登録区分 | 文化遺産、危機遺産(2015年〜) |
登録基準 | (3),(4),(5) |
登録年 | 1982年 |
イエメン東部、ハドラマウト地方にあるシバームは「砂漠のマンハッタン」と呼ばれるほどに、高層住宅が乱立する不思議な風景が広がっています。その数はなんと500もあるというから驚き。
ここでは、今回はシバームの旧城壁都市がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、シバームについて詳しくなること間違いなし!
シバームの旧城壁都市とは?
シバームは、アラビア半島南部の香辛料と乳香の通商ルートの途中にあった都市。ここは3世紀頃に繁栄したハドラマウト王国の首都でした。高層住宅は天日干しにした泥などで作られており、7階まである高層住宅も。その姿は砂漠のマンハッタンまたはシカゴと呼ばれることもあるほど。
なぜこのような風景が作られたのかというと、さまざまな理由があるのですが、大きな理由としては「洪水対策」。シバームはワジと呼ばれる谷の底に位置し、雨季になると大洪水が発生するため、住民は垂直な建築物を作る必要があったのです。もちろん、高層の建物を作るということは、異民族による攻撃から守るという意味もありました。
8世紀頃から建物が段階的に高層化していき、現在見られる高層住宅は16世紀以降に建造されたもの。今では、なんと500を超える高層邸宅が林立。これはシバームに住む人々がそれぞれ競って高い建造物を作って争ったということも要因であると考えられます。
危機遺産
シバームは情勢が安定しておらず、潜在的な脅威があるということから2015年から危機遺産に登録されました。
シバームの旧城壁都市はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
シバームが評価されたのが、以下の点。
登録基準(iii)
高層邸宅が密集しているシバームの伝統的な生活様式が時代ともに徐々に変化していて、その存在が危ぶまれているという点。
登録基準(iv)
壁に囲まれ、高層の建築物が並ぶシバームは古代の優れた都市計画の1つであるということ。
登録基準(v)
高層邸宅はワジから発生する大洪水など、その自然環境に対応するように人々が生き続けてきたという証拠であるという点。
世界遺産マニアの結論と感想
砂漠のマンハッタンとか、砂漠のシカゴとか言われますが、砂漠の向こうに突如出現する高層ビル群は、蜃気楼と勘違いしてしまいそうですね。アラビア半島でも例を見ないほどのユニークな風景で、優れた建築技術の結晶というべきでしょうか。そして、砂漠なのに、街一つまるごと破壊するような大洪水が起こるというのも恐ろしい話ですね…。シバームの高層住宅はそんな砂漠の大自然に対して人間がたくましく生きた証でもあります。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。