登録区分 | 文化遺産(危機遺産2015年〜) |
登録基準 | (4),(5),(6) |
登録年 | 1986年 |
イエメンの首都サナアは、標高約2300mの高原都市ではありますが、なんと2500年に渡って人が住んでいるという世界最古の町の一つです。ここは7世紀からイスラム都市となり、その歴史も古く、旧市街にはスークや高層邸宅が並び、他に例を見ない美しい景観が広がります。
ここではサナア旧市街がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、サナア旧市街について詳しくなること間違いなし!
サナア旧市街とは?
サナアは、イエメン西部の山岳地帯に築かれた、標高約2300m高原都市。旧市街は市内の東部に位置していて、幅は約1.5kmで、南北約1kmも続く広大なエリア。ここには100を超えるモスクと6000を超える邸宅があり、中世のイスラム都市の景観を今でもよく残しています。
ここは『旧約聖書』に登場するノアの息子であるセムが建造したという伝説が残るほど歴史が古く、「マディーナット・サーム(セムの町)」という名を持ち、世界最古の都市の一つでもあります。紀元前10世紀頃から乳香の交易で栄えたとされ、ヒムヤル王国(紀元前2世紀〜6世紀)時代に王都となり、その後、エチオピアのアクスム王国やビザンツ帝国に支配されてきました。
7世紀になると、都市はイスラム圏に属するようになり、開祖ムハンマド自らが開いたとされるモスクが現在でも残っています。そして、16世紀にオスマン帝国が統治すると街は発展。現在の旧市街の多くの建造物は、400〜500年前に建造されたもの。
危機遺産
2014年から反政府運動が起こると、「フーシ」と呼ばれるイスム教シーア派の武装組織が制圧し、そのまま占拠。現在も継続して危機遺産に登録されています。
登録されている主な構成資産
イエメン門
旧市街は城壁で囲まれていて、5つの門があったとされますが、現存するのは南側のイエメン門のみ。この門は1000年以上前から存在しているとされていますが、現在見られる建造物は17世紀に建造されたもの。
周囲は旧市街の中でも最も賑やかなエリアで、門を入るとスークが広がります。スークは何千もの店が並んでいて、神聖な場所とされてきました。ここでは武器の携帯も禁止され、商人が安心して商売ができるというシステム。
大モスク
世界で最も古いモスクの一つ。かつての宮殿や教会跡などを改築して633年に建造されたとされますが、8世紀初頭にはすでに修復されています。実際に調査をすると、ムハンマドの時代の跡と思われるものも発見。その後、何度も増築と改築を繰り返したものの、かなり老朽化していて現在もメンテナンスが続けられています。
高層住宅
旧市街には6000もの伝統的高層住宅が密集。5〜6階建てのものが多いのですが、中には9階建てものもあり、50mもの高さを誇る住宅もあります。そして、驚くべきことに鉄筋を使用しておらず、「アドベ」という日干しレンガを積み上げて化粧漆喰で装飾されたもの。
サナア旧市街はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
サナアが評価されたのが、以下の点。
登録基準(iv)
城壁内の旧市街は、イスラム初期の町並みを残しつつ、同じような建築様式が並ぶという点。
登録基準(v)
サナアの伝統的邸宅は、社会の変化に適応して暮らし続けている居住区の優れた例であるということ。
登録基準(vi)
旧市街に残る大モスクは、ムハンマドの時代に建造された、イスラム初期の建造物で、サナアはイスラム世界の歴史に大いに貢献してきた都市であったという点。
世界遺産マニアの結論と感想
サナアの旧市街は、2500年という長い間、社会が変化してもそれに適応して人が居住し続けるという貴重な例となっているという点で評価。大モスクなど、イスラム初期の建造物が残り、当時の雰囲気を残しつつあるというのもポイント。
ちなみに、サナアは人口の増加率が世界で最も高い都市で、現在の人口は約200万人前後ですが、このままいくと2100年には2700万人の人口を誇る都市になるという予測も。世界でも最初期の都市なのに、まだまだ進化するなんてすごいですね。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。