ちまきというと端午の節句のイメージがあると思うのだが…実は中米にもちまきのような料理があるということを知っているだろうか?これはなんとトウモロコシ粉で作るちまきであり、素朴な味だがソース次第では激ウマ料理に化けるという不思議なメニューだ。そんな「タマル」とはどんなグルメなのか?
今回は、メキシコの世界遺産・古代都市テオティワカンの帰りに味わったグルメ「タマル」を紹介。世界遺産巡りのついでに味わってほしい「世界遺産級の激ウマ・グルメ」を解説していこう。
メキシコの世界遺産「古代都市テオティワカン」は文明のルーツ的存在
首都メキシコシティから北東へ約50kmの位置にある高原都市遺跡ティオティワカン。メソアメリカの文明のルーツは、メキシコ湾にあるオルメカ文明なのだが、このティオティワカン文明は紀元前2世紀から栄え、大型ピラミッドの含めた計画都市だった。ここでは最盛期には10万人以上も暮らしたというほど。
世界でも三番目の高さを誇る太陽のピラミッドは壮麗であるが、南北約5kmに渡る大通りを中心に各施設が並んでいて、古代とは思えないほどに壮麗な都市だったということがうかがえる。この地ではこれほどの技術を持つ文明が誕生したのは…トウモロコシの栽培だったのだ。なんと紀元前8000年にはトウモロコシの栽培が始まったというのだから驚きだろう。
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古代メキシコ人の食べていたメニューは今でも大人気!?
トウモロコシは新大陸原産の農作物であり、今でも主食だ。古代から中米や南米の人々に食べられているのだが…現地では硬粒種というタイプが多く、日本で主流の甘味種と比べ、そのまま食べると美味しくない。大抵は加工して食べる。というわけで、現地の人々はトウモロコシの穀粒をラードと合わせて生地にして主食にしてきた。ちなみに、これをすり潰してパン状にしたものがトルティーヤだ。これに具材を包めば「タコス」となり、日本でもお馴染み。
ないとはいえ、トルティーヤのベースとなる生地は「マサ」と呼ばれ、パンではなく、トウモロコシの殻やバナナの皮で包んで蒸して食べるというのも一般的だった。これを「タマル」という。まるでちまきのようだが、パンのように細かく挽かないので、若干「お米」感を感じるものの、ちまきのような雰囲気もある。
伝統料理ではあるが、現在でもよく食べられていて、市場の近くを朝歩くと、タマルを蒸している屋台をよく見かける。トウモロコシの甘くて濃厚な香りがまた食欲をそそる…。それもあり、アツアツのタマルはメキシコ人の定番の朝ごはんでもある。
古代の人がどう食べたかは今では不明だが、現代人は、辛い「ロホ(赤)」と酸味のある「ベルデ(緑)」の2つのソースをタマルにかけて食べるのが主流。もちろん、辛さや風味は店によって大幅に異なる。「トウモロコシのちまき」なんで最初は抵抗があるかもだが…ソースとマサだけのシンプルな料理ながら、ホクホクとした食感の中にもピリ辛ソースがよく馴染んで、お粥のような濃厚な味わいがするから不思議だ…
…これは「世界遺産級」の味わいだ!
タマルはトルティーヤの親戚ようなもの
タマルは日本ではあまり知られていないが、古代から食べられてきたとされている。16世紀のアステカ帝国の時代には、トルティーヤとともにタマルは絵画に描かれていて、彼らの中では一般的な食材であったらしい。屋台で見ることが多いので、屋台料理と思われがちだが、割とキリスト教関連のお祭りでもよく食べられているので、現在でもメキシコ人の生活に馴染んでいるのである。
古代から現在まで中米の人々の胃袋を満足させるだけでなく、彼らのアイデンティティにもつながるタマルは、タコスを包むトルティーヤの陰に隠れがちだが、中米では立派な食文化の中心であるのは間違いないだろう。…ただ知名度がないだけなのだ。
世界遺産のついでに世界遺産級のグルメも同時に楽しんでみてはいかが?
※こちらの内容は、あくまでも過去に現地を訪れた際に体験したものであり、最新情報はご自身でご確認ください。