イタリアの世界遺産「トスカーナ地方のメディチ家の邸宅群と庭園群」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産
登録基準(2), (4), (6)
登録年2013年

かつて北イタリアに存在したトスカーナ大公国(1569〜1860年)の君主であったフィレンツェ出身のメディチ家は、政治と経済において大きな影響力があり、彼らは都市の周囲にルネサンスの独創的な12の邸宅と2つの庭園を建造。これらは当時の軍事的な貴族の城館とは異なり、自然環境の中に調和する革新的な建築と庭園であり、イタリアやヨーロッパの各地の別荘のモデルともなりました。

ここではトスカーナ地方のメディチ家の邸宅群と庭園群がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、メディチ家の邸宅と庭園について詳しくなること間違いなし!

目次

トスカーナ地方のメディチ家の邸宅群と庭園群とは?

ヴィッラ・メディチェア・ラ・ペトライア/トスカーナ地方のメディチ家の邸宅群と庭園群
画像素材:shutterstock

現在のイタリア北部にあるトスカーナ州は、かつてはフィレンツェを中心に繁栄したトスカーナ大公国の領土でした。フィレンツェ出身のメディチ家は銀行家から支配者となり、やがてトスカーナ大公国の君主となった貴族で、ルネサンスの芸術家たちを支援したことでも有名。特に15〜17世紀にかけて公国の各地にはメディチ家によって12の邸宅と2つの庭園が建設されました。

当時のフィレンツェの貴族が所有していた農場は、軍事的な城館であることが多かったのですが、メディチ家の邸宅は建築と庭園を自然環境に調和するという革新的な形状と機能を持つものでした。これらは後のイタリアとヨーロッパ各地に築かれた王族による邸宅のモデルともなり、近代ヨーロッパ文明に大きな影響を与えています。そして、庭園は自然環境への融合を示し、ヒューマニズム(人文主義)とルネサンス期の特徴的な景観へと発展させるのに貢献したもの。

ヴィッラ・ディ・カファッジオーロ

ヴィッラ・ディ・カファッジオーロ/トスカーナ地方のメディチ家の邸宅群と庭園群
画像素材:shutterstock

フィレンツェから北へ約25kmの位置にあるバルベリーノ・ディ・ムジェッロの近くに位置する別荘。ここは14世紀以降はメディチ系の所有し、最も古くて最も好まれたメディチ家の邸宅の一つ。もともとの建造物はメディチ家のルーツ的存在である羊毛商のアヴェラルド・ディ・メディチ(1320〜1363年)によって建造。1452年になるとルネサンス様式で再建される一方、ゴシック様式の要素も見られ、邸宅というよりも城のような外観を持つのが特徴です。

トスカーナ地方のメディチ家の邸宅群と庭園群はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

ヴィッラ・メディチェア・ラ・ペトライア/トスカーナ地方のメディチ家の邸宅群と庭園群
画像素材:shutterstock

メディチ家の邸宅と庭園が評価されたのが、以下の点。

登録基準(ii)
トスカーナ地方のメディチ家の邸宅群と庭園は、中世の終わりに貴族によって田園地帯に建造された、多目的な施設でした。当時としては新しい素材などが使われた邸宅と庭園は、ルネサンス期のイタリア全土に広がり、その後、近代ヨーロッパに拡大した邸宅のモデルにもなったという点。

登録基準(iv)
メディチ家の邸宅は、レジャーや芸術、文化活動に専念するための地方貴族の邸宅の例で、3世紀に渡ってメディチ家によって革新的な建築や装飾の技能が発展していきました。ここはヒューマニズムとルネサンスによって特有の景観が生み出され、庭園の技術や芸術の融合が見られる例であるということ。

登録基準(vi)
邸宅群と庭園は、トスカーナの風景とともに、新たな美学と生活に密着した芸術が誕生し、貢献してきました。これらはメディチ家が発展した文化や芸術的支援の証拠として、イタリアのルネサンスの理想と嗜好が見られ、ヨーロッパ全体に普及するほどに重要な場所であったという点。

世界遺産マニアの結論と感想

トスカーナ地方のメディチ家の邸宅群と庭園は、それまでの田園地帯の貴族の館とは違って、革新的な建築物や装飾が見られ、メディチ家による芸術と文化が見られるものであり、その後の近代ヨーロッパに拡大した豪華な邸宅や庭園のモデルともなったという点で評価されています。

ちなみに、「メディチ」は「医師」という意味で、先祖は薬問屋であった可能性がありますが、実はルーツがあまり分かっていません。銀行業で繁栄したものの、彼らのファーストネームに多かった「コジモ」という名は医者と薬剤師の守護聖人の聖コスマスから由来するとか。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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