登録区分 | 自然遺産 |
登録基準 | (9),(10) |
登録年 | 2005年 |
北海道にある知床半島といえば、海岸や森林、滝など、美しい景観が続くことで有名で、世界自然遺産にも登録されています。ところで、知床半島はなぜ世界遺産に登録されているのでしょうか?意外と知ってそうで知らない!
ここでは、知床がなぜ世界遺産なのか、世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、知床について詳しくなること間違いなし!
世界遺産・知床とは?なぜ評価されたのかを簡単に解説!
知床半島は北海道の北東に位置しています。世界遺産としては半島の中央部から知床岬までの陸地と周辺海域を含んでいて、710平方kmにも及ぶ広大なエリアが登録。
沿岸は北半球でも最も低い緯度で海水が氷結するという「季節海水域」に属していて、さらに半島を挟んで暖流と寒流の境界線により、周辺の海域は豊かな海洋生物が生息しています。
冬になると海では、低温の減塩水(ブライン)が降下していき、滞留によって海面を覆う氷に付着し、早春になると氷が溶け、アイスアルジー(氷に付着した藻類)が多く発生。それらを餌とするオキアミやエビが増え、それらを餌とする貝や小魚、それらを餌とするサケやマスなどの大型回遊魚とアザラシなどの大型哺乳類、さらにサケは産卵のために川へと戻るためにそれらを狙ったキタキツネやヒグマ、フクロウの餌となるという食物連鎖が生まれます。
陸上では、中央部に連なる知床連山を中心に湖沼や湿原、河川、森林など、多様な地形が広がっていて、シレトコスミレなどの固有種だけでなく、シマフクロウやオオワシなどの絶滅危惧種も多く見られます。
知床はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
知床が評価されたのは?以下の点。
登録基準(ix)
知床は北半球においては最も緯度の低い地で発生する、季節性海氷によって大きく影響され、海洋と陸上の生態系の相互作用と優れた生態系の生産性が見られます。海氷が溶け、深海からの栄養分によって、植物プランクトンが大量発生。海流の循環によって、魚類、鳥類、哺乳類の食物連鎖に続き、海や川、森林に渡ってダイナミックな生態系が見られるという点。
登録基準(x)
知床は海洋・陸上生物の重要な生息地で、ユーラシア大陸の北方系の種と本州の南方系の種が合わさって暮らしていて、絶滅危惧種のシマフクロウや固有種のシレトコスミレなどが見られます。そして、ヒグマの生息密度は世界でも最も高いというのも特徴。ここは絶滅危惧種の海鳥の生息地としても貴重であるということ。
の2つ。つまり、
「知床半島では、季節性海氷によって海洋と陸上の豊かな生態系が各地で存続し、ここには大陸と本州のさまざまな種が集まり、ヒグマや渡り鳥の重要な生息地で、絶滅危惧種と固有種が多く生息している」
ということですね。
知床の構成資産をご紹介
1、動物相
知床は海氷の変化によってダイナミックな食物連鎖が発生し、海から陸への優れた生態系が見られるもの。特にサケ科の魚類が多く生息し、これらを狙う、絶滅危惧種のヒグマやシマフクロウなどが見られます。特にヒグマはクマ科では最大の体長を誇り、知床の生息密度は世界でも最も高いというのが特徴。オオワシのような渡り鳥の越冬地としても有名です。
知床近海では、北方系のカレイ科のオヒョウや恐ろしい顔つきのオオカミウオ、南方系のマンボウやハリセンボンなどが生息。他にもトドやミンククジラなどの海生哺乳類も生息。
2、植物相
知床は、標高1661mの羅臼岳(らうすだけ)という知床連山の最高峰があることから、山頂から海岸線にかけて標高によって温帯性や寒帯性の植物などが点在する、垂直分布が見られるのが特徴です。そして知床半島の高山の砂礫地に生息する固有種シレトコスミレが代表的な植物で、スミレ科の中でも原種に近いとされるもの。
世界遺産マニアの結論と感想
知床半島は、世界でも最も南部に位置する海氷エリアでその環境もあり、春になると近海でプランクトンが多く発生することから、魚類、鳥類、哺乳類という食物連鎖が続くというダイナミックな生態系が見られ、固有種や絶滅危惧種も多く集まるという点で評価されています。
ちなみに、知床半島は明治以降、何度も開拓が進んだものの、その厳しい環境でなかなか定住が難しいという場所でもありました。そんな背景もあり、1977年から自治体によって開拓跡地に森林を復元するとする「しれとこ100平方メートル運動」が始まり、これは日本における最初のナショナルトラスト運動(自然環境や文化財を保護・管理する運動)となったことから、それが自然遺産登録にも繋がったのです。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。