ベトナム中部のフエは、最後の王朝があった古都であるためか、宮廷料理を元にした独自の料理があることで有名だ。そんなフエ料理を代表するのが「ブンボーフエ」。宮廷料理から派生した麺料理なんて…とてつもなくゴージャスな気がする!ブンボーフエとはどんなグルメなのか?
今回は、ベトナムの世界遺産・フエの建造物群を巡る際に味わったグルメ「ブンボーフエ」を紹介。世界遺産巡りのついでに味わってほしい「世界遺産級の激ウマ・グルメ」を解説していこう。
ベトナムの世界遺産「フエの建造物群」は、ベトナムの京都的存在
ベトナム中部のフエは、細長いベトナムのちょうど中間地点だけあって、かつては北部の大越国と南のチャンパの国境にある街だったのだが、19世紀に南北を統一した阮朝(グエン朝)の首都であり、後に大きな宮殿が築かれることになった。そして、王たちは周囲に壮麗な霊廟や寺院を築くのだが…ベトナム戦争で王宮はほとんどが破壊。残念なことに、現在では遺構しか残っていない。
まぁ、世界遺産となったのは「その輝かしい時代の遺構」として評価されているのだ。現在はイチ地方都市なのだが、ハノイやホーチミンのような喧騒はなく、のんびりとした静かさがあり、古き良きベトナムの雰囲気が残る京都的な街でもある。実際、京都のように学生が多い気がする…あくまでも主観だが。
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思ったほど辛くない?「アジア料理100選」に選ばれたブンボーフエは宮廷料理から庶民の料理になった逸品
ブンボーフエとは「ビーフン・牛・フエ」という意味。フエは王宮があっただけにさまざまな地方からシェフが集まり、王のための宮廷料理が発展したそう。それが役人に伝わり、さらには庶民に伝わっていき…現在のフエ料理が完成したそうな。つまりは、ルーツは宮廷料理だけど、食材は豪華なものが使えないから調理法などを応用したものってことだ。
その中でも圧倒的人気がブンボーフエなわけである。これも王族のために開発された料理で、後に庶民に広まっていったということで「王様のための麺料理」なのである。それもあり、あまりにもウマすぎて、ベトナム全土に広まり、アジア版ギネスブックのアジア・ブック・オブ・レコーズの「アジア料理100選」にも選ばれるほど。
そんな王様も絶品した麺とはどんな味わいなのか?本場のフエだけあって、どこでも食べられるのだが、やはり専門店で食すのが現地ならではだろう。うーん、見た目は…スパイシーなタンメンのように見える。麺は…米粉を利用した麺で平打ちではなく、稲庭うどんのようにひねりながら打った麺なのだろう。よって、食感はフォーのようにツルツルというよりも、むしろ弾力があってモチモチだ!盛り付けにある、牛肉の薄切りやブラッドソーセージは、少しクセがあるが、さっぱり風味の麺にはぴったりだろう。
しかし、この麺の最大の特徴は、スパイシーな牛骨スープである。たっぷりと豚足や牛骨などが柔らかくなるまでコトコト煮込み、レモングラスや塩辛、唐辛子、香味野菜などを使って味付けされたものだが…クセがまったくなく、非常に深みのある味わいなのである。辛さはあるものの、ピリ辛風味でアクセント程度。おそらくレモングラスの風味によって味がシマリ、見事に調和されていて、老若男女すべてが「うまい」と思えるオールマイティーな麺だろう。
…これは「世界遺産級」の味わいだ!
王様も愛した(…と思いたい)ブンボーフエはベトナム麺のレジェンドである
そもそもフエ料理が辛いのは、ここがもともと南のチャンパ族が暮らしていた土地で、彼らが辛い料理を愛したことから、その名残がフエ料理に取り入れられたとか。つまり、ブンボーフエは、宮廷だけでなく、南北のベトナムの文化がすべて詰まった「ベトナムという国の歴史」を象徴する食べ物なのではないだろうか?…それはさすがに言い過ぎか?
もちろん、本場フエのものが最も美味しいとはされているが、これはハノイでもホーチミンでもどこでも食べられる人気料理なので、ぜひベトナムを訪れたら一度はチャレンジしてほしい逸品だ!
※こちらの内容は、あくまでも過去に現地を訪れた際に体験したものであり、最新情報はご自身でご確認ください。