2025年に新たに登録される予定の世界遺産はどの国のどんな遺産でしょうか?
ここでは、2025年7月に世界遺産委員会で審議される予定の遺産をご紹介。これを読めば、2025年登録の世界遺産について詳しくなること間違いなし!
盤亀川(バングチョン)の岩面彫刻/韓国
釜山広域市から北へ約70kmの位置にある蔚山(ウルサン)広域市。市内に流れる盤亀川沿いには、1971年に発見された「盤亀台岩刻画」と1970年発見の「川前里刻石」があり、これらを合わせて「盤亀川岩刻画(パングチョンアムガックァ)」と呼ばれます。
盤亀台岩刻画は韓国の先史時代に制作された岩面彫刻の中では最も古いもので、鯨をモチーフにしたものなど、当時の人々の暮らしがよく分かる貴重な資料。
西夏の王陵群/中国
中国西北部・寧夏回族自治区に位置し、首府の銀川市から約35km離れた賀蘭山脈(がらんさんみゃく)の東斜面に広がる王陵群。西夏(せいか、1038〜1227年)は、11世紀に現在の寧夏回族自治区を中心に発展した王朝で、チベット=ビルマ系の民族の一つ、タングート族によって築かれました。
9つの王陵や254基の墓を含む壮大な墓地群で、ピラミッド状の建造物など、かつてこの地で暮らしていたタングート族の文化を今に残すもの。
モンゴル東部の草原地帯/モンゴル
モンゴル東部、4つの自然保護区と草原地帯を含んでいて、ここは樹木のない平原やなだらかな丘陵地帯、湿地など、さまざまな地形が残っているのが特徴。ユーラシア大陸の草原地帯でも例外的で、数千平方kmにも渡って数種類の灌木や低木が生い茂る草原が大半を占めています。
ここは生態系が自然のままが残されていて、推定150〜200万頭にも及ぶ希少種のモウコガゼルが暮らしていることでも知られます。
イエントゥ、ヴィンギエム、コンソン、キエプバックの遺跡・景観群/ベトナム
イェントゥ山は、ベトナム北東部のクアンニン省とバクザン省にまたがる山で、紀元前より道教徒が暮らしていたという伝説もあり、麓から山頂へ至る道沿いには寺院や仏塔など、仏教関連の建築物が多く築かれ、陳朝(1225〜1400年)には国内でも有名な聖地でした。
3代・陳仁宗(ちんじんそう、在位:1278〜1293年)はここで隠居し、ベトナム独自の禅の一派・竹林(チュックラム)派を創設したことでも有名です。
カンボジアの記憶の場:弾圧の中心から平和と反省の地へ/カンボジア
クメール・ルージュは、カンボジアが民主カンプチア(1975〜1982年)と呼ばれた時代の中心勢力であり、彼らは1975〜1979年にかけて国内で大虐殺を行い、150万から200万もの人々が犠牲となり、これは1975年のカンボジアの人口の約4分の1となることから、歴史的大虐殺となってしまったのです。
首都プノンペンの旧M-13刑務所とトゥールスレン虐殺博物館、郊外のチュンエク虐殺センターは彼らの大虐殺の記憶が残されている場所。
マレーシア森林研究所・セランゴール森林公園(FRIM FPS)/マレーシア
首都クアラルンプールと隣接するセランゴール州ケボンに位置する森林研究所兼公園。ここはもともと開発によって荒れ果てた土地でしたが、フタバガキ科の広葉樹を植えて再生し、その後、年々少しずつ植林が続けられ、現在は豊かな森林が広がっています。
1920年代から熱帯雨林を保護してきた場所で、その研究について大いに貢献してきました。
インドのマラーター軍事景観/インド
西インドに位置するマハーラーシュトラ州は、西側の沿岸部は渓谷や丘陵地帯が広がっていて、東側にはデカン高原が広がっています。ここは古くから多くの王朝が興亡するほどにインド史においては重要な地であり、マラーター王国(1674〜1849年)においては北側から侵略してきたムガル帝国などと戦ってきたという歴史があります。
マラーター王国の首都であったラーイガドにある城塞や、彼が築いた要塞なども多く登録されています。他にも山岳部や島などに築かれた要塞を含めて14もの資産で構成。
ティラウラコット・カピラヴァストゥ:古代シャーキヤ王国の考古遺跡群/ネパール
ネパール西部のルンビニ県にあるティラウラコットは、人口5000人程度の小さな街ですが、ここは世界三大宗教の一つ、仏教の開祖である釈迦が若い頃に過ごしたカピラ城があったとされています。
釈迦が晩年の頃に隣のコーサラ国の王・毘瑠璃王(ヴィルーダカ)によって滅ぼされてしまったというのが通説。その後、1000年ほどは巡礼の地であり、玄奘三蔵が7世紀に訪れたとされるほど。19世紀後半に宮殿や門の一部が発掘されたことから、ネパール政府はここをカピラ城と主張しています。
