中国の世界遺産「普洱(プーアル)の景邁山古茶園の文化的景観」とは?世界遺産マニアが解説

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登録区分文化遺産
登録基準(3),(5)
登録年2023年

中国南部の雲南省・普洱市(プーアル/ふじし)は山深い土地で、プーアル茶の原産地として有名。東南アジア諸国との国境近くにある景邁山(ちんまいさん)には、約1800年前からチャノキが栽培されていて、現在でも少数民族によって伝統的な栽培が続けられています。世界遺産としては彼らの集落や古代から続く茶園が登録。

ここでは普洱の景邁山古茶園の文化的景観が、なぜ世界遺産なのか?世界遺産マニアが分かりやすく解説。これを読めば、景邁山古茶園について詳しくなること間違いなし!

目次

普洱の景邁山古茶園の文化的景観とは?

プーアル茶
画像素材:shutterstock

雲南省南西部にある景邁山(ちんまいさん)一帯は、なんと樹齢2700年というチャノキがあることで有名。ここは樹齢1000年の野生と栽培されたチャノキが半分ずつ残り、樹齢100~1000年のチャノキが生い茂るといった非常に保存状態の良いプーアル茶の古茶園が存在します。

そもそもこれらのチャノキは現在でも雲南省に住む少数民族プーラン族によって、2世紀ころに発見され、3世紀ころからチャノキの栽培と茶の取引が始まり、1800年にわたって栽培・定住・開発が続けられた地でもあります。

普洱の景邁山古茶園の文化的景観
画像素材:shutterstock

古茶園は、おもに標高1250〜1500mの山岳地帯に分布していて、3つの茶園があります、合計で約113万本のチャノキが植えられていて、最古のものは 1400年もの樹齢があるというほどで、平均樹齢は約200年にも達しているというのが特徴。一般的に茶園というと段々畑ではありますが、ここは上部に樹木層、中部に低木層、下部に植生層という特別な環境であり、肥沃な土壌である一方、病気や害虫の被害が少ないといった効果もあり、これらはこの地の人々によって生み出された知恵でもあります。

この地は山深い地ではあるものの、チャノキの栽培によってタイ族、プーラン族、ハニ族、ワ族と少数民族が集まるエリアであっても友好的な関係が築かれ、8つの集落が点在し、約1500世帯が暮らしています。住宅は茶を乾燥させるためのバルコニーを備えた2階建ての杭上住居が多く、茶をイメージした装飾なども見られるもの。ここは茶の産業から言語、習慣、建築などにも影響が与えられ、宗教も仏教だけでなく、チャノキを発見した先祖を祀る儀式まで行われているほど。

普洱の景邁山古茶園の文化的景観はどんな理由で世界遺産に登録されているの?

普洱の景邁山古茶園の文化的景観
画像素材:shutterstock

景邁山古茶園が評価されたのが、以下の点。

登録基準(iii)
景邁山古茶園は、約1800年前から続く「チャノキ博物館」ともいうべき、持続可能な古茶園の景観を作り出したもの。ここは世界の茶文化の発祥の地の一つで、雲南省からチベットへと続く茶馬古道の出発点でもあり、世界の主要な飲料の一つでもあり茶文化の発展に大いに貢献してきたという点。

登録基準(v)
この地は原始林が続く自然とアニミズム信仰が見られ、景邁山古茶園は、茶文化と人間、自然との調和によって形成されたもの。住民たちは原始林を保護し、土地を活用しながら、森林にチャノキを植えていくという技術を生み出し、この景観を作り出しました。森林と茶園の共存は土地利用の優れた例であるという点。

世界遺産マニアの結論と感想

景邁山古茶園は、古代から山の斜面に広がる森林の中で茶園が形成され、伝統的集落を築いていったという土地利用が見られるもの。この地に住む少数民族にとって重要な産業であったために、茶文化を通じて文化が民族を越えて溶け込んでいったことから、集落では独自の文化が見られるという点で評価されています。

ちなみに、本来のプーアル茶は「熟茶」と呼ばれ、多湿状態に置いて長期間発酵させる必要があることから、非常に手間がかかるもの。それもあり、文化大革命時代に毛沢東の思想に合わないということで、中国国内では生産がストップされた時期も。それもあって、ビンテージのプーアル茶は海外へと持ち運ばれ、国内にはない…という悲しい状況が生まれてしまったのです。とはいえ、今では再開されているのでご安心を。

※こちらの内容は、世界遺産マニアの調査によって導き出した考察です。データに関しては媒体によって解釈が異なるので、その点はご了承下さい。

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この記事を書いた人

世界遺産一筋20年以上!遺跡を求めて世界を縦横無尽で駆け抜ける、生粋の世界遺産マニアです。そんな「世界遺産マニア」が運営するこちらのサイトは1100以上もある遺産の徹底紹介からおもしろネタまで語り尽くすサイト。世界遺産検定一級取得済。

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