登録区分 | 文化遺産 |
登録基準 | (5) |
登録年 | 2023年 |
チュニジア南東部に浮かぶジェルバ島は、古代ギリシャの英雄オデュッセウスが航海の途中立ち寄ったという伝説が残るほどに歴史の深い島。ここは半乾燥地帯でありながら、現代に至るまで多くの民族によって支配され、ローマやキリスト教、アラブなど、さまざまな遺構が各地に点在しています。
ここではジェルバ : 島嶼域での入植様式を伝える文化的景観が、なぜ世界遺産なのか?世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、ジェルバ島について詳しくなること間違いなし!
ジェルバ : 島嶼域での入植様式を伝える文化的景観とは?
チュニジアの南東部にあるガベス湾に浮かぶジェルバ島は、514平方kmの大きさを持ち、北アフリカでも最も面積の広い島でもあります。ここは地中海と砂漠の気候が入り混じり、半乾燥地帯ではあるものの、夏は比較的過ごしやすく、冬は温暖であるという地。ジェルバ島の存在は古代ギリシャの時代から知られていて、特に詩人ホメロスの作だと伝わる叙事詩『オデュッセイア』にて、ロートパゴス(ハス食い)族が住む島とされていました。「ロートス」とはナツメヤシの実のようなものとされていて非常に美味。これを食べると、この土地に住みたいと思ってしまうというおそろしい食べ物。
とはいえ、これはあくまでも伝説であり、現実の歴史としては、紀元前6世紀から現在のチュニスを中心に繁栄したフェニキア人の国家カルタゴ(紀元前814年〜紀元前146年)の人々が訪れるようになり、パレスチナでエルサレム神殿が破壊されると、ユダヤ人もこの地へと避難してきたとされています。
その後、ここはローマ人によって支配するようになると、各地に都市と農地が建設され、キリスト教、ヴァンダル族、ビザンツ帝国、アラブ人と支配者は変わっていきました。各地にはフェニキアやローマ時代の考古学遺跡、イスラム教のモスク、オスマン帝国時代の要塞などが点在。特に島の中央部に残る「エル・グリーバ・シナゴーグ」は19世紀に改装されたものですが、ここは紀元前6世紀に設立されたとされ、現存する世界最古のシナゴーグでもあります。
現在の島の人口は15万を超え、本土とはフェリーで結ばれていて、リゾートアイランドとなっています。一方、アラブ人やベルベル人だけでなく、ユダヤ教徒も暮らしているという多民族の居住地であるというのも特徴。
ジェルバ : 島嶼域での入植様式を伝える文化的景観はどんな理由で世界遺産に登録されているの?
ジェルバ島が評価されたのが、以下の点。
登録基準(v)
ジェルバ島の伝統的な土地の活用は、人間と環境の相互作用を示し、文化的景観の例でもあるという点。
登録基準(vi)
ホメロス作とされる『オデュッセイア』にも登場するジェルバ島の存在は、古代から中世の地中海世界の歴史と関連していて、脆弱な土地に人が住むという定住の代表的な例でもあり、古代から現代まで人類の想像力に影響を与えたということ。
世界遺産マニアの結論と感想
ジェルバ島は、特に『オデュッセイア』に関連していて、地中海の歴史と密接に関わっている一方、この地では半乾燥地帯にもかかわらず、人が自然と向き合いながら長年定住してきたという文化的景観が広がるという点で評価されています。
ちなみに、エル・グリーバ・シナゴーグは、エルサレムにあったソロモン神殿の一部が漂着したことから建設されたという伝説が残りますが、少女の遺体が漂着したいうバージョンも。これは島だけに日本と同じく、古くから残る稀人(まれびと)伝説が入り混じったものだとか。
※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。