バグ=エ・バーブル、バーブルの庭園(デ・バーブル・ブン)/アフガニスタン
カーブルは、アフガニスタン東部に位置し、標高約1800mの位置にある大都市。首都カーブルの南西に位置するバーブル庭園は、ムガル帝国の初代皇帝のバーブル(1483〜1530年)が築いた庭園で、彼の墓でもあります。
ここは何度も造園を繰り返し、中央アジアやインドにおける庭園の歴史が見られるという文化的景観として評価されているもの。
古代クッタル/タジキスタン
クッタルは、現在のタジキスタン共和国の南西部にあるハトロン州をおもに指していて、ここは肥沃な土壌と豊かな牧草地が広がり、鉱物資源や貴金属が豊富でした。8世紀ころになるとクッタルは独立公国となり、地方王朝として君臨。その後、イスラム勢力やモンゴル帝国の支配を受けるものの、自治権を持つことが多く、16世紀までこの地名は残り続けます。
構成資産としては、11の遺構が登録されていて、6世紀から17世紀までの仏教寺院やモスク、宮殿、要塞、隊商宿、旧市街など、かつての繁栄が見られるものが登録。
ホッラマバード渓谷の先史時代洞窟群とファラコル・アフラーク建造物群/イラン
ホッラマバードとは、イラン西部ロレスターン州の州都。この地は4000m級の山もそびえるザグロス山脈にありながらも、イランを流れる河川の源流でもあり、動植物も多く見られる肥沃な土地が広がっていることから、4万年にも渡って人々が暮らしてきました。
市内には、観光名所でもある「ファラコル・アフラーク要塞」があり、これはサーサーン朝時代(224〜651年)に建造された要塞で、現在は2つの塔だけが残ります。
ファヤの原風景/アラブ首長国連邦
シャールジャ首長国はドバイ市の東に位置し、砂漠が広るエリア。首長国の中部にあるファヤは、ジュベルと呼ばれる石灰岩の丘陵地帯が広がっていて、ここには約21万年前の中期旧石器時代から約5000年前の新石器時代まで、人類の居住の跡が見られ、これはアラビア半島の中でも最も古い居住地跡でもあります。
ワディ・ウラヤ/アラブ首長国連邦
フジャイラ首長国は、オマーン湾に面していて、大部分は乾燥した山岳地帯になっています。ワディ・ウラヤ国立公園は、2009年に設立された保護区で、総面積は225平方kmと首長国の約20%以上を占める広大な保護区です。渓谷沿いには湿地帯が広がっていて、乾燥地帯にも関わらず、国内で見られる動植物が多く暮らすというのが特徴。
アカバ海洋保護区/ヨルダン
ヨルダンの南西部にあるアカバ県は、アフリカ大陸とアラビア半島に挟まれた紅海に面していて、非常に細長い湾。保護区としては、沿岸沿いの2.8平方kmの細長いエリアであり、ヨルダン領の約3%を占めています。
ここには300近くのサンゴだけでなく、絶滅危惧種のジュゴンやウミガメ、メガネモチノウオ(ナポレオンフィッシュ)、ジンベイザメなど、生物多様性が見られるという点で貴重な場所でもあります。
ヒシャム宮殿/キルベット・アル・マフジャール/パレスチナ
ヨルダンとの国境ともなっているヨルダン川から約15km離れた位置にあるエリコの町。ここは海抜マイナス258mにあり、世界で最も標高の低い町として知られます。
町の北側にあるヒシャム宮殿は初期イスラム王朝であるウマイヤ朝(661〜750年)時代の遺構が残っていて、特にモザイク床は美しく、世界でも最大級のものです。
サルディスとビン・テペのリディア墳墓群/トルコ
サルディスは、トルコ西部のマニサ県・サルト村の近くにあり、ここはかつてアナトリア半島の西部を支配する国家を築いたリュディアの首都であった場所。遺跡にはアクロポリスや住宅、ギュムナシオン(古代ギリシャの訓練施設)、世界で4番目の広さを誇るアルテミス神殿、ローマ浴場、古代最大規模のシナゴーグ、キリスト教会など、各時代の建築物が残っています。
そして、遺跡から北方にあるビン・テペにはリュディア王家の墳墓が並び、「アナトリアのピラミッド」と呼ばれる巨大な古墳があることでも有名。
カルナックとモルビアン湾の巨石群/フランス
カルナックは、フランス北西部のモルビアン県のコミューンで、大西洋に面していることから、夏は海水浴場が開かれる街です。街の郊外には、4000ものメンヒルが数列で並ぶ「カルナック列石」があることで知られ、その長さは合計で4kmにも及び、3つの列石群に分かれています。
