東京都の世界自然遺産「小笠原諸島」とは?世界遺産マニアが簡単に解説

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登録区分自然遺産
登録基準(9)
登録年2011年

東京都23区から南東へ約1000kmも先にある小笠原諸島。実は小笠原村は亜熱帯に位置するにもかかわらず「東京都」であることでも有名ですが、世界自然遺産として登録されていることで有名ですね。ところで、小笠原はなぜ世界遺産に登録されているのでしょうか?意外と知ってそうで知らない!

ここでは、小笠原諸島がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、小笠原諸島について詳しくなること間違いなし!

目次

世界遺産・小笠原諸島とは?なぜ評価されたのかを簡単に解説!

画像素材:写真AC

小笠原諸島は、行政区分としては「東京都」ではあるものの、23区から南東へ約1000kmの位置にある島々。世界遺産としては、南北の約400kmの範囲に、北から聟島列島、父島列島、母島列島など、3列島から構成されるもの。さらに、聟島列島の西に位置する西ノ島、さらに南方に浮かぶ北硫黄島や南硫黄島など、30以上の島々が含まれています。総面積としては79.39平方kmではありますが、周辺の海域から東京湾まで広大な「世界遺産管理エリア」となっているのが特徴。

「小笠原」という名は、16世紀後半に小笠原貞頼(さだより)によって発見されたという伝承により、18世紀に彼の子孫を自称する者から名付けられました。その後、19世紀に欧米の捕鯨船が立ち寄るようになると、白人やハワイ人が入植したりしましたが、1876年に国際的に日本の統治が決定。そして、1880年に東京府(現・東京都)の管轄になったという経緯があります。

画像素材:写真AC

ここは一度も陸地と繋がったことがない海洋島で、ハワイ諸島のように火山によって形成されたわけではなく、近くのプレートが沈むことによって形成される「海洋性島弧(かいようせいとうこ)」に属するもの。

そのため、ここは非常に固有種が多く、海洋島の生態系の進化過程が見られるという点で重要です。特に植物相は441種類見られ、161種が固有種。そして、陸生貝類は94%が固有種で、その中でもカタマイマイ属がの種類が多く、さまざまな生活環境に沿って進化していくという「適応放散」が見られるのが特徴。

周囲から隔離された環境にあるために、哺乳類はオガサワラコウモリ1種類のみという海洋島らしい生態系となっています。沿岸地域には、小笠原諸島に住むミナミハンドウイルカなど23種ものクジラ類が生息。

小笠原諸島はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

画像素材:写真AC

小笠原諸島が評価されたのは?以下の点。

登録基準(ix)
登録範囲の生態系は、東南アジアやオセアニア、東アジアを起源とする植物種が生息し、ここは隔離された土地で独特の種分化が進み、非常に固有種が多く見られ、これらは陸上貝類やシダ科の植物などの適応放散へと繋がっているということ。

つまり、

「小笠原諸島は、大陸から隔離され、小さな島々という環境もあり、固有種の集中と適応放散の組み合わせによって他とは異なる独自の進化の過程が見られる」

ということですね。

小笠原諸島の構成遺産をご紹介

1、聟島列島

画像素材:写真AC

小笠原諸島の最も北に位置していて、世界遺産として登録されているのは、名前の由来となっている聟島と北之島、媒島、嫁島ですべて無人島。かつてはムコジマメグロというメグロ属が生息していたのですが、入植によってヤギやネズミなどの外来種が島に増え、絶滅しています。

2、父島列島

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名前の由来となっている父島は小笠原諸島で2番目に大きな島で、東京湾からフェリーが到着する中心地。世界遺産としては、父島の一部と、兄島、弟島、西島、東島、南島で構成されています。父島全体が世界遺産というわけではなく、東部や南部が登録エリアで、多くの固有種が見られるという点で評価されています。

3、母島列島

画像素材:写真AC

列島の中でも最も面積の大きい母島が中心で、集落以外は世界遺産に登録されています。島の南に浮かぶ平島、向島、姉島、妹島、姪島も世界遺産に登録。ここはハハジマメグロというメジロ属の仲間が見られ、絶滅危惧種にも登録されています。同じメジロの中でも、ハハジマメグロは大型で黄色が濃いというのが特徴。

世界遺産マニアの結論と感想

小笠原諸島は、大陸から隔離された環境にあり、ここは植物、鳥類、哺乳類、爬虫類などが、島の環境に合わせてそれぞれ進化していくという適応放散が発生したという珍しい生態系が評価されています。

ちなみに、小笠原貞頼の曾孫である小笠原貞任(さだとう)は、祖父が小笠原諸島の事情を記したという『巽無人島記』を元に幕府から渡航と領有権を得たのですが、これはどうも怪しい内容だったようで…彼は詐欺罪に問われ、財産は没収され、追放させられました。しかし、この事件があまりにもセンセーショナルだったのか、それまで「無人島(ぶにんしま)」と呼ばれいていた島々は「小笠原」という名が定着していきました。…その経緯を考えると、なんとも皮肉な話なのですが。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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