現在は日本でも定番となったファーストフードとなったドネル(回転)ケバブ。たくさんの肉のスライスを重ねて垂直回転しながら焼いていく…という姿は思わずお腹が鳴ってしまうだろう。…が、トルコの一部では、垂直ではなく、真横に回転している謎のケバブがある。実は逆で焼くことで…めっちゃうまくなる!そんなジャーケバブとはどんなグルメなのか?
今回は、トルコの世界遺産・アニの考古遺跡の帰りに味わったグルメ「ジャーケバブ」を紹介。世界遺産巡りのついでに味わってほしい「世界遺産級の激ウマ・グルメ」を解説していこう。
トルコの世界遺産「アニの考古遺跡」は、トルコ領内にあるアルメニアの古代遺跡
アニはトルコ北東部のカルス市の郊外にあり、アルメニア国境沿いにある。実はトルコとアルメニアの国境は歴史的背景から開放していないのだが、皮肉にもトルコ領内にあるアルメニア王国の遺跡が世界遺産に登録されているのだ。大陸の複雑な歴史が垣間見られるが…集落としての歴史はかなり古く、キリスト教国家であるアルメニア王国の首都だっただけに、要塞や聖堂の跡地が今でも点在している。
ここは13世紀にモンゴル帝国の侵攻に遭い、14世紀に自身で崩壊。それもあり、草原の中にいくつか崩壊した建物が残るだけで、まるで「夏草や兵つわ者ものどもの夢の跡」と思わず詠みたくなるほどで、しばらく黄昏れるにはちょうどよい世界遺産である。
「アニの考古遺跡」の詳細はこちら
あれ?なんかこのケバブ…変な方向に回っているぞ…これが「ジャーケバブ」ってやつか!
カルスはトルコ北東部の小さな都市なのだが、イスタンブールからも直行便が多く出ている(逆にアルメニアからはアクセスは著しく悪い…)。トルコ東部というと、最大の都市はカルス県のお隣にあるエルズルム。シルクロードの時代から交易都市であり、今でも交通の拠点だ。トルコ東部を巡る人は立ち寄ることが多く、ホテルもお手頃なので、拠点にするのにもぴったりだ。
そんなエルズルムというと、ケバブで有名なのだ。…そう回転ケバブ。いや、そんなものトルコのどの街にもあるだろう!とお思いだろうが、なぜかこの街のケバブは垂直ではなく、真横に回転している。これは正式には「ジャーケバブ」といい、18世紀には存在が確認されている、ドネルケバブのルーツの一つ。
いや、なぜに横回転?これはラム肉にヨーグルト、脂、黒胡椒、玉ねぎなどをマリネにして漬けて、ローストするという点ではドネルケバブと製法はあまり変わらないのだが、ジャーは「串」を意味していて、カットした肉は串刺しにして提供される。この辺がパンに挟んだり、皿盛りにしてくれるドネルケバブと唯一違うところだろう。
エルズルムには、専門店が多く、有名人が来店した(日本人にはその人気度はわからないのだが…)という店もあるくらいで、ご当地グルメとしては屈指の人気を誇る。とりあえず、専門店に入ってみて味わってみようか。しかし、別に横回転したくらいで味は変わらんだろう…と串から肉を外し、紙のように薄いパンを包んで食べ始めると、明らかに普段のドネルケバブよりも美味い!3倍くらい美味い!…なぜだ?
理由はさまざまかもしれないが、おそらく横回転にすることで羊の脂とタレがよく染み込みながら焼かれるため、ジューシーになるのだと推測。そして、一本食べ終わると…店員が勝手にまた一本追加してくれる。…むむむ、これは岩手の「わんこそば」スタイルで客側から止めるまでは永遠に提供するのがマナーらしい。ドネル屋とは思えない、ホスピタリティの高さ!
…これは「世界遺産級」の味わいだ!
横回転のケバブは人気が高すぎてトルコ国内に拡大中!
ジャーケバブは、一度食べると結構ハマるのだが、日本ではあまり知名度がない。そりゃエルズルムにはなかなか行かないしね…。しかし、最近はトルコの大都市でご当地グルメが食べられるようになり、イスタンブールや首都アンカラでもジャーケバブを出す店も増えてきた。
ちょっとエルズルムは遠いけど、割と簡単に食べられるようになったのだ。イスタンブールの観光のついでに…ドネルケバブのルーツとも言われる味を楽しむというもまた奥深い旅にするだろう。…まぁ、少しマニアックか?
世界遺産のついでに世界遺産級のグルメも同時に楽しんでみてはいかが?
※こちらの内容は、あくまでも過去に現地を訪れた際に体験したものであり、最新情報はご自身でご確認ください。