その建造の目的は謎ですが、紀元前5000年〜紀元前2000年前に建造されたことがわかっていて、先史時代の技術を現在に残すもの。
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バイエルン王ルートヴィヒ2世の宮殿群:ノイシュヴァンシュタイン、リンダーホーフ、シャッヘン及びヘレンキームゼー~夢から現実へ/ドイツ
現在のドイツ南部にあるバイエルン州は、かつてはバイエルン王国(1806〜1918年)があり、広大な領土を誇った国家でした。しかし、第4代ルートヴィヒ2世は「狂王」として知られ、政務を嫌うようになり、幼いころからの夢であった騎士道伝説を具体化したようなメルヘンな城や宮殿を建造するようになってしまったのです。
バイエルン州には、彼が建造した城が今でも多く残り、その中でもノイシュヴァンシュタイン城、リンダーホーフ城、シャッヘン城、ヘレンキームゼー宮殿は、ファンタジーの世界を現実にし、君主としての義務から開放された幻想の世界に浸るものでした。
モンス・クリント/デンマーク
モン島は、デンマークの南東部にある615平方kmもの小さな島。東部の海岸には、約6kmもの白亜の断崖が広がっていて、これは約1万7000年前の最終氷河期に氷河によって地表が押し上げられて形成されたという、世界でも最大級の氷河の構造が見られる地形の一つでもあります。
サルデーニャ島の先史時代の芸術と建築(ドムス・デ・ヤナス)/イタリア
サルデーニャ島は、地中海ではシチリア島に次ぐ大きな島で、その歴史は新石器時代に遡ります。実はサルデーニャには先史時代からヨーロッパから移動してきた民族が暮らしていました。
ここは紀元前5000年代から紀元前3000年代に渡って「妖精の家」と呼ばれる部屋のような岩窟墓が築かれました。その技術から高度な文明が存在していたことを示します。
アンダルシアのオリーブ景観群-時を越えたオリーブ林の海物語/スペイン
スペイン南部のアンダルシア州は、新石器時代からオリーブが飼育されてきました。現在でもアンダルシアの農業遺産であり、この地の経済だけでなく、文化や歴史の一部となっています。
オリーブ畑の数はヨーロッパでも最大規模となっていて、まるでオリーブの「海」のよう。ここは古代から現代までオリーブ産業や文化が発展したという文化的景観が広がっています。
アルヴァロ・シザの建築群:現代文脈主義の遺産/ポルトガル
アルヴァロ・シザは、1933年生まれのポルトガルの建築家であり、1992年には優れた建築家を表彰するプリツカー賞をポルトガルで初めて受賞した人物。彼の建築はモダニズム建築を継承したものではありますが、少ない種類の材料を使ったシンプルな建築物が多いのが特徴です。
「文脈主義」とは、一般的に脈絡を強調することを指す哲学的概念で、彼の建築はルネサンスやバロック、モダニズムなど、あらゆる時代の建築を集約したもの。
グディニアの初期モダニズム都市の中心地/ポーランド
ポーランド北部のポモージェ県にあるグディニャ。ここは歴史が古い集落地だったものの、1920年代にポーランド政府はこの地に湾口都市を築き、やがてポーランド南部まで結ぶ鉄道路線を結ぶ大都市となり、ここは富裕層が多く集まり、人口は12万人とポーランドでも重要な港となりました。
第二次世界大戦時はドイツに占領されたものの、被害は少なく、20世紀初頭のモダニズム建築が多く維持されました。
ミノア文明の宮殿群/ギリシャ
クレタ島は東地中海に浮かぶ、8336平方kmもの広大な島で、ギリシャには数々の島がありますが、その中でも最大の島です。島はヨーロッパの中でも最初期の文明の一つであるミノア文明が栄えた地。
当時使用されていた文字が解明されていないため分からないことが多いものの、ここはエジプトなど東地中海の文明と関係が深く、各地の宮殿の遺構には、当時の高度な技術が見られ、宮殿にまつわる神話は現在でも世界の芸術や文学に影響を与えています。
ゴロホヴェツ歴史地区/ロシア
ゴロホヴェツは首都モスクワの東側に広がるヴラジーミル州の都市。ヴォルガ川の支流であるオカ川のさらに支流であるクリャージマ川沿いに位置しています。
ここは17世紀になると交易と工芸で発展し、街には白い石造りの商家、ルネサンスに影響を受けた聖堂・修道院が多く築かれました。その後、ここは大規模な開発が行われなかったために、当時の街並みが現代でも残っている貴重なエリアに。
