が見られるもので、かつての都市ジョルジャーンの繁栄を示しています。
ゴンバデ・カーブースはどんな理由で世界遺産に登録されているの?
ゴンバデ・カーブースが評価されたのが、以下の点。
登録基準(i)
ゴンバデ・カーブースは、初期イスラムのレンガ造りの建築物の傑作であるという点。
登録基準(ii)
ゴンバデ・カーブースの円錐型の屋根は、イランやアナトリア、中央アジアの霊廟建築の原型でもあり、これは中央アジアの遊牧民とイランの古代文明の建築的交流が見られるということ。
登録基準(iii)
ゴンバデ・カーブースは、10〜11世紀に周囲を支配したズィヤール朝の権力の象徴であり、詩人でもあった君主のために建造され、記念碑的な霊廟建築の文化的伝統の始まりを示すという点。
登録基準(iv)
ゴンバデ・カーブースは、イスラム建築における傑出した記念碑で、革新的な設計は10世紀のイスラム世界の数学と科学の発展を示すということ。
世界遺産マニアの結論と感想
ゴンバデ・カーブースは、ズィヤール朝時代の偉大な君主であるカーブース・ブン・ワシュムギールのために建造された、記念碑的な霊廟であり、当時のイスラム世界の科学力を示し、やがてこの革新的な建築物はイランやトルコ、中央アジアの霊廟の建築物に与えたという点で評価されています。
ちなみに、カーヴースはイスラム世界最大の知識人であったイブン・スィーナーをアフガニスタンから呼んだものの、到着したころには彼は亡くなってしまったのです。そのため、現在のイラン西部を中心としたブワイフ朝で宰相となり、首都であったハマダーンに墓があります。カーヴースがもう少し生きていたら、墓はここに作られたかもしれませんね。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。