登録抹消されたドイツの世界遺産「ドレスデン・エルベ渓谷」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産 危機遺産2006〜2009年
登録基準(2), (3), (4), (5)
登録年2004年(2009年登録抹消)

ドイツ東部の工業都市ドレスデンの周囲に広がるエルベ渓谷には、16〜20世紀まで宮殿、庭園、そして、街を発展させた産業遺産が多く並んでいます。しかし、2005年に新しいコンクリート橋の建設が決定すると、景観の保護が損なわれるとされ、2009年には登録が抹消されてしまいました。

ここではドレスデン・エルベ渓谷がなぜ世界遺産に選ばれ、そして、なぜ登録抹消されたのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、ドレスデン・エルベ渓谷について詳しくなること間違いなし!

目次

ドレスデン・エルベ渓谷とは?

ドレスデン・エルベ渓谷
画像素材:shutterstock

ドイツ東部ザクセン州の州都であり、工業都市・ドレスデンを流れるエルベ川沿いに沿ってさまざまな宮殿や庭園、産業関連の施設が続く景観が世界遺産に登録されていました。渓谷はエルベ川沿いに約20km続いていて、ドレスデンの中心部から南東のピルニッツ宮殿まで16〜20世紀にかけて建造された多くの建築物や庭園などが並ぶというもの。

渓谷沿いは段々状のブドウ畑が続いていて、産業革命時の遺産も点在。ブラウエス・ヴンダー橋(青い奇跡の橋)、ドレスデン・ケーブルカー、ドレスデン・サスペンション鉄道などの19世紀〜20世紀初頭に発達した、交通関連の遺産も登録されていました。

なぜドレスデン・エルベ渓谷は登録抹消されてしまったのか?

ドレスデン・エルベ渓谷
画像素材:shutterstock

2004年に世界遺産に登録されたものの、街は渓谷沿いであったため、どうしても交通渋滞が発生するということもあり、新しい橋の建設が2005年の住民投票によって決定されました。しかし、ユネスコによって新たな橋の建設は、「顕著な普遍的な価値」が認められないと、渓谷の景観の保護を理由に批判され、2006年には危機遺産になります。

代替案などが出たものの、結局2007年には橋の建設が開始されてしまったため、2009年には世界遺産リストから抹消。結局、2012年にはヴァルトシュレスヒェン橋という全長636.10mのアーチ橋が完成し、2013年には開通しました。

ドレスデン・エルベ渓谷はどんな理由で世界遺産に登録されていたの?

ドレスデン・エルベ渓谷
画像素材:shutterstock

ドレスデン・エルベ渓谷が評価されていたのが、以下の点。

登録基準(ii)
ドレスデン・エルベ渓谷は、文化、科学、技術の分野でヨーロッパの転換期が見られ、建築物や庭園などは18〜19世紀の中央ヨーロッパの技術発展を示していたということ。

登録基準(iii)
ドレスデン・エルベ渓谷は、ヨーロッパの都市開発から現在の産業都市への移行時期を示す、中産階級のための建築物と産業遺産が見られたという点。

登録基準(iv)
ドレスデン・エルベ渓谷は、バロック様式の建造物や庭園と自然豊かな渓谷が合わさった、傑出した文化的景観であったということ。

登録基準(v)
ドレスデン・エルベ渓谷は、土地を上手に利用した優れた景観で、中央ヨーロッパの技術の発展を示していたという点。

世界遺産マニアの結論と感想

エルベ渓谷は、あくまでも自然とともに発展した渓谷であるということが評価されただけに、新たなコンクリートの橋が建造されるとその景観が壊れてしまう…という点が、登録抹消の理由でもありました。しかし、住民は新たな橋の建設を求めていたというのは事実であるので、世界遺産の保護・保全の難しさという代表的な事例がエルベ渓谷でもあります。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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