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シュルガン=タシュ洞窟の岩絵群/ロシア
ロシアの中央部にあるバシコルトスタン共和国の首都ウファから南へ約200kmの位置にある広大な洞窟。ここは15以上の空間を含めた全長3323mとウラル山脈を中心としたウラル連邦管区の中でも最大規模の洞窟です。
ここは古くから聖域であり、これらの岩絵には多くの動物が描かれていて、西ヨーロッパの岩絵と同様に人類による最初期の芸術作品でもあります。
マンダラ山脈のディギッドビィの文化的景観/カメルーン
ナイジェリアの国境の近く、カメルーン北部に位置するマンダラ山脈。この地にはディギッドビィと呼ばれる、16もの石造りの建造物が並ぶ遺構が点在しています。これらは石壁で囲まれた範囲の中に、円錐や円柱の屋根を持つ建築物が並び、集落の跡地と考えられるもの。遺構はかつての文明の存在を示し、その農業景観の中で人々が暮らしてきたという証拠でもあります。
ムランジェ山の文化的景観/マラウイ
マラウイ南部州にあるムランジェ山は、「山」とは名付けられていますが、ここは地理的には「残丘(ざんきゅう)」と呼ばれ、平原に孤立した丘。
周囲には高山がないことから、非常に雨量が多いエリアで植物が密集しています。そのことから、ここは古くから聖域とされ、伝統的な儀式が行われてきました。
ビジャゴ諸島の沿岸及び海洋生態系-オマチ・ミンホ/ギニアビサウ
ギニアビサウの中でも沿岸部に浮かぶ18の大きな島と12の小さな島々で構成されるのがビジャゴ諸島。ここは島の表面積の3分の1が、砂州や干潟という地形であり、雨季になると年間2000〜2500mmの降水量を誇るエリアです。
登録範囲は、世界各地から集まる渡り鳥や海洋生物の保護区となっていて、動物たちの楽園となっています。
ゴラ=ティワイ複合地帯/シエラオネ
シエラオネは国土のほとんどがマングローブなどの森林地帯ではありますが、その中でも南東部のゴラ熱帯雨林国立公園と、モア川の中洲であるティワイ島野生生物保護区が合わせて登録されています。ここは氷河で覆われることがなかったことから、古来からの動植物が残り続け、固有種や絶滅危惧種が多く見られる森というのが特徴。
ムルジュガの文化的景観/オーストラリア
西オーストラリア州のピルバラの沿岸部分にあるのが、バーラップ半島。ここはアボリジニからは「ムルジュガ」と呼ばれるエリアであり、もともとは島でした。そして、ムルジュガは周囲の島々を含んでいて、約370平方kmの範囲の中に、なんと100万枚もの岩絵が描かれています。これはかつてこのエリアで暮らしていたアボリジニの祖先たちが描いたもの。
ポート・ロイヤルの17世紀の考古学的景観/ジャマイカ
ポート・ロイヤルは、ジャマイカの現在の首都キングストンの沖合に位置する半島の先にありました。最盛期は人口は6500人から1万人ほどになり、商人や船乗りだけでなく、職人や海賊まで集まる賑やかな街で、総督官邸や教会など、2000もの建物が島の中で築かれたというほど。
しかし、地震によって崩壊。現在は当時のカリブ海の暮らしや海賊の様子が分かる遺構が広がっています。
聖地からウィリクタへのウィチョルの道(タテワリ・フアジュエ)/メキシコ
「ウィチョル」とは、メキシコ西部のナヤリット州とハリスコ州に暮らすウィチョル族を示し、彼らは古くからこの地で暮らす先住民で、独自の伝統宗教を持っていました。
彼らの聖地であるウィリクタに至る約800kmの巡礼路には山地や砂漠など、さまざまな聖地があり、ここは知識を深め、さらには民族としての文化を強化するという役割があったもの。
カヴェルナス・ド・ペルアス国立公園/ブラジル
ブラジル東部のミナス・ジェライス州にある国立公園。ここはブラジルを流れる河川で、全長3160kmという南米で4番目に長いサンフランシスコ川の支流ペルアス川沿いの流域が登録されているもの。
ここは石灰岩の地形で川と雨水の侵食によって大地が削られ、世界でも最大規模の鍾乳石などが見られることで知られます。
世界遺産マニアの結論と感想
2025年7月に開催される予定の第47回世界遺産委員会で審議される遺産をリストアップしました。今回は日本からはノミネートされませんが、世界的に有名なノイシュバンシュタイン城も審議される予定です。果たして今後はどんな世界遺産が登録されるのか?注目ですね!
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。